
世の中には「騙すほうよりも騙されるほうが悪い」みたいな邪悪な哲学で生きている人間も山ほどいて、そうした人間たちが投資詐欺グループとして私たちの資産を狙ってくる。騙されたら資産を根こそぎ盗まれる。絶対に乗ってはいけない10の投資案件がある。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
次々と騙されて数百万から数千万を盗られていく
日本政府は少子高齢化を放置しすぎて、増え続ける高齢層の面倒を見ることができなくなった。そこで、「貯蓄から投資」といって「自己責任で金を増やして老後は自分で何とかしろ」の方向に舵を切った。
政府やマスコミの喧伝もあって、いよいよ日本国民も投資に乗り出すようになっているのだが、この流れの中で動き出しているのが次から次へと現れる投資詐欺グループである。
2023年はSNS型の投資詐欺で約277.9億円もの被害が出ているので深刻だ。2024年に入ってからはさらに被害が爆増している。騙されたら資産を全部盗まれる。そして、盗まれたら、犯人が逮捕されても資産がぜんぶ戻ってくることはない。
とにかく騙されないようにしなければならないのだが、投資に慣れていない人々は、警察がどんなに啓蒙活動をしても簡単に騙されて数百万から数千万を盗られていく。いったい、どういう手口で彼らはワナをしかけているのだろうか。
その手口にはパターンがあるので、いくつか紹介したい。
まずは、高リターンを約束する案件には気をつけなければならない。それは、投資詐欺の典型的な特徴である。
投資の世界では、高リターンが見込める案件にはつねに高リスクが伴うのが常識だ。これは市場の動きや企業の経営状況が予測できないためであり、リスクなしに高い利益を得ることは基本的に不可能なのだ。
しかし、投資詐欺グループはこの常識を無視し、「絶対に損はしません」「かならず利益が出る」「年利30%を保証」といった魅力的な言葉で投資家を誘惑する。中には「年利100%」と謳うグループもあったりする。
プロでも年利100%なんか約束できないのに、訳のわからないグループがそんな荒唐無稽な年利を約束しているのなら、頭のてっぺんから足のつま先まで100%詐欺である。
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「リスクゼロ」「元本保証」といった甘い言葉
投資詐欺グループが使う手口でもっとも有名なのが、ポンジ・スキーム(自転車操業型詐欺)だろう。
詐欺グループは高リターンを謳って投資家から資金を集めるが、じつは新規投資家の資金で既存の投資家に配当を出しているだけで、実際の投資活動はおこなわれていない。結果として、資金の流入がとまると、このスキームは崩壊し、投資家は大きな損失をこうむることになる。
このような高リターンを約束する案件に対しては、冷静な判断が必要だ。市場の平均リターンと比較し、不自然に高いリターンを保証するものは疑ったほうがいい。ちなみに、米国株でいえば株式市場の長期平均リターンは年率7%から10%程度である。
投資詐欺グループは、非現実的な収益予測で投資家を引き込む手口もよく使われる。たとえば、「このビジネスは半年で2倍になる」「確実に成功する新規事業」といった甘い言葉は耳ざわりが良いが、実際には何の裏づけもないことが多い。
投資詐欺グループは未来の成功を約束することで、投資家にリスクを過小評価させ、判断力を鈍らせる。
人は情熱的かつ熱狂的に説明されると、どうしてもそれを信じてしまいたいという気持ちになる。そういう気持ちを詐欺グループはよく理解している。だから、投資詐欺グループはつねに景気の良い話ばかりして、リスクには目を向けさせないようにする。
そもそも、投資詐欺グループは「リスクなし」という言葉もよく使う。
もちろん、ウソだ。すべての投資にはつねにリスクが伴う。たとえば、株式投資では企業の経営状況や市場の変動、為替リスクなど、予測できない要因が多く、つねにリスクが存在するのだ。
しかし、投資詐欺グループは「リスクゼロ」「元本保証」といった甘い言葉を使い、あたかも安全な投資であるかのように見せかける。実際には、そのような案件は存在せず、投資家が気づいたときにはすでに資金が失われていることが多い。
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うまい話を持ってくる見知らぬ人間はみんな詐欺師
こうした投資詐欺に関しては「冷静に考えればわかるではないか?」と普通は思う。そうなのだ。冷静に考えれば「何かおかしい」と気づく。だから、投資詐欺グループは「考えさせない」手法を取る。
とにかく、投資家に決断を急がせる。「今すぐに投資しないとチャンスを逃す」などといったプレッシャーをかけ、冷静な判断をさせないようにする。これにより、投資家は案件の詳細を精査する時間を奪われ、直感的な決断に追い込まれる。
よくあるのは、「限定10名」「期間限定オファー」「残りわずか!」「本日限りの特別価格!」「初回限定、今だけ割引!」「限定数量のみ、先着順!」「早い者勝ち!」などの言葉である。
これは投資家に時間の制約を感じさせ、早まった投資をさせるための典型的な手法なのだ。急がされるというのは「考える時間を奪われている」ということでもある。冷静に考えれば「何かおかしい」と気づくので、考えさせないようにしている。
「一攫千金」を謳う案件も注意が必要だ。投資詐欺グループは「小さな投資で大きな利益を得る」ことを強調し、投資家に過度な期待を抱かせる。特に、未経験の投資家や金融知識の少ない人々は、このような夢のような話に惹かれやすい。
しかし、現実的には、短期間で大きな利益を得ることは非常に難しく、そのような案件はほとんどが詐欺である。投資はギャンブルとは違う。そのため、「一攫千金」を謳う時点で、それは投資ではない。
しかし、一攫千金を情熱的かつ熱狂的に説明され、リスクはゼロと説明され、急かされ、煽られると、どうしてもそれに乗せられてしまう人が出てくる。
このような手法に対抗するためには、投資家はつねに冷静な判断を保ち、時間をかけて案件を精査することが求められる。投資の世界では「うまい話を持ってくる見知らぬ人間はみんな詐欺師」という言葉もある。
それくらいの姿勢でいないと、赤ん坊の手をひねるくらい簡単にやられてしまう。
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投資とは自分で考えて自分で投資対象を買うもの
投資詐欺グループは著名人を無許可で広告塔に使うことも多い。たとえば、有名な経済評論家や芸能人が推薦しているように見せかけることで、投資家に安心感を与えるのだ。
実際に、著名人が無断で広告に使用され、投資家が被害に遭った事件も報告されている。著名人の名前が出た場合も、その人物が本当にかかわっているのか、かならず確認することが求められる。
かりに投資案件に著名人がかかわっていたとしても、それだけで投資案件の成功が保証されているわけでも何でもない。まして、著名人がかかわっておらず、勝手に広告塔として使われているのであれば、もはや見当にも値しない。
・高リターンを約束した投資案件
・収益の予測が非現実的な投資案件
・「リスクなし」を謳う投資案件
・急かされる投資案件
・一攫千金を謳う投資案件
・定期的な利益分配を強調する投資案件
・高額な初期投資を求めてくる投資案件
・著名人を広告塔にしている投資案件
・ビットコインや仮想通貨を利用した投資案件
・「先行者利益」を強調する投資案件
こうした案件はすべて疑ったほうがいい。世の中には「騙すほうよりも騙されるほうが悪い」みたいな邪悪な哲学で生きている人間も山ほどいて、そうした人間たちが投資詐欺グループとして私たちの資産を狙ってくる。
基本的に、投資というのは「誰かに金を預けてやってもらう」ものではなく、自分で考えて、自分で投資対象を買うものなのだ。株式市場は誰にも開かれていて、すべての企業の情報は公開されている。誰かを介在する必要はまったくない。
