オラクル。世界最強のデータベース企業はAIと原子力によって大きく飛躍するか?

オラクル。世界最強のデータベース企業はAIと原子力によって大きく飛躍するか?

超巨大なデータセンターには、安定的な電力が必要だ。小型モジュール式原子炉は安全性が高く、建設期間も短いとされる。また、必要に応じて増設できる柔軟性もある。AIは原子力と一心同体だ。オラクルはエネルギーとテクノロジーの融合を目指し、次の時代の覇権を狙う。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

オラクルは世界最強のデータベース企業である

オラクル【ORCL】の好決算を受けて、2024年9月10日から同社の株価が10%以上も噴き上げており、過去最高値を記録している。

オラクルはすでにMicrosoftのAzureでも、Google Cloudでも、自社のデータベースが稼働できるように提携しているのだが、AmazonのAWSとも契約を締結したことを発表し、こうしたことも好感されている。

1980年代にラリー・エリソンが共同創業して以来、オラクルは技術革新を続け、その分野をリードする企業としての地位を確立している。近年はクラウドコンピューティングとAI分野への積極的な投資により、新たな成長フェーズに入っているのが見て取れる。

現会長兼最高技術責任者のラリー・エリソンは、AIの重要性を早くから認識していた。それは、AIについての発言の数々に現れている。

「AIは、これからのソフトウェア開発やデータ処理において不可欠な技術である。私たちの業務を根本的に変えるものだ」「AIは我々の最大のビジネスチャンスになる」「AIとクラウドの融合により、企業は今後10年間でこれまでにない生産性の向上を実現できるだろう」

ラリー・エリソンはそう断言し、AI技術の導入が企業の競争力に直結することを強調している。AIは、現在のオラクルの戦略の中心にある。

すでにオラクルのデータベースは高度なAI機能を備えており、機械学習を組み込んだ自動データ処理や、AIを用いた高度な分析機能を提供している。これにより、企業は自社のデータをより効果的に活用し、迅速な意思決定をおこなうことが可能となる。

この分野ではパランティアが突出しているのだが、オラクルが追随してくるのかもしれない。(ダークネス:パランティア。アメリカと敵対する国家とはビジネスをしない筋金入りの愛国企業

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CEOサフラ・キャッツは企業買収のプロ

興味深いことに、パランティアCEOアレックス・カープも、オラクルのCEOサフラ・キャッツも、ともにユダヤ系で情報とAIの最前線にいる。サフラ・キャッツはイスラエル系アメリカ人で、父は原子核物理学者、母はホロコースト生還者という生い立ちだった。

1999年にオラクルに入社して、最高財務責任者(CFO)や社長を経て2014年からオラクルのCEOとなっている。興味深いのは、サフラ・キャッツはオラクルに入ってから130件もの企業買収をおこなっていることである。

ここにオラクルの成長の秘密がある。重要な分野があると買収で手に入れて、オラクルの技術に収斂させていく手法だ。サフラ・キャッツが重要な企業を買収し、ラリー・エリソンが技術の統合を指揮している感じだろうか。

オラクルの2023年度の業績を見ると、クラウド事業が急成長していることが見える。2023年第4四半期の決算報告によれば、クラウドインフラストラクチャの収益は前年同期比で76%増加し、14億ドルに達している。

これは、AIや機械学習を活用したサービスが、企業のデジタル変革において重要な役割を果たしていることを示している。

オラクルはとくに、ヘルスケア分野でのAI活用に大きな可能性を見出しており、国民健康記録データベースの構築を通じて、社会とオラクル双方に利益をもたらす取り組みを進めている。

この構想は、2022年に完了した米電子医療記録大手であるCerner(サーナー)社の買収によってさらに強化された。

そして、次の成長エンジンとして、オラクルは「ソブリンAI」という概念を打ち出している。国や組織がデータの主権を保ちながら、AIを活用できるようにする技術であり、今後は間違いなく国家の基盤となるものだ。

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オラクルもまた原子力発電に飛び込んでいく

各国政府は、国民の個人情報をこれからすべてクラウドで管理するようになり、AIが個人のあらゆる情報を引き出して国家に提示するようになる。この技術的基盤には堅牢なデータベースが欠かせない。オラクルは世界最強のデータベース企業であり、この分野で大きなアドバンテージがある。

「ソブリンAI」は厳しい制約とセキュリティ保護が課せられる。たとえば、国民の戸籍情報や健康情報や課税情報などは、他国に存在するサーバーで管理することは絶対に許されない。また、最重要データに関してはローカルでの管理も必要となる。

そのため、ローカルで使用可能なサービスが必要となってくるのだが、オラクルはこれを提供できる技術がある。「ソブリンAI」はNVIDIAもまた強く推進している分野なのだが、国家はAI企業にとっては次の重要な顧客になるだろう。

こうした方向性なので、オラクル自身が巨大なデータセンターを構築し、システムからサービスまでを一元管理することには大きな意味がある。

そこで、ラリー・エリソンは、1ギガワット(GW)を超える処理能力を持つ巨大データセンターの建設計画をあきらかにして、テクノロジー業界の度肝を抜いている。注目すべきは、この巨大施設の電力源として、3基の小型モジュール式原子炉(SMR)を導入するという驚くべき構想だ。

オラクルは現在、世界中で162のクラウドデータセンターを運用または建設中だが、その中で最大のものでも800メガワット(MW)の容量にとどまっている。1GWを超える新施設は、これまでの常識を覆す規模となる。

超巨大なデータセンターには、安定的な電力が必要だ。小型モジュール式原子炉は安全性が高く、建設期間も短いとされる。また、必要に応じて増設できる柔軟性もある。

AIは原子力と一心同体だというのは以前にも書いた。(ダークネス:人々はまだ気づいていないが、今後AI(人工知能)と原子力発電は一心同体となる

Amazonも原子力を手がけることをすでに発表しているが、オラクルも原子力に邁進していく。もう一度、CEOサフラ・キャッツの出自を振り返って欲しい。彼女の父親は「原子核物理学者」である。

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躍進していくAIの最大の敵は誰なのか?

超巨大データセンターには安定したギガワットレベルの電力源が必要であり、その電力を生み出すのは原子力発電しかない。そのため、AIと原子力は今後は一心同体の関係となる。

しかし、従来の原子力発電所ではリスクも高い。そのために小型モジュール式原子炉が今後の主役となる。ラリー・エリソンはこれについて「これは単なるデータセンター建設ではない。エネルギーとテクノロジーの融合による、新たな時代の幕開けだ」と述べている。

この構想が実現すれば、データセンター業界に大きな変革をもたらす可能性がある。24時間365日、高い信頼性で運用できるデータセンターは、AIやクラウドサービスの発展に大きく貢献することになる。

AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)で巨大なデータセンターを必要としているAmazonも、ペンシルベニア州の原子力発電所に隣接するデータセンター・キャンパスを6億5,000万ドルで買収して、原子力発電に舵を切ろうとしている。

この分野では、ビル・ゲイツが先行しており、同氏が筆頭オーナーのTerraPower(非公開企業)が、最長100年間も燃料交換がいらない次世代原子炉の建設をいよいよワイオミング州で着工している。

AIを進化させるために、原子力の復活は必要不可欠のものでもある。ただ、環境保護団体からの激しい反対の声もあるので、今後のAIの最大の敵は環境保護団体になるのかもしれない。

ここを乗り越えれば、オラクルは次世代の最強AI企業のひとつとしてMicrosoft、Apple規模の時価総額の企業へと成り上がっていくのかもしれない。

オラクルの今後の成長は、クラウドとAI事業の拡大にかかっている。ラリー・エリソン氏の先見性とサフラ・キャッツCEOの実行力が、この転換期を乗り越えられるかが鍵となる。オラクルの長期的な戦略の進捗には注視していきたい。

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