ガーシー騒動も立花孝志という稀代の策士が仕掛けたもの。次は何が飛び出るのか?

ガーシー騒動も立花孝志という稀代の策士が仕掛けたもの。次は何が飛び出るのか?

除名処分のガーシーこと東谷義和はこれからも逃げ回るのか、それともどこかで覚悟して日本に帰国して懲役を食う覚悟をするのか分からないが、いずれにしてもこれからも悪名を轟かせることになるのだろう。しかし、本当に見るべきはこの男ではなく立花孝志であると言える。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

機会を与えられていたのに、それに応えなかった

ガーシーを自称する暴露系のYouTuber東谷義和《ひがしたに・よしかず》(51)は約29万票を獲得してNHK党(現・政治家女子48党)の参議院議員になったのだが、その後は国会に一度も出席せずに問題視され、ついに2023年3月15日に除名処分となって国会議員の肩書きを失った。

国会議員になってから除名処分になるまでの間、東谷義和は「いつか日本に戻って、ちゃんと国会に行きたい」とも発言していたが、結局は一度も日本に戻らないまま除名処分を受ける結果となっている。

自民党の世耕弘成参院幹事長は「公開議場での陳謝という場面を設けたにもかかわらず、まったくそれに応えることなく、今回こういう懲罰という事態に至った」と述べている。

東谷義和およびNHK党は東谷義和の除名処分を回避する機会を与えられていたのに、それに応えなかったので、手順を踏んで除名処分されたということになる。

客観的に見ると、東谷義和の除名処分は一方的に強権が発令されたわけでもない。除名処分ありきの動きであったわけでもない。同党の浜田聡参院議員は「ガーシー憎しの報道、一方的な報道」が問題であると言っているが、その認識は間違っていると言わざるを得ない。

東谷義和が日本に戻って国会に出席したら、今回の事態は十分に避けられたのである。その機会を与えられていたにもかかわらず、東谷義和が帰国しなかったから除名処分になったわけで、「ガーシー憎しの報道」がそれを招いたわけでも何でもない。

これは東谷義和自身が招いた問題であり「自爆」でしかない。

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熱狂的なファンや厚い支持層を持つ立花孝志

もともと東谷義和は日本で詐欺行為を行ったことを告発されて国外に逃亡した人間なのだから、帰国できないという事情もあった。

詐欺を告発されて逮捕されそうになったので海外に逃亡し、金がないので暴露系YouTuberをしたら悪名が上がって、立候補したら票が取れた。しかし、あっちこっちを暴露したり攻撃したりして敵を作りまくった上に、警察にも目をつけられているので日本に戻れない。

そういう意味では、稀に見る特異な議員であったとも言える。

もっとも、私のまわりは「彼に票が入ったというよりも、奇手を次々と繰り出す立花孝志氏の代理票である」という見方の方が強い。

「NHKをぶっ壊す」で世間の耳目を与えて、今までの政治家には考えもつかないような奇手・奇策・アイデアを次々と繰り出す。この立花孝志という人物には、熱狂的なファンや厚い支持層が存在する。

「東谷義和を議員にする」というのも立花孝志の奇想天外なアイデアのひとつで、2022年の参議院選挙はそれが大当たりしたのだが、だからこそこの票は東谷義和ではなく実質的には立花孝志を面白いと思っている人たちの代理票であったという見方である。

立花孝志は「悪名だろうが何だろうが知名度が当選確率を上げる」という事実に目をつけて、それを利用して選挙をハックする手法を取った。東谷義和の知名度を利用したら当選確率が上がると計算して選挙を仕掛けた。それは誰もが知っていることもでもあった。

それが当たったというのは、つまり29万人もの投票者の大部分は立花孝志のやっていることが面白いと感じて票を入れたわけであり、それを考えると確かに「東谷義和に票が入ったというよりも立花孝志に票が入った」という見方は正しいように思える。

NHK党の支持層は東谷義和をダークヒーローと喧伝しているのだが、実のところ真のダークヒーローは立花孝志なのだろう。

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これからは国会議員ではなく指名手配犯

東谷義和は担ぎ上げられて議員になったが、除名処分を回避できなかったので議員が持つ「不逮捕特権」がなくなった。不逮捕特権というのは、日本国憲法第50条で記述されたもので『国会議員は原則として国会の会期中逮捕されない』というものである。

議員であるというのは、そういう意味で脛に傷を持つ東谷義和には都合の良い身分であったということも言える。

しかし、2023年3月15日に除名処分を受けると共に不逮捕特権も喪失した。

これを受けて、警視庁は早速「動画配信サイト上で著名人ら3人を常習的に脅迫した」と常習的脅迫罪にて逮捕状を出し、外務省に旅券返納命令を求めると同時に、国際手配に向けた手続きを進める方針を示している。

東谷義和はこれを受けてすぐにライブ配信を行い、「一生帰国しないことを覚悟できた」と改めて日本に帰国しない意向を示しているのだが、ここから先は「茨の道」になると思われる。

何しろ、指名手配犯である。さらに旅券返納命令を無視し続けたら遅かれ早かれ不法滞在者となる。国会議員ではなく、ただの指名手配犯なのだから、法の庇護はまったくない。

今後は「旅券返納命令を無視して不法滞在をしている指名手配犯」として海外のどこかに潜伏することになるわけで、東谷義和にとっては立候補前よりも置かれている状況が悪化したということに他ならない。

東谷義和はこれからもずっと逃げ回るのか、それともどこかで覚悟して日本に帰国して懲役を食う覚悟をするのか分からないが、いずれにしてもこれからも悪名を轟かせることになるのだろう。

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東谷義和は完全にはしごを外された格好に?

これを仕掛けた立花孝志は、相変わらず奇策を連発している。東谷義和が「もう使えない」と悟ったら、すぐにNHK党の代表を降りて今度は「政治家女子48党」に改名すると発表して、こちらの方で次の戦略を進めたのだった。

政治家女子48党の党首には元女性子役タレントの大津綾香という女性を立てて注目を集め、一瞬にしてガーシー騒動の話題を政治家女子48党と大津綾香氏に移すというアクロバットをやってのけた。

策士家・立花孝志の面目躍如の展開だ。

「女性議員である」「若い議員である」という2つの利点を大津綾香は持つ。今後、立花孝志はそれを全面に打ち出しながら話題作りをして、次々と同党の擁立者と支持者を拡大していくことになるだろう。

このあたりの戦略変換の鮮やかさは、評価するしないは別にして本当に見事であると言える。立花孝志という人物の底知れぬ奇策と行動力には驚くばかりである。

ただ、東谷義和にしてみたら完全にはしごを外された格好になる。

「帰らなくてもできると言うから、こちらは立候補したのに、今さら日本に連れ戻せないから責任取って辞めます、名前を女子党にしますというのはジョークだ。ただのコントだ」と不満をぶちまける格好となっている。

世間から見ると、そもそも海外に逃亡した犯罪者が担がれて議員になったという事実からしてジョークであり、ただのコントにしか見えない。今の時代はそういうジョークみたいな人間でも知名度さえあれば議員になれる時代だというのを身をもって知らしめたのが東谷義和という存在だった。

そのような事実を俯瞰してみれば、政治家女子48党という政党も党首の大津綾香も、うかうかしていたら立花孝志の次の奇手が発動する頃には用済みになってはしごを外されることにもなりかねない。

いずれにしても立花孝志という稀代の策士は、今後も良い意味でも悪い意味でも世間を揺るがせ続けることになるのだろう。

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