国防とは日本を守るための結界である。これが破れると日本はふたたび大きな困難に巻き込まれる。侵略を未然に防止し、日本の国土と国民を守るためにも、国防について考えることを避けることができない。そしてAIが国防の重要な要素になっていることに気づくべきだ。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
国家安全保障の中心にAI(人工知能)がある
日本にとって8月15日というのは特別な意味を持つ。1945年、昭和天皇がラジオを通じて「玉音放送」を行い、戦争が終わったことを国民に伝えたのがこの日だった。
政府はこの日を「戦没者を追悼し平和を祈念する日」と制定し、政府主催の全国戦没者追悼式が行われ、靖国神社にも多くの人々が英霊への追悼や鎮魂のために集まり、祈りを捧げる。
私たちがこの日に考えなければならないのは、国家安全保障の重要性である。日本国民を守るために、国防は最重要項目でもある。
国防とは日本を守るための結界である。これが破れると、日本はふたたび大きな困難に巻き込まれてしまう。侵略を未然に防止し、日本の国土と国民を守るためにも、国防について考えることは避けることができない。
8月15日はとくに、過去を振り返り、未来をつなぐためにも、「いかに国を守るべきなのか」を真剣に考えるべきなのだ。
その中で、私たち日本人が喫緊の課題として取り組まなければならないのは、米中が国家安全保障の中心にAI(人工知能)を深く緻密に取り入れて能力を向上させている事実だ。
日本人はあまり深く考えていないのだが、AIは「次世代兵器」である。場合によっては、このAIこそが人類の生み出した「最終兵器」となるのかもしれない。それくらいのインパクトがAIにはある。
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それは、核兵器と同じくらいのインパクトを持つ
「軍事としてのAI」で最先端を走っている企業がある。それがアメリカの愛国的軍事企業であるパランティア(Palantir)だ。パランティアの持つAIP(AIプラットフォーム)は、まさに今後の国防の道しるべともなるものであり、「AIを国防にどう使用するか」の、もっともすばらしい例でもある。
パランティアはまだChatGPTが生成AIで広く知られる前から、あらゆるビッグデータを解析して的確な答えを導くシステムを構築していた。それがAIによってブーストされて、より高性能で高度なシステムへと飛躍させた。
現在、パランティアは民間にも進出しているのだが、軍事に特化したプラットフォームはTITANと呼ばれるもので、このTITANの高度なアルゴリズム戦争システムで得られる優位性は、「核兵器と同じくらいのインパクトを持つ」と述べる関係者もいる。
TITANが収集し、分析するビッグデータは宇宙、空中、陸、人など多岐に渡る。
現地の軍の動向。
政治家、要人、軍人の発言。
地球を周回する無数の衛星からの情報。
現地の天候情報。
現地の地形。
現地の写真。
SNSからの情報。
現地メディアからの情報。
現地の電力情報。
現地の交通情報、道路情報。
ドローンと連携した監視情報。
こうしたところから拾える情報や、はりめぐらされたセンサーが、ブラックホールのように情報を飲み込む。そしてTITANが解析し、もっとも良い判断を提示してくれる。
このシステムの有用性を認めたアメリカ政府は、空軍にも、陸軍にも、海兵隊にも、中央情報局(CIA)にも、連邦捜査局(FBI)にも取り入れて、広範囲にわたってAIを活用するようになっている。
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効率的に相手を爆殺することができるようになる
さらにAI(人工知能)は物理的な武器にも搭載されるようになり、標的を確実に破壊する自律攻撃能力も有するようになっていく。その筆頭にあるのが無人機やドローンである。すでに欧米・ロシア・中東では、ドローンを「兵器」として認識するようになっている。
ウクライナとロシアの戦争では、ウクライナ側のドローンがロシア軍に対する攻撃で効果を発揮している。ウクライナは戦場で起きているいくつもの動画を上げているので、私たちもドローン戦争で何が起こっているのか見ることができる。
ウクライナのドローンは、ロシア兵を執拗に追いかけ、ピンポイントでロシア兵に体当たりして爆殺している。あるいは、敵のジープや戦車や軍用車や軍用施設なども破壊している。
現在はまだドローンに取りつけられたカメラを見て、人間がドローンを操作しているのだが、やがて進化したら、AIが巧みに標的を追尾し、相手の反撃を避け、効率的に相手を爆殺することができるようになる。
一度、標的を設定したら、あとはAIが変則的に逃げるターゲットを爆殺してくれるのだから、これほど効率的な兵器はない。敵兵を抹殺するのに人間の判断が必要なくなり、AIが自分で判断して相手を殲滅していくことができる。しかも、ドローンは低コストなので、なおさら使い勝手が良い。
AIはこうした方向に進化している。自国がAIに邁進しなければ、敵国がAIに邁進して自分たちがAIによって抹殺されていく。まさに、これからはAIを制する軍や国家が次世代の戦争に勝つのだ。
AIに遅れを取るというのは、いかに危険なことなのかわかるはずだ。
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「未来の日本には何が必要なのか」を考える
AIは取りこぼすことができない次世代の兵器である。このように考えると、日本が国家安全保障のためにいったい何をしなければならないのかがわかってくるはずだ。
日本がAIで出遅れるのであれば、日本の次世代は劣勢となる。国防さえままならない。戦っても勝てなくなる。だから、日本もまたAIに邁進しなければならないのだ。そこに日本の未来がかかっている。
心配なのは、日本ではこうした新しい技術、パラダイムシフトが生まれたとき、まず最初に拒絶感や反感を持つ人が少なからず存在することだ。
たとえば、かつてパソコンが社会を変えようとしていた時代でも「パソコンは下っ端がやるもの。上の人間はそんなオモチャをさわる必要はない」といってふんぞり返っている人もいた。
ワープロが一般化し、ワープロ文書が広がっていく時代でも、「手書きじゃないと魂が通じない」とかいって、断固ワープロを拒否する作家などもいて、そういう時代遅れな姿勢が支持される時代もあった。
インターネットが爆発的普及していた頃も「パソコンとパソコンがつながっただけでたいしたことはない。自分はスタンドアローンのほうが好きだ」といっている人もいたし、スマートフォンが広がったときも「電池は1日しか持たないし、ボタンもないので使う意味がない。流行るわけもない」といっている人もいた。
キャッシュレスの時代になっても「絶対に現金のほうがいい」といって、今もなお、かたくなにキャッシュレスを拒絶する人もいる。
そして今、AIという巨大なパラダイムシフトが登場しているのだが、やはり、かたくなに真価を認めない人も大勢いる。
誰もが新しい技術を評価できるわけではないので、こうした人たちが一定数いたとしてもしかたない。しかし、経営者や政治家などのリーダーが技術の評価を見誤ると、国そのものが「まるごと時代遅れ」になってしまう。
そして、国防さえままならず、国土や国民を危機にさらすことになる。
そうならないためにも、8月15日には「未来の日本には何が必要なのか」をしっかりと考えるべきなのだ。