【PFF】は高配当を毎月もらえる優先株ETF。富裕層やFIREはメリットが享受できる

【PFF】は高配当を毎月もらえる優先株ETF。富裕層やFIREはメリットが享受できる

ETF(上場投資信託)でも優先株ETFが存在していて、その中で日本の投資家にもよく知られているのがブラックロック社が出しているiシェアーズ優先株式&インカム証券ETF【PFF】かもしれない。高配当を毎月もらえる優先株ETFで、富裕層やFIREはメリットが享受できる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

iシェアーズ優先株式&インカム証券ETF

株式には、普通株とは別に「優先株(ハイブリッド証券)」という種類のものがある。優先株とは、普通株よりもいくつかの優先的な権利を持つ「株式と債券の中間に位置する有価証券」を指す。

たとえば、企業が解散した際に残余財産の分配を優先的に受けられるとか、剰余金の配当を優先的に受けられるとか、配当は普通株よりも高めとか、そうしたメリットが優先株には存在する。

しかし、その代わりに株主としての議決権に制限が設けられているので、経営に口出しすることはできない。とはいっても、普通の株主はほぼ経営に口出しはしないし、それで配当が普通よりも高いのであれば、そちらのほうが良いと考える。

ウォーレン・バフェットも投資先の企業の経営に口を出さないタイプなので、たとえば、2011年に大量購入したバンク・オブ・アメリカ【BAK】は優先株を購入して高配当を享受していた。

最近、バフェットはこのときに投資したバンカメの保有株式を売却しているのだが、次の大規模な金融ショックがきたときに、ふたたび安くなった優良企業《ブルーチップ》を優先株で大量に購入する動きとなるのだろう。

このように、安定的な高配当を享受したいという投資家にとっては、優先株の保有はなかなか魅力的な投資対象となる。

ETF(上場投資信託)でも優先株ETFが存在していて、その中で日本の投資家にもよく知られているのがブラックロック社が出しているiシェアーズ優先株式&インカム証券ETF【PFF】かもしれない。

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これから金利が引き下げられていくのであれば?

【PFF】の内訳を見ると、76.9%が金融系の企業で占められている。ウェルズファーゴ、シティグループ、バンカメ、JPモルガンチェース等ほぼアメリカの金融企業の優先株式をパッケージしたものであるといえる。

現在の配当率は6.20%、過去12ヶ月分の配金利回りは6.34%となっている。

2024年8月23日、ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムで、FRB(連邦準備銀行)のパウエル議長は、「調整のときが来た。方向性は明確だ」と述べて、いよいよ9月の利下げを強く示唆する発言をしている。

現在、アメリカの政策金利は5.00-5.25%なのだが、ここから状況を見て引き下げられていく。

これから金利が引き下げられていくのであれば、投資家の目は必然的に国債からリスク資産である株式のほうに向く。まだFRBは正式に利下げに向けて動き出しているわけではないのだが、株式は先見性がある。実際に利下げが宣言される前に、株式への資金流入が起こるだろう。

興味深いのは、現在すでにアメリカ株式市場すべてをパッケージした【VTI】よりも、高配当ETFの【VYM】のほうが一足先に最高値をつけていることだ。国債から高配当が失われていくのであれば、高配当の企業の株式が選好される。その典型的な流れが起こっているのが株価の動きで見て取れる。

そして、同時に高配当の優先株式&インカム証券をパッケージした【PFF】にも資金が流入して株価が急ピッチで上昇しているのがわかる。【PFF】は、FRBが利上げをにおわせはじめた2022年から急激に下落していった。

これから起こるのは利下げなので、【PFF】が買われるようになって値を上げていったとしても不思議ではない。そういう意味で、【PFF】はこれから興味深い動きになると思っている。

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「高配当」を「毎月」もらいたいなら……

現在でも配当が6%を超えるのだから、高配当を好む投資家にとって【PFF】は非常に良い選択肢のように見えるはずだ。しかし、優先株ETF【PFF】と高配当ETF【VYM】が違うところは、【PFF】は値上がり益(キャピタルゲイン)が得られにくい投資対象であることだ。

現に、2010年あたりから2022年あたりまで【PFF】の株価は40ドル弱で延々と推移していて、まったく突き抜けることはなかった。仮に38ドル〜40ドルでこのETFを保有したら、キャピタルゲインはまったく手に入らなかったということになる。

株価が安定しているといえば安定しているのだが、キャピタルゲインも欲しい投資家にとってはまったく面白味のないETFになるのかもしれない。しかし、ある種の投資家には【PFF】は刺さる。

どういう投資家なのか。それは、すでに大きな資産があってキャピタルゲインは必要としておらず、投資先の企業に口を出すつもりもなく、ただ「高配当」を「毎月」もらいたい投資家である。

【PFF】は配当を毎月出してくれるのだ。

配当率6%で税金等々を考慮しないで考えると、1億円を【PFF】に突っ込んでいたら、年間600万円の配当がもらえることになる。この600万円が12分割されて入ってくるので、月に50万円の配当がくることになる。

月に50万円の配当がもらえるのであれば、ほとんどの人は無茶な贅沢でもしない限り、それなりに充実した暮らしができるはずだ。月に25万円でもいいというのであれば、5000万円分の【PFF】を買って6%で回せば実現する。

配当だけで永遠に暮らしていきたいと思う人がいたとしたら、金融ショックか何かで【PFF】が爆下げしたときにでも大量購入しておけば、あとは【PFF】の価格がどうなろうが、永久に「それなりの配当」が手に入るのだから大きな魅力を感じるはずだ。

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【PFF】は配当だけ延々ともらえる永久機関

【PFF】は金融系の企業の優先株で76.9%を占めている。ということは、政策金利という避けようのないものに株価が影響されるし、銀行などの企業を直撃するショックがきたときも大暴落するリスクがある。

たとえば、2008年のリーマンショックは、サブプライムローンの返却が滞ったことによって、全金融機関がショックに巻き込まれた。銀行は莫大な不良債権を抱えて首が絞まったのだが、このように金融機関が元凶となる経済ショックが引き起こされると、【PFF】の株価は大暴落する。

【PFF】は2009年3月には15ドル近辺まで暴落していた。

しかし、金融市場が全崩壊して資本主義が消滅するような事態が起きたら、現代文明そのものが終わる。全世界の政府・中央銀行・経済界は、金融市場の破滅を前にしたら全力でそれを阻止する。

そのため、金融市場のショックは、それがどんな悲惨なものであっても、やがては収束して、いつかは傷が癒える。現に、リーマンショック級の金融危機でも資本主義は死ななかった。今後も死なない確率のほうが高い。

そうであれば、【PFF】が暴落したらその時点で爆買いし、時期を待っていれば、買値をなかなか割らないで株価が安定的に推移し、あとは配当だけを延々ともらえる「永久機関」が作れることになる。

【PFF】は配当目的だけで延々と持ち続けられる投資家にとって、非常に有利なETFである。それも、まとまった大きな金額を永遠に置いておける投資家であればあるほど、有利さが際立っていく。

ひとことでいうと「富裕層が大きなメリットを感じられるETF」であるといえる。

あるいは、大金を何とか貯めてFIREすることができた人にも、大きなメリットがあるETFともいえるかもしれない。

株式市場は不安定な場所なのだが、その不安定な中で唯一「精神安定剤的なもの」があるとしたら、それが配当である。【PFF】はそこに特化しているともいうべきETFなので、惹かれる投資家も多いはずだ。

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