世界を見回すとこれからは混沌しかない。すべての混沌が広範囲に悪影響を及ぼす

世界を見回すとこれからは混沌しかない。すべての混沌が広範囲に悪影響を及ぼす

世界を見回すと混沌しか見えてこない。コロナ禍や物価上昇や政情不安によって起きているのは、全世界の「混沌化」だ。今までの世界秩序がどんどん崩れてきており、全世界で国家運営がうまくいかなくなってきている。それも、巨大なスケールで急激に悪化している。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

世界はリセッション(景気後退)が避けられない局面に

コロナは終わったように見えて終わっていない。日本は2022年7月から悪化しているコロナ禍の第7波を封じ込めるのをあきらめてしまったが、中国は相変わらずゼロコロナに躍起となって経済成長を鈍化させ続けている。

そこにきて、ロシアとウクライナの泥沼の戦争で、世界はエネルギー高や物価上昇に見舞われるようになって、インフレが世界経済を急激に悪化させている。このような状況の中で経済が成長するはずもない。

経済的に脆弱だったスリランカなどは国家崩壊が起きるほどの混乱になっているのだが、問題はスリランカだけではない。経済基盤が脆弱な国家はインフレで激しく動揺していくだろう。これから大量の失業者、大量の困窮者、大量の「経済的死者」が途上国から出てくる局面となる。

どこの国でも想定以上の困窮者が一気に生まれると政府も混乱し、行政も執行能力を失うので、国民が困窮に落ちても助けられなくなる。そうすると国民は政府を見切るしかなくなる。国家はますます統治能力を失い、機能不全に落ちていく。

アメリカもまたコロナショックで経済が死にかけた際に行った前人未踏の金融緩和のツケが回って1970年代以来のインフレに見舞われている。

金利が立て続けに引き上げられている。すでに10年国債と2年国債の長短金利差が逆転する現象も起きており、このままでは世界はリセッション(景気後退)が避けられない局面となっている。

アメリカの政府高官はしきりに「アメリカ経済成長は鈍化するものの、リセッション(景気後退)に陥ることは予想していない」と言っているのだが、果たしてどうなのか。この見方に懐疑的な意見は多い。

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「危機が終わった」のではなく、ただの「楽観」?

イエレン財務長官は「現代のアメリカ経済はリセッションの条件を満たしていない」と発言しているのだが、これは額面通りに受け止められず「リセッション隠しではないのか?」と疑念を抱くだけとなっている。

バイデン政権はインフレ政策に失敗したと激しく批判され、すでに国民からは「政権担当能力がない」と見捨てられるようなザマに陥っているのだが、ここで政府自らが「リセッションかも」など言ってしまうと、もはやバイデン政権のレームダック化は決定的になってしまう。

そういうこともあって、「リセッションの条件を満たしていないどころか、もう間違いなくリセッションに入っているのでは?」と述べる金融関係者も増えた。

米国のGDP速報値は、第1四半期が年率換算で前期比1.6%減、第2四半期は年率換算で前期比0.9%減だった。

つまり、2四半期連続でマイナスになったわけで、これは欧州では「テクニカルリセッション」と見なされる現象である。これを指してドイツ銀行も「確実に12ヶ月以内にリセッションがくる」と述べている。

すでにアメリカの株式市場は年初来からマイナス20%ほど落ちたのだが、現在は「奇妙な楽観論」が市場を支配していて10%ほど戻している。

しかし、市場関係者は「もし現在のアメリカ市場がリセッションであるならば、経済の落ち込みをまだ部分的にしか織り込んでいないのではないか」と述べている通りで、ここから大きな波乱が市場に襲いかかるようにも見える。

今はアメリカの株式市場が上昇しているのだが、これは「危機が終わった」のではなく、ただの「楽観」に過ぎないのである。

それもそうだ。ロシアとウクライナの戦争は終わっていないし、エネルギー価格は高止まりしているし、インフレは吹き荒れ続けているし、中国はゼロコロナを頑なに続け、日本は安倍晋三元首相が銃殺された上に韓国カルト問題で揺れている。

別に何か楽観できるような状況になったわけではない。

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新興国・途上国はどこもこのような状況になっている

スリランカは物価高に見舞われて、そこに政府の汚職や無策が重なって、政権は一気に崩壊して混乱状態になった。

新興国・途上国は医療施設が脆弱であるだけでなく、国家基盤も国家財政も脆弱であることが多く、何らかの問題が起きたらすぐに財政はパンクして国家が機能しなくなってしまう。

その結果、暴動や内戦が起きて国家崩壊になっていき、それが再び世界を激震させることもあり得る。

2022年7月16日にG20が開かれたのだが、エネルギーや食料など原材料価格の高騰で混乱する途上国は、それぞれの国がロシアや中国を非難する流れとなって共同声明を取りまとめることができなかった。

すでで東南アジア・アフリカ・インド・ラテンアメリカなどの新興国・途上国の多くの経済は傷ついている。にも関わらず経済は混乱していく一方であり、今後は途上国の政情不安につながっても何らおかしくない。

現在、トルコやブラジルやメキシコやインドなどがインフレ圧力で苦しんでいる。今後はタイやフィリピンやインドネシア等の東南アジアも国内インフレで抗議デモや政情不安が発生する可能性がある。

貧困層はギリギリで暮らしている。そのため、新興国では「インフレ」が最も政情不安を引き起こすトリガーになってしまうのである。物価が上がって政府が何もできないのであれば、貧困層の不満は一気に爆発して暴動が起こる。

新興国・途上国はどこもこのような状況になっているのである。世界的なインフレは間違いなく新興国を追い詰める。

新興国が成長をやめたのであれば、そこは「不安定でリスキーな場所」にすぎない。資金は急激に引き揚げられることになる。現代の混乱が収束しないのであれば、多くの国で「国家崩壊」の兆候が現れるようになる。

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「最も弱い人」が社会のどん底で見捨てられる

日本は2019年に消費税を10%にして景気を悪化させた。そして、2020年1月には早くも新型コロナウイルスの問題に巻き込まれてより景気を悪化させた。そして、2022年になった今、やはり物価上昇と、コロナ禍の第7波と、カルト問題などが暗雲をもたらすようになっている。

物価上昇は、すでに平均年収186万円の貧困層を追い込む流れになっているわけで、彼らが追い込まれると、より日本社会は混乱していくだろう。

具体的に言えば、低所得層の自暴自棄、少子高齢化の急激な加速、結婚率の極度の低下、虐待の増加、自信喪失を突いたカルト・セミナー・陰謀論などの蔓延、国への帰属心の低下、治安の悪化、政治不信が同時並行で起こるはずだ。

衝動殺人・無差別殺人・政治テロもまだまだ起こり続ける。しかし、この期に及んでも日本政府や官僚の危機意識は弱い。

世界を見回すと、これからは混沌しかないわけで、すべての混沌が玉突きのようにあちこちに悪影響を及ぼす流れになっているのが分かるはずだ。

いま起きているのは、全世界の「混沌化」だ。今までの世界秩序がどんどん崩れてきており、全世界で国家運営がうまくいかなくなってきている。それも、巨大なスケールで急激に悪化している。

経済状況が悪化すると、行政サービスも、教育も、福祉も、医療も、生活環境も、すべてが悪化していき、国民はその中で孤立無援になっていく。そして、どうなるのか。「最も弱い人」が社会のどん底で見捨てられる。そして、その見捨てられた人々が今度は社会を悪い意味で変えていくようになる。

こうした危機の中にあるのであれば、私たちは日本政府にも企業にも頼らず、自分で自衛するしかない。

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