「自民党しか入れるところがない」という言い訳は、もう消費期限が切れたと私たちは理解する必要がある。自民党は30年以上も景気を回復させることができないくせに税金だけは苛烈に引き上げていくのだから、日本経済が回復する可能性は限りなく低い。そろそろ変化が必要だ。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
所得倍増計画も金融所得倍増計画も嘘だった
金融庁は「年金じゃ暮らしていけないから2000万円くらい用意しておけ」と2019年に言って批判まみれになったのだが、なぜこれほど批判されたのかというと、普通の人にとっては2000万円の貯金を貯めるというのは本当に大変なことだからである。
昨今はコロナ禍で経済全体がダメージを受けているのに、日本政府が気が狂ったかのように増税・増税・増税に邁進している。その上に物価上昇や光熱費の暴騰が吹き荒れている。このような世の中ではなおさら貯金は難しくなる。
2022年10月22日には弁護士や労働組合などでつくる支援グループが全国一斉の電話相談を行ったのだが、そこで「物価高騰で生活が苦しい」という悲鳴が殺到している。
「光熱費も物価も税金も何もかも上がって、貯金どころか持ち出しの方が多くて破産しそうだ」という人が続出しているのだ。
今の物価上昇には賃金の上昇は伴っていない。景気が良くてモノがどんどん売れるので物価上昇になっているのではなく、不景気なのにコストが上がって物価上昇になっている。まさにスタグフレーションの状態だ。
賃金は上昇するどころか、2022年に入って実質賃金はほぼマイナス圏を推移している。岸田文雄は首相になる前は「所得倍増計画」をぶち上げていたが、まったく実現する気配がない。それは「選挙用の甘言」だったのである。
その後に、取って付けたように「金融所得倍増計画」みたいなものもぶち上げたのだが、2022年は真綿で首を絞められるように株式市場が下落しており、誰の金融所得も倍増していない。
所得倍増も金融所得倍増も「口当たりの良いことを言ってみただけ」で嘘だった。
【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)
少子高齢化を放置してきたツケが回っているということ
今の日本国民の経済状況は芳しくない。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、金融資産保有額がゼロという60代は全体の29.4%もいる。100万円未満は9.1%である。この両方を足すと38.5%となる。
現代の高齢者は平均寿命が男性が約82歳、女性が約88歳なのだが、60代で貯金がゼロから100万円未満の間だとすると、健康寿命を失った後は年金のみで細々と食べていかなければならないことになる。
老齢厚生年金の受取額の平均は1ヶ月14万4366円なのだが、これはあくまでも平均の話であり、10万円程度の高齢者も多い。となれば、だいたい3人に1人の高齢者は貯金がないまま綱渡りの生活を強いられるということになる。
厚生年金をもらえない単身世帯の高齢者になると、もう極貧に落ちるしかない。まったく生活できない状況になってしまったら、後は生活保護だけが頼りになるのだが、実際に生活保護受給者の半数はもう高齢者となっている。
貧困化する高齢層は、これからの日本を揺るがす解決不能の社会問題と化すはずだが、日本政府はこの問題をずっと先送りしてきたのでもう止めることはできない。
すでに、全国民の3人に1人が65歳以上になり、日本女性の半数は50歳超えなのである。しかし、人口動態的に言うと、高齢者は今後の20年間ずっと増え続けることが分かっている。
日本は高齢者大国となり、高齢者の面倒を見るために社会保障費の大半を使い果たす国になったのだ。最悪なことに、日本政府は少子高齢化を放置して高齢者の社会保障費が増大するにしたがって、とめどない増税路線に走るようになった。
10年は検討しないと言っていたはずの消費税は、もう「引き上げをすべきだ」という声が出てきている。今は59歳までの年金支払いを64歳まで延長するという取り立て案も出されている。
社会保険料は税金ではないが、強制的に取られるという意味では国民にとっては税金みたいなものだ。この社会保険料もまたひたすら上げ続けられている。それなのに、年金支給額は減らしている。
すべて少子高齢化を放置してきたツケが回っているということなのだ。
【ここでしか読めない!】『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』のバックナンバーの購入はこちらから。
税金を取って取って取りまくる路線に突き進んでいる
今後も、ありとあらゆる政策は税金の設置や引き上げとセットになされる。
パートの厚生年金加入に関しては企業の規模要件を撤廃するというので、中小零細は人を雇うたびに負担増となる。パートは賃金が上がらなくなるし、そもそも中小零細は人を雇わないばかりか廃業も考えるわけで景気はますます悪化する。
しかし、景気がどうなるよりも税金を取り立てるのを優先するのが今の日本政府の姿勢である。あと中小零細企業の消費税免税も取り上げてインボイス制度で締め上げる政策も2023年から始める。
ここでも廃業するしかない中小零細企業や個人事業主が続出するだろうが、日本政府はなりふり構わず税金を取り立てる。
日本はすでに50種類近くもの税金が課せられているのだが、今後も「炭素税」「森林環境税」「独身税」「死亡消費税」「携帯電話税」「道路使用税」等々、ありとあらゆる奇妙な税金も検討されている。
森林を守るために金を出せ、独身の奴は余分に税金を払え、死んで金が残ったら消費をしなかったということなので死んだ後に消費税を払え、携帯電話を使っている奴は税金を払え、道路を歩いたら税金を払え、と取りまくる。
検討されている新税のうちのいくつかは、こっそりと取り入れられていく。
何が起きているのかというと、日本政府は税金を取って取って取りまくる路線に突き進んでいるということなのである。
そんなわけで多くの国民は、物価上昇の中、税金や社会保険料を取られまくって貯金どころではなくなってしまっている。国民の所得に占める税金や社会保険料などの負担の割合を示す「国民負担率」はいまや48%なのだ。
稼いでも半分は政府が毟り取るということだ。これでは日本国民が貧しくなっても当然である。
ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』
日本人は新しい変化を覚悟して受け入れていく時期
平均年収が186万円のアンダークラスと呼ばれる低所得層は、コロナ禍を経て1200万人に増えている。2019年前までは約920万人と言われていたのだが、その後の消費税10%やコロナ禍による自粛や物価上昇によって300万人近くがアンダーグラウンドに堕ちた。
一言で1200万人と言うが、これは尋常な数ではない。
彼らはほとんど貯金ができないまま置いていくのだが、50代を過ぎてもまだ貯金がゼロとなれば、老後の生活が非常に深刻なものになることは避けられない。社会保障も劣化していくので、高齢者も合わせて弱り目に祟り目のような状態になっていく。
このままではアンダークラスはもっと増えていくのは確実で、この貧困層が日本の大多数を占めるようになっていく。
日本政府は「少子高齢化が日本を蝕む」「経済成長できなければ貧困層が増える」という当たり前のことを気づかなかったのか? いや、こんな常識的なことは以前から分かっていた。分かっていても、「解決する能力がなかった」のである。
この30年の大半を自民党が担ってきたのだが、もう自民党は政権を担うほどの能力がないということがはっきりしている。かと言って野党はただの活動家集団でしかないので論外だ。
「自民党しか入れるところがない」という言い訳は、もう消費期限が切れたと私たちは理解する必要がある。
自民党は30年以上も景気を回復させることができないくせに税金だけは苛烈に引き上げていくのだから、日本経済が回復する可能性は限りなく低い。
・小さくても、まともな国益派政党を誕生させる。
・大きいだけの自民党を派閥や政策で分割する。
・政策が合う政党でそれぞれ連帯・合併。
・選挙では各々がマニフェストを掲げて戦う。
・国民は時代に合わせて政党を民主的に選ぶ。
・マニフェストを実現できなかった政権は下野させる。
こういう当たり前をやって、日本の政治を再生させるしか日本が復活する道はない。「自民党しか入れるところがない」という言い訳はもうやめて、日本人は新しい変化を覚悟して受け入れていく時期に入っている。