ドル安円高で資産が目減りする心配するよりも「絶好の機会」を逃す心配をせよ!

ドル安円高で資産が目減りする心配するよりも「絶好の機会」を逃す心配をせよ!

1ドルが160円台だったときの資産額と、140円台になった資産額を比較して「こんなにも円換算の資産額は為替で目減りしてしまうのか」と精神的ダメージを受けた人は大勢いる。しかし、ドル安円高で資産が目減りする心配するよりも、絶好の機会を逃す心配をすべきなのだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

「いま売っておかないともっと損する」という考えかた

日銀が利上げを発表し、今後も利上げする方向だと述べ、FRB(連邦準備銀行)が利下げする方向であるならば、これまでの「ドル高円安」が是正されて「ドル安円高」になっていく。

実際、日銀が利上げを発表した7月31日から、そのような動きになった。このあと、株式市場はまれに見る大暴落となった。

日銀はこの株式市場の爆下げにショックを受けて「市場が不安定な状況では利上げはおこなわなず、当面は現行の金融緩和を維持する」と腰砕けになったので、ふたたび円はゆっくりと上昇して現在は147円台となっている。

しかし、日銀は「絶対に利上げしない」といっているわけではない。

日銀は利上げのできる環境を取り戻したいと切に願っているので、いつか再度の利上げがおこなわれるだろう。そして、FRBは景気悪化が見えてきた自国経済を鑑みて機動的に利下げをするわけで、短期的には「ドル安円高」の方向なのは間違いない。

そうであれば、ドル資産はドル安になった分だけ目減りしてしまうことになる。

円が160円台だったときの資産額と、20円も円高になった140円台の資産額を比較して、「こんなにも円換算の資産額は為替で目減りしてしまうのか」と、精神的ダメージを受けた人も大勢いるはずだ。

アメリカ株に投資していた投資家は、株式下落とドル安円高で二重の損失を食らっており、それに耐えられない投資家が長期投資であったはずのETFや投資信託を投げ打って投資の世界から逃げてしまったりしている。

「今後もドル安円高になるのであれば、いま売っておかないともっと損する」

株式市場から逃げた投資家はそう考えている。実際、そうなるかもしれないので、短期的な損を回避しようと思ったら「早めに逃げる」という考えかたも一概に間違っているというわけではない。しかし、それが最終的に正しいのかどうかは、また別問題となる。

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円換算の資産額が目減りしてしまう

ドル資産を保有する投資家は、つねにドル安で心がざわつくようになる。ドル安になればなるほど、円換算の資産額が目減りしてしまうからだ。

実際に今回の急激なまでのドル安円高を受けて、資産のすべてを米国株などにするのではなく、半分を日本株にするとか、ゴールドのような現物資産を持ってヘッジしようと考える人もいる。

しかし、米国株で長期保有の投資信託やETFや個別銘柄を持っている場合、売ることは想定していないのだから、為替変動はそのまま「かぶる」しかない。

私自身も、とくに為替ヘッジをしているわけではないので、為替の変動はそのまま受け入れている。極度のドル高になれば円換算で見た資産は爆増するし、極度の円高になれば円換算で見た資産は激減する。

しかし、ドル安円高になったとしても、長期投資で複利運用をした場合、絶妙に興味深いことが起こる。

たとえば、わかりやすく円が150円のときに100万円の米国株式を買ったとする。それが2年後には110万円となっていたとする。そうすると、1ドルが135円までドル安円高に触れても損益分岐為替上では赤字にはならないのだ。

100万円で買ったものが140万円になっていたとする。そうすると、そこから1ドルが20%下落して120円になっても、やはり損益分岐為替上では赤字にはならない。

ドル安円高にも過剰に行き過ぎることも普通にある。そうなったとしても、長期保有で複利運用して毎年5%以上もの利益が積み上げられていったら、ドル安円高の耐性がどんどん付いてくる。

キャピタルゲインやインカムゲインで増えた分だけ、ドル安円高のショックは吸収できている。

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将来、アメリカと日本のどちらの国力が強いか?

為替レートに関しては、短期的には貿易収支や、金利差や、市場の期待や、国際的な投資流動性や、要人の発言などが複雑に絡み合って決まっていく。

日米の為替レートに関しても、現在は金利差がクローズアップされているのだが、他にもさまざまな要因がある。そのため、一概に金利が縮まるから一直線にドル安円高になるとは決まっていない。方向的に「ドル安円高になりやすい」とはいえるが、日々の動きは直線的にはならない。

現に今も、一時は141円台にまでドル安円高が進んだが、今は147円台となっている。日銀副総裁の「市場が不安定な状況では利上げはおこなわない」という発言が147円台へ押し戻した。

トレーダーの心理や期待は、思いのほか為替レートを上にも下にも突き動かす。

しかし、かなりの長期の期間で見ると、為替レートは国力の比較となっていく。当然だが、成長し続けて国力が向上していく国の通貨は強くなるし、成長できなくて衰退していく国の通貨は弱くなる。

ドル円レードでいえば、将来「アメリカと日本のどちらの国力が強いか」が重要な要素となっていく。もし、日本の国力がこれから想定以上に強くなり、アメリカを追い抜くほどの経済成長を見せるのであれば、日本円はきっと強くなるだろう。

しかし、30年も日本を成長させることができない政治が、これからもだらだらと続き、少子高齢化も解決できず、イノベーションも失われ、政治も経済も弱体化する様相が見えている日本が、急に次の10年20年でアメリカを追い抜くような転換を見せてくれるのだろうか。

アメリカはイノベーションに満ちた国であり、AI(人工知能)で邁進して、これから10年20年先を見据えて生産性を向上させていくだろう。経済活動はますます活発化して世界をリードし続ける。その確率は非常に高い。

日本とアメリカを比較すると、あきらかにアメリカのほうが成長して国力を向上させていく確率が高い。

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ドル安円高で心配すべきことがあるとしたら

場合によっては、日本は私たちが想像している以上に急速に衰退してしまうかもしれない。それこそ、政治の無策によって貧困と格差が今より深刻化し、経済的な影響力も喪失して、もはや先進国であると見なされないような状況になるかもしれない。

どこかで日本が目覚めてくれて、不死鳥のように蘇ってくれるのであれば、それは日本人として非常にうれしいことなのだが、今の政治家の体たらくを見ていると、どうもそこまで強い希望は抱けない。

そもそも日本はアメリカの属国のような状況が続いている。日本がアメリカを追い抜いて繁栄するというのをアメリカが許すとは思えない。

そうであれば、今は一時的にドル安円高になったとしても、最終的にはドル高円安になっていく方向に賭けたほうがずっと勝率が高いということに気づくはずだ。円資産を持っているよりも、ドル資産を持っていたほうが「安全」なのだ。

だから、何らかの理由で円高になれば、「ドル資産が円換算で目減りした」ではなく、「円をドルに転換するのに最高の機会がきた」という部分にフォーカスを当てて、着実にドル資産を増やしていったほうがいい。

アメリカの株式市場には、世界を代表する優良企業《ブルーチップ》が大量にある。メガテック(Apple、Microsoft、NVIDIA、Google、Amazon、Meta)がその代表だが、それ以外にも、山ほど素晴らしい企業が存在している。

投資先に困ることはないだろう。いや、投資先に困る前に資金が足りなすぎて困るくらいの優良企業がそこにある。

ドル安の間は、こうした優良企業を買い漁るか、これらの企業をパッケージ化したETFを買い漁る絶好の機会でもある。ドル安円高で資産が目減りするとか、そんなことを考えて心配するよりも、ドル安円高という絶好の機会に買い漁ることができないことを心配すべきだ。

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