OpenAIのo1モデルを使うのは、知能指数120の天才をアシスタントにするのと同じ

OpenAIのo1モデルを使うのは、知能指数120の天才をアシスタントにするのと同じ

IQテストにおいて、o1-previewは120という高いスコアを記録した。これは人の平均IQ値である100を大幅に上回っている。私たちは、限定した内容については、o1モデルを使うことによって「天才」から答えをもらうことが可能になっているわけだ。興味深いことになっている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

本当にそんなすさまじいAIが生み出せるのか?

現在の人工知能(AI)の目標は、汎用人工知能(AGI)である。AGIは自分で新しい情報を取り入れ、自己改善を続け、従来にない解決策を考案し、人間の感情を理解し、適切に対応することができ、倫理的な判断も行うことができるAIを指す。

わかりやすくいうと、人間の知性と同等のものがAGIである。

この実現に向けて、AIの研究開発は着実に進んでいる。人間のように考え、推論し、学習する。コンピュータの中で人間の知性を生み出す。それは多くの研究者や技術者たちの挑戦の対象となっている。

本当にそんなすさまじいAIが生み出せるのだろうか。研究者は生み出せると信じている。たとえば、サム・アルトマンCEOが率いるOpenAIが2024年に発表したo1モデルは、AGIへの道のりにおいて重要な一歩を踏み出したと評価されている。

o1モデルの特徴は、「テスト時計算」と呼ばれる新しいAI推論アプローチを採用していることだ。

段階的に考えて、深く推論し、制度と信頼性を向上させる。このアプローチにより、o1モデルは複雑な問題に直面した際に、まず考えを整理してから解答を提示することができる。

「これは人間の思考プロセスにより近い方法であり、従来のモデルとは一線を画している」と研究者は述べている。私自身もo1モデルを検証しているのだが、実務レベルは十分に使える印象を持っている。

o1モデルは、o1 Previewとo1 Miniの2つのバリエーションで展開されている。

「o1 Preview」は科学研究や数学、複雑なデータ分析など、深い推論を必要とするタスクに最適化されている。一方、「o1 Mini」はスピードと効率性を重視し、コーディングやカスタマーサービスなど、迅速な応答が求められるリアルタイムアプリケーションに適している。

o1モデルの登場は、AIの進化において重要な転換点となる可能性がある。しかし、これが「AGIへの一歩」なのか、それとも単なるAI技術の段階的な進展にすぎないのかという議論があり、評価がわかれている。

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「天才」をアシスタントとして使えるようになった

o1モデルの性能は、従来のモデルと比較して大きな進歩を遂げている。アメリカ招待数学試験(AIME)において、o1モデルはトップ500の学生にランクインするという驚異的な成果を上げた。

また、競技プログラミングプラットフォームであるコードフォーシズ(Codeforces)のコーディング・チャレンジでも、o1モデルは上位89%にランクインした。これは、論理的推論と構造的な問題解決能力が求められるタスクでの優秀さを示している。

科学分野においても、o1モデルは博士課程レベルの性能を発揮している。特に物理学、化学、生物学などの分野で優れた結果を示しており、専門家にとって強力なツールとなる可能性がある。

つまり、o1モデルは前モデル(GPT-4o)と比較して全分野で成績が向上している。

特に物理学では、GPT-4oの59.5%に対して、o1モデルは92.8%という高い正答率を達成した。化学でも40.2%から64.7%へと大幅に改善し、生物学では61.6%から69.2%へと向上している。

安全性の面でも、o1モデルは大きな進歩を遂げている。

「ジェイルブレイク」テストでは、GPT-4oが100点満点中22点だったのに対し、o1-previewは84点を獲得した。これは、不適切な使用や悪用に対するo1モデルの強い耐性を示している。

IQテストにおいても、o1-previewは120という高いスコアを記録した。

これは人の平均IQ値である100を大幅に上回っており、従来のChat-GPT4oの80程度から大きく進歩している。私たちは、限定した内容については、o1モデルを使うことによって「天才」から答えをもらうことが可能になっているわけだ。

OpenAIのo1モデルを使って「天才」をアシスタントとして使えるようになったという言い方もできる。私自身はこの環境に興味深く感じている。べつに自分が向上しなくても、必要なときにo1モデルを使えばいいわけだ。

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思考の連鎖による推論をおこなう能力

o1モデルのもっとも革新的な特徴は、思考の連鎖による推論をおこなう能力である。これにより、モデルは複数の段階で問題を考え、複雑なタスクを小さく扱いやすいステップに分解することができる。

たとえば、難しい数学の問題に直面したとき、o1モデルは論理的なステップ・バイ・ステップのアプローチをとり、問題の各部分を解決してから最終的な解答に至る。これは人間が複雑な問題に取り組む方法に似ており、複数のステップを含む推論で、しばしば苦戦していた従来のモデルに比べて大きな改善といえる。

この推論能力の向上により、o1モデルはソフトウェア開発や科学研究などの技術分野で大きな可能性を示している。

ソフトウェア開発者は、o1モデルを使用してデバッグ、コード生成、最適化などのコーディングプロセスの一部を自動化している。o1モデルの複雑なコーディング問題を分解し、段階的な解決策を提示する能力が非常に役立つからだ。

科学の領域でも、o1モデルの応用は広がっている。研究者たちは、このモデルを使用して大量のデータを解析し、複雑な科学的発見を理解し、さらには薬の発見や気候モデルの支援にも活用できる。

o1モデルの構造化された推論能力を活用することで、科学者たちはデータをより効率的に処理し、発見のスピードを加速させている。

しかし、o1モデルにはまだ限界がある。

創造性、抽象的推論、感情的知性が必要なタスクには苦戦しており、広告・メディア・コンテンツ制作のような創造的な分野では、革新的または感情的に響くアイデアを生み出すのに苦労している。

o1モデルの登場は、たしかにAI技術の大きな進歩であるのは間違いない。しかし、AGIの実現にはまだ多くの課題が残されている。専門家たちは、AGIの実現にはまだ数十年かかると指摘している。場合によっては100年かかるかもしれないともいう。

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使える局面でAIを使えるようにするのがいい

実際にはどれくらいの期間でAGIが実現するのかは不明だが、少なくとも現在のo1モデルの限界は、AGIへの道のりにおいて重要な課題を浮き彫りにしているのは事実だ。

もっとも大きな問題の1つは、o1モデルのパフォーマンスが異なる分野によって不均一であることだ。数学やコーディングのような技術分野で優れている一方で、創造性、抽象的推論、感情的知性が必要なタスクには苦戦している。

そして、o1モデルにも、残念ながらAIの最大の欠陥である「幻覚(AI hallucinations)」がある。

これは、モデルが意味不明な回答、間違った応答を生成する現象である。o1モデルは前のモデルに比べてこれらの幻覚を減少させたが、訓練されていない質問に対しては、いまだに発生するのだ。

さらに、深い推論が必要なタスクにおいてo1モデルの処理速度が遅いことも、リアルタイムの応答が求められるアプリケーションでは欠点となる。

つまり総合的に見ると、o1モデルも今のところは完璧ではない。AGIの実現には、感情的知性、創造性、さまざまなタスクや領域にまたがる一般化能力など、複数の分野での突破口が必要となる。

多くの研究者は、o1モデルは重要なステップであるが、AGIはおそらく現在の大規模言語モデルの限界を超えたまったく新しいアーキテクチャが必要であると考えている。

また、AGIの開発に伴う安全上の課題も、これらのシステムを社会に完全に統合する前に解決する必要がある。AIシステムが人間のコントロール下にとどまってくれないと、AIが暴走したら文明が一転して危機に瀕する。

o1モデルはたしかにAI技術の大きな進歩を示しているが、AGIの実現にはまだ長い道のりがある。o1モデルは重要な一歩であるが、AGIは依然として長期的な目標であり続けている。

しかし、o1モデルは学習した特定の内容については、知能指数120で回答をしてくれるのだから、使い倒さないともったいないというのが私の見解だ。

AIが汎用人工知能(AGI)となって限界を超えてくるまで、使える局面でAIを有効に、徹底的に使い倒すようにするのが、これからのうまい生きかたになる。「天才」を24時間のアシスタントにするのは、悪い話ではない。

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