最終的には、AIに知見のある人間が急激に成り上がる。そして、AIを活用した新興企業や新しいサービスが、既存の企業や旧態依然のサービスに取って変わっていく。今はまだそのような動きは起こっていないのだが、これから10年から20年のあいだに間違いなくこの動きが起きてくる。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
社会全体に大きな変革をもたらすと確信
AI(人工知能)はこれからの時代の破壊的イノベーションになる。
かつて、PCの登場はビジネスを根底から変えた。そして、ワープロや表計算ソフトもビジネスを根底から変えた。次に携帯電話がビジネスを根底から変え、インターネットがビジネスを根底から変えた。
そして、ここ10年ほどでスマートフォンがビジネスを根底から変えた。それと同じく、今後はAIがビジネスを根底から変えていく。
AIという破壊的イノベーションは、まだはじまったばかりなので、多くの人はこれが「社会を根底から変える」ということに対する自覚はないのだが、私自身はAIが人々の生活や仕事、そして社会全体に大きな変革をもたらすと確信している。
製造業ひとつを取っても、工場の自動化、製品の品質管理の高度化、製造工程の最適化、サプライチェーンの管理、メンテナンスの自動化によって生産性は著しく向上する。
サービスに関しても、カスタマーサービスの自動化が進み、パーソナライズされたきめ細かいサービスがおこなわれ、需要予測の精度も向上していき、やはり生産性は著しく向上する。
金融業界も、リスク分析がより高度化し、投資判断が自動化し、顧客のニーズに対しても最適な提案がおこなえるようになって、ここでも生産性は著しく向上する。医療・ヘルスケアの分野でも、教育の分野でも、交通の分野でも、インフラの分野でも、環境の分野でも、エネルギーの分野でも、全セクターでAIが生産性を向上させる。
もはや私たちは、AIを軽視することも、無視することも、拒絶することもできなくなる。それくらい社会に浸透し、現代文明を変えていく。
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場合によってはAIが社会転覆する可能性もある
かつて、ビジネスの現場にPCが入り込んだときに「こんなものは部下にやらせる」といっていた上司が、次の時代にはみんな役立たずになって駆逐された。彼らはタイピングもできず、PCの操作もできず、ソフトウェアも使えなかったのだ。
スマートフォンが入り込んだときに「携帯電話は通信だけできればいい」といっていた上司がやはり駆逐された。笑える話だが、15年ほど前「スマートフォンを使ったら頭がバカになる」と大まじめに主張していたバカな人もいたのだ。
スマートフォンも使わないという妙なポリシーが格好良いと思っている人もいる。しかし、彼らは手元でインターネットにアクセスできず、マップやメッセージにアクセスできず、さまざまな業務用アプリも使えず、結局は取り残されるだけになってしまった。
同じことがAIの時代でも起こる。
AIを拒絶していると、時代から駆逐される。現代文明のありとあらゆる局面にAIが入り込むので、もはやそこに飛び乗らないと「社会から蹴落とされるだけの人」になってしまう。
私自身はChatGPTやGeminiやPerplexityなどの生成AIに触れて衝撃を受け、AIを取り巻く技術的な情勢を知るにつれて「現代の社会を根底からひっくり返すのはAI(人工知能)だ」と確信した。
良い意味でも、悪い意味でも、AIは社会をひっくり返す。
社会の生産性を向上させ、社会をより進化させるという部分はAIの「光」の部分であると思う。しかし、AIは軍事方向でも使われるので、効率良く人間を殺戮し、効率的に居住地区を破壊することもある。こうした部分はAIの「闇」の部分となる。
「闇」の部分は今はまったくクローズアップされていないが、10年後、20年後は、AIの闇が大きな社会問題となっているはずだ。場合によっては、AIが社会転覆する可能性も指摘されている。
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つまり、AIを軸にした下剋上が始まるのだ
これから起こるであろうAIの急速な発展によって、私たちの社会は大きな転換点を迎えることになるのは100%確実なことになった。かつてPCが社会を変え、インターネットが社会を変え、スマートフォンが社会を変えたように、今度はAIが社会を変える。
その結果、何が起こるのかというと「下剋上」である。
人工知能技術の急速な発展により、既存の産業構造や社会システムが根本から覆される現象が起こる。そうすると、今の社会に固執している「AI以前の人間」と「AIに最適化された人間」とのあいだで対立が起こる。
そうなった場合、間違いなくAIに最適化された人が成り上がっていくようになる。
PCを拒絶していた人間が蹴落とされ、インターネットを拒絶していた人間が蹴落とされ、スマートフォンを拒絶していた人間が蹴落とされたのと同じように、AIを拒絶していた人間が蹴落とされる社会になる。
そして、PCにくわしい人間が有利となり、インターネットの理解のある人間が有利となり、スマートフォンを縦横無尽に使える人間が有利になったのと同じように、AIに深い理解があって使いこなせる人間が有利な社会になっていく。
最終的には、AIに知見のある人間が急激に成り上がる。そして、AIを活用した新興企業や新しいサービスが、既存の企業や旧態依然のサービスに取って変わっていく。今はまだそのような動きは起こっていないのだが、これから10年から20年のあいだに間違いなくこの動きが起きてくる。
つまり、AIを軸にした下剋上が始まるのだ。
まだAIの驚異的な能力を理解している人は少ないのだが、今後はAIを徹底的に使いこなし、AIに最適化された人間が有利になる時代がやってくる。すぐ目の前だ。
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AIの登場には、ひさしぶりに心が躍るものがある
「もっとも強い者が生き残るのではない。もっとも賢い者が生き残るのでもない。唯一、生き残る者は変化できる者である」
このような言葉がある。進化論のなかでよく使われている言葉なのだが、ビジネスの現場でも普通に使われている。今、私たちは破壊的イノベーションとしてのAIの登場を見て、改めてこの言葉を噛みしめるときがきているのかもしれない。
今も「AIなんかインチキだ」と断言するアナリストや社会学者や著名人がいるのは知っているのだが、そういう人間はいつの時代でも出てくるので取り合わないでもいい。PCの時代でも「手書きのほうが味がある。印字された文字なんかだめだ」とかいっている人もいた。
インターネットの時代でも「ただPCがつながったくらいで大騒ぎするな」といっている人もいたし、スマートフォンの時代でも「こんなのはオモチャ。女子高生も使わない」とかいっている人もいた。
時代の変化がよくわからないので、頭から拒絶してしまう人がいるのだ。しかし、AIが起こす歴史的な転換を拒絶していたら、間違いなく取り残されてしまう。変化できないまま取り残されて蹴落とされていく。
AIが社会を激変させるのが確実なのだから、そうであれば、自分の職業やライフスタイルに誰よりも早く、誰よりも深くAIを取り込むと、生き残れるだけでなく、先行者利益が得られたり、下剋上できたりする可能性も高まる。
個人的には、AIの登場にはひさしぶりに心が躍るものがある。
このような時代の変化を目の当たりにし、私もまた自分自身の人生を急いで変えることにした。今後の観測も、ライフスタイルも、テーマも、投資の個別銘柄も、AIに照準を合わせることに決めた。要するに、人生をAIに最適化する。
私自身は「PCの時代」「インターネットの時代」「スマートフォンの時代」をそれぞれ生きていた。もしかしたら、私の人生最後の破壊的イノベーションになるかもしれない「AIの時代」にも、よろこんで変化して生き残りたいと思っている。