アメリカが北朝鮮との戦争を決断しても何ら不思議ではない

アメリカが北朝鮮との戦争を決断しても何ら不思議ではない
前大統領のバラック・オバマが「戦争をしない」大統領であることは、オバマ自身が「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と宣言したことで明らかになっていた。

オバマ大統領は本当に動かなかった。

チュニジアやエジプトで親米政権が崩壊していくのもやりすごし、イランの核問題も結局はうやむやにして、国民を化学兵器で虐殺するシリアのアサド政権に鉄槌を下すという話も立ち消えになった。

2014年に突如として誕生したISIS(イスラム国)は、人類史上でも最悪の非人道的な虐殺を中東で繰り広げていたが、この組織はどこから武器を調達したのか。アメリカだ。

この組織は、中東で自ら戦いたくないオバマ政権が、反アサド政権を標榜する組織に大量に武器弾薬を流し込んだことから生まれた組織だった。

もともとオバマ大統領は、前ブッシュ大統領の戦争を終わらせるためにホワイトハウスに送り込まれたので、中東から兵を引くのは既定路線でもあった。

しかし、誤解してはいけないことがある。アメリカは「これからも戦争はしない」わけではない。アメリカは建国から現在まで90%の期間を戦争して過ごして来た戦争国家である。(ブラックアジア:「自由はただではない」という言葉の裏には何があるのか?)(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

ゲリラ戦こそがアメリカを自壊させるための手法

アメリカ軍は短期戦に強い。圧倒的な火力と物量で華々しく敵の正規軍を叩きつぶすことができる。

ところが、イラクやアフガニスタンは、アメリカと真っ向勝負を避けて、どんどん奥地に引き寄せてから、ゲリラ戦やテロでアメリカを疲弊させる作戦を取った。

アメリカ軍が長期戦に弱いというのは、ベトナム戦争によって明らかになっていた。

アメリカ軍はあまりの重装備であり、長期戦になると出費が嵩んで兵力を維持できないのである。

さらに、長期戦が続くとアメリカ国内でも必ず厭戦気分が蔓延し、次第に反戦運動が大きなものになっていく。

その代表的な例がベトナム戦争だ。ベトナム戦争で反戦運動が吹き荒れたのは、戦争が長期化したからである。

ベトナムに介入した頃は、アメリカ人は「民主主義を守るための崇高な戦争だ」と言っていた。

ところが、1960年代後半になっても戦争が終わらずに国費も兵士も消耗するようになると、国民は戦争に疑念を抱くようになり反対運動が燃え広がった。

カタルシスのないだらだらとした戦争は、さっさと白黒つけたいアメリカ人には耐えられないプレッシャーなのだ。

ベトナム戦争は、まさにゲリラ戦こそがアメリカを自壊させるための手法であることが証明された戦争だった。

そして、この「ゲリラ戦による長期化戦法」は、アメリカと敵対するアフガニスタンのタリバンや、イラクのテロリストにも引き継がれた。

兵力が脆弱でアメリカと真っ正面から戦えないアフガニスタンのタリバンは、最初から戦争を10年でも20年でも続けることを前提として戦っていた。

また、イラクのテロリストも普段は国民の中に潜んでいて、思い立てばテロを仕掛けてアメリカ軍を翻弄する作戦を10年以上に渡って続けた。

アフガニスタン戦争・イラク戦争と中東に深入りしたブッシュ大統領の率いるアメリカは、こうして泥沼に引きずり込まれ、戦費を無尽蔵に消費し、いつまで経ってもアフガニスタンもイラクも制圧できずに窮地に陥った。

そして、ブッシュ大統領にとどめを刺したのが2008年9月15日に起きたリーマン・ショックだった。

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戦略的忍耐をしていたオバマ大統領の時代の終わり

2つの泥沼の戦争によってじわじわと国力を消耗したアメリカは、リーマン・ショックによって衝撃的なダメージを受けることになった。

リーマンショックは、アメリカが崩壊するどころか資本主義そのものが根底から崩壊しかねないほどの超弩級の衝撃だった。普段は自由競争を謳っていたアメリカ政府も、有無を言わせない実行力で破綻しかけた巨大銀行の救済を行った。

こうした中でアメリカ国民は、戦争推進派の大統領ではなく、戦争収束派の大統領を選んだ。それが2009年に登場したバラック・オバマだったのだ。

疲弊した軍、破綻寸前の経済。こうした時代の流れの中で、ホワイトハウスに送り込まれたオバマ大統領が課せられた仕事は、いったん戦争から離れてアメリカを立て直し、まずは経済を復活させることであったと言える。

当時のオバマ大統領は、傷ついたアメリカをいったん休ませるために「戦略的忍耐」をうまくやり遂げることが求められていたのである。

オバマ大統領はそれまで何の実績もない大統領だったが、アメリカ人は「何もできない大統領」を望んでいたのだから、オバマ大統領は適任だったとも言える。

オバマ大統領は戦争を避けることによってアメリカを立て直し、次につなげるための役割を国民に求められ、それを忠実に実行してきた。

これによってアメリカはリーマンショックから経済的にも回復し、ハイテクを中心に大きな影響力を取り戻すようになり、株価もリーマンショック前を超える高値に到達した。

アメリカが「立ち直った」のは客観的事実が示していた。

そして、2016年の大統領選挙でアメリカ人は次の新大統領を選んだ。それがドナルド・トランプ大統領だった。

オバマ大統領は「戦略的忍耐」を主軸とした外交を行ったが、ドナルド・トランプ大統領はオバマ大統領のやり方をことごとく批判し、ひっくり返している。

トランプ大統領は衝動的で好戦的で「何をするのか分からない大統領」だ。そして、この大統領が北朝鮮と激しく挑発合戦を繰り広げるようになっている。

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アメリカが戦争を決断しても何ら不思議ではない

アメリカと北朝鮮の間で武力的な衝突が起きるのかどうかは、今も懐疑的であり、流動的である。

戦争は軍事訓練がそのまま実戦になだれ込むような「なし崩し」のパターンもあれば、挑発されても戦略的忍耐を重ねて「絶対回避」のパターンもある。

北朝鮮は常に激しい口調で周辺国を罵り、「ソウルを火の海にする」とか「日本を海に沈める」とか「トランプ大統領の背骨を折る」とか言いたい放題で、その激しさを見ると明日にも戦争が始まりそうな勢いである。軍事パレードも派手だ。

ところが実際には、武力衝突にならないために、ミサイルを飛ばす時も被害が出ないように細心の注意を払ってやっている。

それもそうだ。北朝鮮の軍事力は見かけ倒しで、戦争が始まったら絶対にアメリカに勝てる見込みはないからだ。そのために、アメリカと戦争になったら応戦すると激しく吠える北朝鮮も、実際は戦争ができない国家なのである。

しかし、ここに重要なことがある。

戦争をするのかどうかを決めるのは「北朝鮮ではない」ということだ。戦争をするかどうかを決めるのは、アメリカなのである。

アメリカはどこかの国と戦争をしたいと思えば、自分たちの都合でそうする。たとえ相手が大量破壊兵器を持っていなくても「持っている」と決めつけて一方的に戦争を仕掛ける能力がある。

それは2003年のイラク攻撃から、サダム・フセインの処刑までの流れを見れば分かる。

2003年のイラク攻撃の時は、どこかの馬鹿な国際評論家が「イラク戦争はない」ときっぱり言い切っていたが、アメリカはあっさりと戦争に踏み切った。

アメリカは今でもアジア圏を軍事兵器を売るための市場であると捉えており、北朝鮮に暴れさせて日本や韓国に莫大な兵器を売りつけてきた。

そういった意味で、北朝鮮を生かすことで儲けてきたと言うことができる。アメリカが北朝鮮を崩壊させたくないのは、この兵器ビジネスが消失するのは困るからでもある。

しかし、北朝鮮が核ミサイルを持ってワシントンに照準を合わせるようになっていくのであれば、自分たちの安全も脅かされるので状況は変わる。

まだ事態は流動的だ。しかし、北朝鮮が核開発に執着するのであれば、アメリカが戦争を決断しても何ら不思議ではない。(written by 鈴木傾城)

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アメリカはどこかの国と戦争をしたいと思えば、たとえ相手が大量破壊兵器を持っていなくても「持っている」と決めつけて一方的に戦争を仕掛ける能力がある。

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