10年スパンでみると77%の確率でプロに勝てる方法があるのだから、それを使え

10年スパンでみると77%の確率でプロに勝てる方法があるのだから、それを使え

【VOO】【VTI】を長期保有しておけばいい。どこかの予言者めいた株式アナリストや経済評論家の、当たりもかすりもしない馬鹿馬鹿しい予測などアテにしないでもいい。さらにいえば、FRB(連邦準備銀行)が何をいおうが、金利をどうしようが、それもかかわる必要はない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

株価の動きは、つねに順風満帆ではない

米連邦準備制度理事会(FRB)は2024年9月18日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を5.25%~5.5%から4.75%~5.0%へと、0.5%引き下げることを決めた。

0.5%の利下げは大幅だが、けっしてアメリカの景気が深刻に悪化しているわけではなく、ソフトランディングを意識したものであるとパウエル議長が強調したので市場は動揺することはなかった。

むしろ、株式市場は好感して上昇している。意外だったのは、ドル円相場の動きである。通常、アメリカが利下げして、日本が利上げするのであれば、円高ドル安に振れるはずなのだが、為替相場は真逆のドル高円安に向かった。

「すでに0.5%の大幅利下げは織り込まれていた」とか「依然としてドルのほうが金利が高いことが確認された」ということなのだが、為替相場の動きはなかなか一筋縄ではいかないことがここでも確認されることになった。

為替市場は24時間稼働しており、その瞬間瞬間の経済状況や政治情勢の影響を強く受けやすく、政治的要因も強く、さらに投機的な取引も活発であり、ひとつの通貨の動きが他の通貨にも波及効果を及ぼして複雑な相関関係を持つ。

さらに流動性は高く、市場心理の変化に敏感だ。そのため、為替市場では一瞬で儲かることもあれば、一瞬で大損することもある。FX(外国為替証拠金取引)をやっている連中の多くが、大きなレバレッジを賭けて90%以上が資金を吹き飛ばして退場しているのはお馴染みの光景だ。

もっとも、株式市場も周期的に激しい下落に見舞われることもあるわけで、株価の動きは、つねに順風満帆であるわけではない。

すべての相場は、何もかもがきれいな右肩上がりの一直線で進行するわけではない。怒濤のように上がっていく時期もあれば、停滞する時期もある。また、何の理由もなく大暴落する時期もある。

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未来のことは、誰も、何も、わかっていなかった

上がるにしろ、下がるにしろ、何がどの順番で、どのように動くのか、誰にもわからない。現在も、やはり多くの人が「もっと上がる」とか「いや、相場は大崩壊する」とか好きに述べている。

私たちは、そのどちらも信じてはいけない。

米国株に関していえば、世界最強の企業が集まる市場でイノベーションも活発化しているわけだから、株式市場は長期的に上を向くとわかっている。しかし、ここでいう長期というのは「10年〜20年」のスパンで話している。

短期・中期で相場がどうなるかなど、そんなことは誰にもわかるわけがない。精密な理論で「10倍になる」という株式アナリストもいれば、逆に「世界大恐慌並みの暴落がくる」という経済評論家もいるのだ。

しかし、誰が株式市場の動きを予測しても、現実はつねに予測を裏切り続ける。

なぜ、株価予測みたいなものを信じてはいけないのか。それは、これから世の中がどう動くのか、どんな事件が起きるのか、どんな統計が待っているのか、何ひとつ「決まっていない」からである。

そもそも予測や推測がすべて正確ならば、世界最大の資産家は株式アナリストか経済評論家になっているはずなのだが、誰もそうなっていない。誰も、継続して相場の動向を当てることができないからだ。誰もが、わかっていないことを適当にいっているだけにすぎない。

自信たっぷりに「これから、こうなる!」と予言めいた言動をする人もいるのだが、そういうのは間違いなく頭がおかしい人たちなので、相手にしないほうがいい。

中には「上がる可能性が高いが、下がることもある」という人もいる。この説明は100%当たる推測になるが、これが当たっても意味がない。それは、単なる詐欺師の口上と同じである。

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未来がわかっていないという点では同じだ

ロックフェラー基金を運用するチャールズ・エリスは以下のように述べている。

『1年以上の成績を見ると、約7割の投資信託が市場平均を下まわる。10年では8割、15年では9割が市場に負けている。1年間では多くのファンドが市場に勝ち、10年間勝ち続けるファンドもある。しかし、長期的に見ると、ずっと市場に勝ち続けているファンドはない』

市場に勝つどころか、大きな損失を出して閉鎖されてしまうファンドも山ほどある。彼らは素人ではない。プロである。もし、プロが本当に相場を予測できるのであれば、こんなことにならない。わかっていないから、窮地に追いやられたのだ。

プロのヘッジファンドは、相場を読めると豪語して大きな手数料を取って「素人の代わりに投資する組織」なのだが、こういった組織でも相場に勝てない事実を、私たちはいつでも確認することができる。

誰も先が読めないということをしっかり認識するのは重要なことだ。証券会社も、企業経営者も、ヘッジファンドも、株式アナリストも、経済評論家も、みんなまとめて未来がわかっていない。

だとすると、株価が上がる下がるに着目して投資をするのではなく、もっと別のやりかたをしたほうが合理的であるのが理解できるはずだ。とはいえ、株式市場の上げ下げに関係のない投資の方法などあるのか。

もちろん、ある。簡単な話だ。

単に「株式市場そのもの」を丸ごと買っておけばいい。現代の資本主義で最強の株式市場はアメリカであり、今後もアメリカ企業の強さは他国を圧倒するはずなので、それならば「アメリカの株式市場」を丸ごと買っておけばいい。

稀代の投資家であるウォーレン・バフェットも「ほとんどの投資家はS&P500のインデックス・ファンドに投資するのがいい」と述べている。イェール大学基金の優れたファンド・マネージャーのデイビッド・スウェンセンも同意見だ。

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10年スパンでみると77%の確率でプロに勝てる

バフェットは別のところでは「S&P500のインデックス・ファンドではバンガードが良い」ともいっている。バンガードのインデックス・ファンドでS&P500指数に連動する商品はETF【VOO】(Vanguard S&P500ETF)となる。

投資の世界では過去10年で77%のプロがインデックス・ファンドに負ける。わかりやすくいえば、プロは10年のスパンで【VOO】に負けるということである。そうであれば、そのプロに劣る投資家は99%以上の確率で【VOO】で負けることになるだろう。

バンガードのインデックス・ファンドには、もうひとつアメリカの株式市場の大型株から小型株まで約4,000銘柄をカバーしたETF【VTI】(Vanguard Total Stock Market ETF)も存在する。

こうしたインデックス・ファンドを買っておけば、10年のスパンでみると77%の確率でプロに勝てるということになる。それならば、黙って【VOO】や【VTI】を10年持っておけばいい。

現代の資本主義は「成長」を宿命づけられている。また資本主義はつねにインフレも起きている。

つまり、株式市場に上場するほどの巨大企業の売上は、売上と成長を貪欲に求めて上昇していくので、それは間違いなく市場に反映される。長期的にみると、株式市場はつねに「上」のベクトルである。

世界を巻き込んだ戦争が起きるような不幸な時代をのぞけば、10年から20年のスパンで株式市場が成長できなかった例はない。それならば、時間という最大の味方を得て、着実に資産を増やしていくのがもっとも合理的な決断であるといえる。

どこかの予言者めいた株式アナリストや経済評論家の、当たりもかすりもしない馬鹿馬鹿しい予測などアテにしないでもいい。さらにいえば、FRB(連邦準備銀行)が何をいおうが、金利をどうしようが、それもかかわる必要はない。

たしかに、インデックスファンドは華々しい成功譚を夢見る者にとっては、地味で退屈な選択肢かもしれない。しかし、投資の世界では往々にして、地味で退屈な選択こそがもっとも賢明な判断となる。

結局のところ、投資とは長期的な視点で見れば、忍耐と規律の勝負だ。

華々しい短期的な勝利よりも、着実な長期的な成功を目指すべきだ。そして、その目標を達成するためのもっとも効果的な手段のひとつとして、【VOO】【VTI】のようなインデックス・ファンドがある。

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