もはや、投資対象としてAI企業を抜きにして考えることができなくなる日もくる

もはや、投資対象としてAI企業を抜きにして考えることができなくなる日もくる

人類が生み出した最強のテクノロジーであるAIは、今後さまざまな分野で世界を大きく変革していく。その影響は広範囲に及び、私たちの生活や社会のあり方を根本から変えることになる。そうであれば、私たちは頭からAIに飛び込んだほうがメリットがある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

「ジョブズのリンゴ」が現代社会を変えている

「人類を変えた3つのリンゴがある」といわれている。ひとつは「イブのリンゴ」である。人類はこれによって失楽園を経験することになった。もうひとつは「ニュートンのリンゴ」である。人類はこれによって科学に邁進することになった。

そして、もうひとつは「ジョブズのリンゴ」である。Apple【AAPL】という企業の登場によって、人類は凄まじいイノベーションとテクノロジーの社会に生きることが決定づけられた。

スティーブ・ジョブズの生み出したテクノロジーは世界を変えた。まずは、GUI(グラフィック・ユーザー・インターフェイス)を搭載した誰でも使えるコンピュータ「Macintosh」を社会に提示して受け入れられた。

そして、ここ20年のあいだに世界を一変させたイノベーションであるスマートフォン「iPhone」を登場させて、私たちの社会のあり方をガラリと変えてしまった。すべてジョブズが華々しく社会に登場させたものだった。

ジョブズは2011年2月に亡くなっているのだが、Appleは今もなお世界有数の時価総額を持ち、世界最強のテクノロジーを持った企業であり続けている。

今後の社会は、インターネットとテクノロジーの進化がますます現実社会を飲み込んでいき、それが大きな潮流となって世界を覆い尽くしていく。その中では現実社会に強烈なインパクトを与える「イノベーション」に注視する必要がある。

今後も人類を一変させるイノベーションが湧き上がって、時代を変えていくことになるだろう。今、まさにその「転換」が私たちの目の前に起きている。それが人工知能(AI)の躍進だ。

OpenAIが2022年11月にリリースした生成AI「ChatGPT」によって、「ジョブズのリンゴ」が切り拓いたテクノロジーとイノベーションの世界が、あらたなパラダイムシフトを生み出そうとしている。

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AIはなくてはならない驚異的なテクノロジー

人類が生み出した最強のテクノロジーであるAIは、今後さまざまな分野で世界を大きく変革していく。その影響は広範囲に及び、私たちの生活や社会のあり方を根本から変えることになる。

製造業では、AIを搭載したロボットがより高度な作業を行えるようになる。生産ラインの効率化が進んでいく。また、AIによる需要予測や在庫管理の最適化により、サプライチェーン全体の効率が向上する。

金融分野では、AIによる高度な市場分析や投資判断の支援が一般化し、より精緻なリスク管理とリターンの追求が可能になる。さらに、AIを活用した新しい金融サービスが次々と登場していき、個人の資産運用や企業の財務管理にもイノベーションをもたらすはずだ。

医療分野では、AIによる画像診断の精度向上や、個人のゲノム情報を活用したオーダーメイド医療の実現が期待される。人の身体はひとりひとり違っている。こうした違いに医療がAIで対応できるようになっていくのだ。

AIを用いた創薬プロセスの効率化により、新薬開発のスピードが加速する可能性がある。こうした局面では莫大な情報を解析して最適な答えを出す汎用的なシステムを、パランティア【PLTR】という企業が開発して現場で使われている。

AppleはiPhoneとは別に「Apple Watch」というウェアラブルデバイスも生み出しているが、ゆくゆくはApple WatchもAIと組み合わされるようになり、個人の健康状態をより迅速にモニタリングし、疾病の早期発見や予防に役立てることが可能になる。

教育に関しても、交通に関しても、物流に関しても、あるいはエネルギーに関しても、気候変動の対応に対しても、ありとあらゆる場面で、AIはなくてはならない驚異的なテクノロジーとして活用されていくことになる。

次のイノベーションは人工知能(AI)の分野で起きるのは確実なのだ。その中で、もっとも社会に必要とされ、莫大な利益を手に入れた企業が次の時代の巨大企業になっていく。

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AIはインターネット以来の最大の技術変革

それがわかっているから、Microsoft【MSFT】も、Apple【AAPL】も、Meta【META】も、Amazon【AMZN】も、Alphabet【GOOG】も、Tesla【TSLA】も、そして今はまだ無名の企業群も、猛烈な勢いでAIの「軍拡競争」にのめり込んでいる。

Microsoftは、OpenAIとの戦略的パートナーシップを通じて、AIの分野で急速に台頭する企業となった。Azure AI PlatformやCopilotなどの製品を通じて、企業向けAIソリューションの提供に力を入れているが、それが成果と売上に結びついている。

GoogleはAI研究の最前線に立ち続けており、DeepMindやGoogle Brainなどの研究部門を通じて、革新的なAI技術の開発をおこなっている。今後は検索エンジンにもより深く取り入れられて、今までと違うカタチになっていく。

AppleはAIには乗り遅れた面があるが、iPhoneという驚異的なデバイスを保有しているので、このデバイス上で動くAI処理に注力しており、プライバシーを重視したアプローチを取っている。

MetaはLLaMAなどの大規模言語モデルの開発をしているのだが、すでに自社SNSでユーザーに最適な広告を表示するという面で成果を出している。

AmazonはAWSを通じて企業向けのAIサービスを提供しているのだが、それ以外にもサプライチェーンを最適化するAIによって、1日に4億以上の商品の需要を予測し、効率的に在庫管理し、迅速な配送を実現しようとしている。AIを活用して配送プロセスを最適化し、過激なまでに早い商品受け渡しがおこなわれるはずだ。

「クラウド以来、そしておそらくはインターネット以来の最大の技術変革」とAmazonはAIを定義づけている。このAIの頭脳であるGPUを製造しているNVIDIA【NVDA】が世界でもっとも重要な企業と成り上がっているのは、まさに必然であったといえる。

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AI抜きにしてテクノロジーを語ることはできない

AIはすでに、求められた文章を生み出す仕事もしているし、求められた画像や動画をも生み出して広がっている。さらに、AIは音楽を作り出し、歌詞を作り出し、それを歌ったりもする。

芸術活動や創作活動はコンピュータにはできない分野であると思われていた時代もあったのだが、そんな思い込みは生成AIがあっさりと覆した。

今後、AIは私たちに語りかけ、私たちと会話し、私たちの感情を揺さぶったりすることもあるだろう。2013年の映画『her/世界でひとつの彼女』のようなSFは、いずれ現実になる可能性もある。

そして、これからは私たちがまったく想定していない「何か」がAIによって生み出されて、得体の知れない新奇な世界が誕生することもありえる。

私たちは20年前にスマートフォンによってGPSと地図アプリの組み合わせによる高精度なナビゲーションができるとは思わなかったし、YouTubeやNetflixのような動画ストリーミングサービスを、いつでもどこでも高画質で視聴できるという概念もなかった。今はそんなのは当たり前にできている。

それと同じで、これからAIの進化は想像を絶する何かを生み出し、それに成功した企業が文明を根底から変えていくことになるだろう。

今はまだ「AIの何が文明をパラダイムシフトするのか」については、人類は何もわかっていない状態だ。経営者も、そしてユーザも、まだそこに気づいていない。だから私たちは未来を予測できない。

AIにも人類と良い組み合わせもあれば、悪い組み合わせも考えられる。

たとえば、AIと軍事の組み合わせで、効率的に人間を大量殺戮できる脅威のAI戦闘マシーンが誕生するリスクもある。高度に発展したAIが人類に反旗を翻す予測をする科学者もいる。それとはまったく逆に、AIが人類の問題をことごとく解決する素晴らしい未来もありえる。

どちらに転ぶのか、まったくわからない。

わかっているのは、AIの分野で新しいイノベーションが次々と生まれ、そこから文明がまた大きく変化していくことだ。走り出したAIによる時代変革は、もうとめられない。私たちはそのような未来がくるということを理解しつつ、自分を変えていかなければならないことになる。

AIは、果たして何を生み出すか。どのような企業がどのようなAIイノベーションで世界を揺るがすのか。

もはや、投資対象としてAI企業を抜きにして考えることができなくなる日もくる。「ジョブズのリンゴ」が切り拓いたイノベーションとテクノロジーの社会は、これからも続き、ますます広く深く文明に根づくからだ。

そうであれば、私たちはライフスタイルにも投資にも、頭からAIに飛び込んだほうがメリットがある。全力でAIを理解し、取り入れたほうがいい。どのみち、AIが世界を取り巻くことになるからだ。

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