バイデンの時代、またもや「ポリティカル・コレクトネス強制」が戻ってくる

バイデンの時代、またもや「ポリティカル・コレクトネス強制」が戻ってくる

行き過ぎたポリティカル・コレクトネスに多くのアメリカ人はうんざりしていた。うっかり何か言うと「差別主義者」にされるので閉塞感は強かった。トランプ大統領はそれを打破しようとしたのだが、ジョー・バイデンは逆だ。どんどんポリティカル・コレクトネスを進めていく。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

白人は「ブラック」という言葉を口にすることも恐れるように

トランプ大統領がホワイトハウスから追い出されてジョー・バイデンが居座るようになると、アメリカは再び大きな政治的転換が起きることになる。政治的には「アメリカ第一」は完全に捨てられて、再び「グローバル化」推進の方向になる。

そして、文化的には、またもや「ポリティカル・コレクトネスの強制」が戻ってくることになる。

ポリティカル・コレクトネスとは、「政治的に問題のない言葉遣い、差別のない言葉遣いをしよう」というものである。これは、一見するととても素晴らしいものに見える。

しかし、ドナルド・トランプが登場する以前、アメリカではリベラルが行き過ぎた「ポリティカル・コレクトネス」を進めていることに大きな反発が起きていた。

「メリー・クリスマスは、キリスト教徒以外の人たちが疎外感を味わうので使うのはやめよう」とか、「ジングルベルは少数派の差別だから流すのはやめよう」という方向になって、文化の弾圧になっていたからだ。

白人は「ブラック」という言葉を口にすることも恐れるようになった。下手な文脈でそれを使うと、差別主義者(レイシスト)ということにされてしまうからだ。そんな世の中になっていたのだ。

「メリー・クリスマスはメリー・クリスマスだ。何が悪い」というような人も、「政治的に配慮がないレイシストだ」と攻撃の的になった。

トランプ大統領はこの行き過ぎたポリティカル・コレクトネスを大批判し、伝統的な言葉を取り戻そうとした。実のところトランプ大統領の姿勢に共鳴するアメリカ人も多かった。

行き過ぎたポリティカル・コレクトネスに多くのアメリカ人はうんざりしていた。うっかり何か言うと「差別主義者」にされるので閉塞感は強かった。トランプ大統領はそれを打破しようとしたのだが、ジョー・バイデンは逆だ。どんどんポリティカル・コレクトネスを進めていく。

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多文化共生を押し進める人権団体やフェミニスト

もちろん、グローバル化は全世界で進められている。「言葉狩り」はアメリカだけに起きていたわけではない。EU(欧州連合)でも移民を批判すると、その瞬間に「差別主義者、レイシスト、極右」とレッテルを貼られ、社会から一斉に攻撃される状況になっていた。

メディアも強盗や殺人やレイプの犯人が移民や難民だと分かると、それをぼかして報じるようになった。

なぜなら「移民がやった、難民がやった」と言うと、当の移民・難民たちが徒党を組んで「差別だ、レイシストだ、少数派に対する弾圧だ」とわめきたてて大抗議するからである。

さらに多文化共生を押し進める人権団体やフェミニスト等のリベラルもまた移民と手を組んで、「この事件を報じるのは差別」と言い出すからである。

2015年の大晦日の深夜、ドイツで数百人にのぼるドイツ女性が性的暴行された事件があった。これは凄まじい事件である。ところが、この事件はしばらく報道されなかった。犯人が移民たちだったからだ。

この事件が明るみに出たのは、被害に遭った女性が勇気を出して次々とSNSに被害状況をアップしたからである。

実際に被害者がいるのにマスコミが報じないことに人々が騒ぎ始めると、やっとメディアは「移民たちがドイツ女性を集団で襲った」と報道した。

ところが今度は、「この報道は少数派に対する差別だ、極右のデマだ、捏造だ」と、多文化共生を標榜するリベラル人権団体が騒ぎはじめて、この事件を取り上げる人間は「レイシストだ」ということにされた。

つまり、移民・難民が何をしてもそれを報じることは「差別」ということになって、真実をありのまま報じられなくなってしまっているのだ。

多文化共生という幻想を推し進め、「移民・難民を批判するのは差別」と決めつけた結果、EUの人々は「反移民・反EU」に大きく傾くようになっていき、EUの政治は完全に機能不全に陥った。

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弱者という立場が特権階級と化す時、社会は混乱する

社会のあり方として、弱い立場の人たち、困っている人たち、差別されている人たちをきちんと守るというのは当たり前のことである。

多くの人は、社会の中で弱者の立場に追いやられてしまっている人たちを助けたいと心から考えているし、そうした人たちが他者からいじめられていたら何とかしてあげたいと思う。移民の救済というのは、本来はとても優しい動きである。

2014年から2015年。中東はISISのような超暴力過激武装組織がイラク・シリアを蹂躙していて国土は荒廃していた。暴力から逃れて国を捨てた人が周辺国に溢れた。

国が戦乱状態になっている中で行き場を失った人たちを助けたいと考えたEUの人々の優しさは、評価されて然るべきである。しかし、その優しさが社会を良くしたのかどうかは別問題だ。

当たり前だが、世の中には善人もいれば悪人もいる。

弱者が保護される現象を見て、それにあぐらをかく人間たちは「弱者になりすまし」して世話をしてもらったり、ちやほやしてもらったり、支援してもらったりするようになっていく。

また、本来は自立できる機会のある弱者も「待てよ、自立するよりも弱者のままでいる方が得だ」と思うようになっていく。さらに弱者から抜け出せない弱者も「俺は弱者様なのだから世話されて、ちやほやされて、支援されるのが当たり前だ」と思うようになっていく。

「弱者であれば得する」と打算が生まれた時に、弱者という立場が特権階級と化す。人間の「弱い立場の人に何かしてあげたい」と自然に思う美しい心を食い物にするようになって、社会は大きく混乱していく。

さらに移民たちは、どこに行っても自分たちの文化・宗教・食生活・振る舞いを変えようとせず、文化摩擦を引き起こした。

しかし、ポリティカル・コレクトネスによってそれを指摘することは「レイシスト」にされるので、EUの人々は自国が文化侵略をされている形になっているのに、まったく何も言えなくなってしまった。

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彼らが武器にするのが「ポリティカル・コレクトネス」だ

福祉が充実した先進国では「弱者であれば得する」という側面もある。それは多くの弱者を救済しているのだが、同時に3種類のタイプの邪悪な人間を生み出している。

ひとつは、「弱者は得すると考えて、弱者ではないのに弱者になりすまして恩恵だけを要求する人間」だ。弱者のなりすまし、福祉の寄生者は、このタイプである。

もうひとつは、「努力したら弱者から抜け出せるのだが、弱者から抜け出すと恩恵や特権や権利が喪失するので、弱者からあえて抜け出さない人間」だ。

そして「弱者であることにあぐらをかき、世話しろ、言うことをきけ、俺の欲求を満たせ」と傲慢に主張する弱者である。

いつしか「一部の弱者」が、弱者であることで特権意識を持つようになり、「特権を与えてもらって当然だ」という、ゆがんだ意識を持つようになった。そして、彼らが武器にするのが、まさに「ポリティカル・コレクトネス」なのである。

自分たちのやっていることを暴露されたり、恩恵を剥奪されたりしそうになると、ポリティカル・コレクトネスを行使し、声高に「自分たちを攻撃するのはレイシスト」と逆攻撃するようになった。

それだけではない。3種類のタイプの邪悪な人間は、弱者であることの恩恵をもっと拡大させることも考える。どうするのか。もっと大きな声でこのように叫ぶのだ。

「自分たちは差別されている、虐げられている、もっと保護が必要だ!」

その姿勢が攻撃されると、またもやポリティカル・コレクトネスを持ち出して、「自分たちを攻撃するのは差別だ、レイシストだ」と攻撃し、恩恵と権利だけをどんどん獲得していく。それに呼応するのが多文化共生を進めるリベラルたちだ。

こうした異常な世界を終わらせようとしていたのがトランプ大統領だった。トランプ大統領はポリティカル・コレクトネスを否定し、さらに不法移民も追い出し、自国の国民・文化・伝統を守ろうとした。

しかし、ジョー・バイデンはトランプ大統領と真逆の思想を持つグローバリストであり、リベラリストだ。ポリティカル・コレクトネスを肯定し、不法移民もどんどん入れ、国際社会にもそれを強制してグローバル化とリベラル化を進めようとするだろう。

折しも2020年11月。ドイツのハイコ・マース外務大臣は、「極右主義者が国際レベルで団結しており、このことは新たな次元をもたらしているので極右対策が必要だ」として、規制を強化する方向を打ち出している。

こうした動きを見ても分かる通り、またもや「ポリティカル・コレクトネスの強制」が戻ってくるのだ。

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