インフレ時代に「ほぼゼロ」の金利で定期預金するのは緩慢な自殺をするのと同じ

インフレ時代に「ほぼゼロ」の金利で定期預金するのは緩慢な自殺をするのと同じ

もう日本政府など誰が首相になろうが期待するだけムダであり、私たちの生活環境はさらに悪化する。こんな「異常事態」に、ぼんやり銀行預金とか定期預金なんかしていたら、困窮待ったなしの人生に落ちる。インフレ時代に定期預金するのは緩慢な自殺をするのと同じだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

本当に貯金は安全な資産保全手段なのか?

貯金は「安全な資産保全手段」といわれているが、長期的に資産を増やす方法としては完全に不十分だ。その理由のひとつは、銀行に預けることで得られる利子が非常に低いためである。

多くの先進国では、金利が歴史的に低い状態が続いている。とくに日本では、1990年代のバブル崩壊以降、経済成長が鈍化し、デフレが続いたことから、日本銀行は超低金利政策を導入した。

ゼロ金利政策は、企業や個人が資金を借りやすくすることで経済を刺激することを目的としていた。これによってインフレ率を目標水準(約2%)に引き上げ、経済を安定的に成長させる狙いがあったが、消費や投資の伸び悩みから期待する効果は限定的であった。

2024年8月〜9月のあいだで、大手銀行は金利を「5倍引き上げた」のだが、それでも、0.02%が0.1%になったに過ぎない。0.1%といえば、1,000万円を銀行に預けても年利はたったの1万円である。

このあいだに物価は2%を越えている。仮に2%で計算してもインフレで20万円が目減りしたことになる。それで1万円の利息をもらっても19万円も損している。インフレが資産に及ぼす影響は意外に大きいのがわかるはずだ。

インフレとは通貨の価値が低下したことを意味する。

仮にインフレ率が年平均2%で推移するとしても、10年後には現在の購買力が約20%減少する計算になる。つまり、貯金だけではインフレに追いつかず、資産の実質価値が目減りしてしまうのだ。つまり、200万円分を損することになる。

貯金はたしかに安全な資産保全手段であるが、インフレで目減りした分の埋め合わせができないのであれば、損しているも同然なのだ。

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株式資産はインフレに強い性質を持っている

貯金と投資の違いを数字で比較すると、その差は一目瞭然である。たとえば、100万円を単純に銀行に預けた場合、金利が0.5%であれば1年後に得られる利息はわずか5,000円である。

これに対して、米国の株式市場の平均リターンは、過去100年間で年平均約7〜8%で推移している。

仮に7%の利回りを得られる投資をおこなった場合、100万円の元本は1年後に107万円になる。この差は一見すると大きくないように見えるが、長期的に見ると非常に大きな違いを生む。

複利の力も重要である。複利とは、得られた利息や配当が再投資され、次年度の元本に加えられることを指す。

たとえば、年率7%の複利で運用した場合、100万円は10年後に約200万円、20年後には約400万円に増える。対して、年率0.5%の単利で運用した場合、20年後の金額はわずか110万円程度である。この差は非常に大きく、投資の効果を実感できる。

また、インフレも考慮する必要がある。仮に年2%のインフレが続いた場合、現在の100万円の価値は10年後には約82万円、20年後には約67万円に減少する。

これに対して、年率7%で増え続ける投資は、インフレの影響を受けず、むしろ資産を増やすことが可能である。株式市場の投資はインフレに強い性質を持っているため、資産の保全と成長の両方を期待できる。

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政府はアテにならない。今後はもっとひどくなる

投資をしないという選択は、老後に経済的な苦境を招く可能性がある。とくに普通に雇われて生きていた日本人の場合、退職後の生活においては、年金や貯金だけに頼ることはリスクが高い。

近年、日本では年金制度の持続可能性が懸念されており、年金受給額の引き下げや受給開始年齢の引き上げがしばしば議論される。このような背景を考えると、自助努力での資産形成がますます重要になってくる。

たとえば、仮に退職時3,000万円の貯金があったとしても、30年間にわたって生活費を賄うとすると、年あたり約100万円しか使えない計算になる。これでは日常の生活費や医療費、予期せぬ出費に対応するのは非常に難しい。

また、インフレの影響も無視できない。年2%のインフレ率であれば、30年後には現在の3,000万円の価値は実質的に約半分に減少することになるのだ。

実際のところ、投資をしなかった人々が老後に経済的困難に直面するケースは少なくない。年金に頼るしかない多くの退職者が、年金だけでは生活がままならず、退職後も働き続けなければならない状況にある。

30年も日本を成長させることができなかった日本の政治家は、少子高齢化も放置し続けたので、高齢化と労働者不足を深刻化させた。そして政府は高齢者の雇用促進政策を強化し、定年延長や再雇用制度の整備を進めているが、これは年金だけで生活できない現実を政府が認めているにも等しい。

さらに政府は「一億総活躍時代」とかいっているのだが、これは実質的は「死ぬまで働け」政策をきれいにいった言葉である。「65歳は高齢者ではない」ともいい出しているのだが、これは「だから、年金の受給年齢を後にずらすべき」という思惑とセットになっている。

政府はアテにならない。今後はもっとアテにならなくなる。銀行の金利も低いままだ。そうであれば、退職後の生活を安定させるために、投資によって資産を増やしておくことが非常に重要なのは誰が考えてもわかる。

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1999年以降、定期預金なんかしたことがない

貯金だけではインフレや税金の影響を受けて資産が減少し、老後は経済的に不安定になる可能性が高い。

一方で、投資は資産を増やす手段として有効であり、長期的に安定したリターンを期待できる。また、複利の効果を利用することで、時間とともに資産は飛躍的に増加する可能性がある。

もちろん、投資のリスクはゼロではない。相場は波瀾万丈であり、ときには買い値を割ることもある。大暴落がくることもあれば、長期に渡る下落がくることもある。リスクは無視できない。

しかし、適切なリスク管理をおこなうことでリターンを最大化しつつ、リスクを最小限に抑えることができる。

たとえば、株式市場で分散投資をおこなうことで、リスクを分散し、安定したリターンを得ることが可能である。また、定期的に市場を見直し、必要に応じてポートフォリオを調整することで、リスクをより効果的に管理できる。

とくに現代の資本主義の中心であり、最強にして最大の株式市場であるアメリカは非常に賢明な投資先であるといえる。新NISAやiDeCoをうまくつかって、ここに長期投資しておくというのは、資本主義で生き残る重要な知恵である。

最終的に、貯金だけに頼ることは非常にリスクが高いのだ。適切な投資をおこなうことでインフレや将来の経済的な不安を軽減することができる。

もう日本政府など誰が首相になろうが期待するだけムダであり、私たちの生活環境はさらに悪化する。こんな「異常事態」にぼんやり銀行預金とか定期預金なんかしていたら、困窮待ったなしの人生に落ちていく。

ちなみに、私はゼロ金利になる前から定期預金なんかしたことがないし、今でも銀行には必要最小限しか資金を入れていない。意味のないことはするだけムダだからだ。今後もインフレは続く。インフレ時代に「ほぼゼロ」の金利で定期預金だけしているのは、緩慢な自殺をするのと同じだと気づく必要がある。

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