![](https://bllackz.com/wp-content/uploads/2024/12/eye-catch-13.jpg)
AIの進化が止まらない。そうであれば、投資家はAIの激烈な競争から、いかに利益を得るのかを考える必要がある。o3モデルの登場は、投資家にとって新たな機会をもたらす可能性がある。勝者を見極めるのは難しい。しかし、ここに大きな投資機会が存在するのは間違いない。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
人工知能の新時代を告げる「o3」
AI(人工知能)の進化は、まるで止まることを知らぬ激流のごとく、私たちの社会を急速に変容させている。その潮流の最前線に立つのが、アメリカの人工知能企業OpenAIだ。
彼らが新たに発表した生成AI基盤モデル「o3(オースリー)」と「o3 mini」は、2025年の人工知能の新時代を告げる画期的な存在となるだろう。
2024年12月20日、OpenAIはこの新モデルの開発を公表した。o3は、その前身である「o1(オーワン)」を大きく凌駕する性能を誇り、人間の知的能力にせまる、あるいはそれを超越する可能性すら秘めている。「これによって、すでにAIはAGIに到達したのではないか」と述べる科学者もいる。
AGIとは、人間と同等またはそれ以上の知能を持つ汎用人工知能のことを指す。従来の特定タスクに特化したAIとは異なり、多様な問題を理解して自ら学習しながら解決する能力を持つ。つまり、人間ような動きをするのがAGIである。
もし、o3が本当にそうした能力があるのであれば、数学、コーディング、科学的推論といった高度な分野を大きく進展させていくはずだ。これは、私たちの知的活動の在り方を根本から覆す可能性を秘めている。
もちろん、この激烈なイノベーションは、同時に深刻な倫理的問題や社会的影響をも生み出すことになる。
人間の仕事が奪われるのではないかという不安も、現実的なものになってきた。政治的な問題として、AIによる意思決定の透明性や公平性も俎上に上がる。さらには人間の知的活動の意義そのものへの問いかけもある。
こうした問題をすべて置いてけぼりにして、AIの技術革新が進んでいるので、ある意味「AIのイノベーションは暴走している」といってもいいのかもしれない。
フルインベストの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』
o3はAGIに到達したかもしれない根拠
o3の性能は、具体的な数値によって如実に示されている。まず、競技プログラミングの評価基準「CodeForces ELO」において、o3は最大2,727という驚異的なスコアを記録している。これは、o1の1,891を大きく上回り、熟練したプログラマーと同等、あるいはそれ以上の水準であるという。
数学分野においても、o3は圧倒的な能力を見せつけた。アメリカ数学オリンピック予選では、96.7%という高い正答率を達成している。これは、o1の83.3%を大きく引き離す結果でもある。
さらに、博士課程レベルの科学問題を扱う「GPQA Diamond」でも、o3は87.7%という高スコアを記録している。これは、多くの専門家をも凌駕する性能だ。
AI研究の難関とされる評価基準「ARC-AGI(AIの汎用知能(AGI)の進捗を測るために考案されたベンチマークテスト)」においても、低い計算リソース設定で75.7%、高いリソース設定では87.5%のスコアを記録している。後者は人間の平均スコアである85%を超えており、AGIへの大きな前進を示している。
一方、軽量版の「o3 mini」は、性能とコスト効率を両立したモデルとして注目を集めている。
このモデルは「アダプティブ・シンキング・タイム」と呼ばれる機能を搭載し、推論時間を「低・中・高」の3段階で調整できる。これにより、タスクの性質や使用環境に応じた処理速度と精度の柔軟な最適化が可能となるという。軽量版でありながら本格的な処理能力を有している。
コスト効率にも優れており、限られたリソース環境でも高性能なAI機能を活用できるよう設計されている。
OpenAIは、2025年1月末に「o3 mini」の一般提供を開始し、その後フルバージョンの「o3」をリリースする計画だ。これらのモデルの登場は、教育、科学、ビジネスを含む多様な分野に変革をもたらす。
『邪悪な世界のもがき方 格差と搾取の世界を株式投資で生き残る(鈴木傾城)』
相手を叩きつぶすための「仁義なき戦い」
o3の発表は、OpenAIとGoogleのあいだで繰り広げられている熾烈なAI開発競争に新たな火種を投じた。Googleは、o3発表のわずか9日前に、自社の基盤モデル「Gemini」の第2世代を公表している。
OpenAIが動画生成AI「Sora」を発表したら、すぐさまGoogleも「Veo2」を発表して対抗している。
今後、OpenAIは「Google Chrome」に対抗するAIファーストのブラウザを出すのではないかとも噂されているが、まさに相手を叩きつぶすために「仁義なき戦い」がおこなわれているのがわかる。
仁義なき戦いは、イノベーション競争だけでなく法廷闘争にも戦線が拡大した。たとえばGoogleは、FTC(連邦取引委員会)に対し、MicrosoftとOpenAIの提携が競争を阻害していると訴えている。
「MicrosoftがOpenAIとの排他的クラウド契約を結んでいることが、AI市場における競争を妨げている」とGoogleは主張。この契約により、OpenAIのモデルにアクセスするにはかならずMicrosoftのサーバーを経由しなければならず、これが競合他社に余分なコストを強いているという。
OpenAIと連携しているMicrosoftはMicrosoftで、「GoogleがMicrosoftのクラウドビジネスを貶めるための影のキャンペーンをおこなっている」と非難しており、互いの攻撃はヒートしていく一方だ。(ダークネス:GoogleとMicrosoftの仁義なき戦い。クラウドとAIを巡って互いに容赦ない叩き合い)
この競争によって、ユーザーはAIというイノベーションの恩恵を早く受けることができるのは事実なのだが、安全性や倫理性の確保よりも開発スピードが優先されており、後々に、問題はより深刻化していく可能性も高い。
しかし、こうした問題があったとしても両者とも立ち止まるわけでもなく、他にもPerplexityやAnthropicやその他の新興AI企業もすぐ後を追いかけているわけで、AI開発競争は「暴走」していくことになるのだろう。
少なくとも、どの企業も「立ち止まる」という選択肢はない。
『亡国トラップ-多文化共生- 多文化共生というワナが日本を滅ぼす(鈴木傾城)』
ここに大きな投資機会が存在する
AIをめぐる状況がそうなっている以上、投資家はAIの激烈な競争からいかに利益を得るのかを考える必要がある。o3モデルの登場は、投資家にとって新たな機会をもたらす可能性がある。
まず、AIチップ製造業界に注目が集まるだろう。o3のような高度なAIモデルの運用には、より高性能なチップが必要となる。NVIDIAやAMDといった半導体メーカーは、引き続き投資機会は大きいはずだ。
AIの頭脳はデータセンターなので、クラウドコンピューティング分野も2025年以降も引き続き有望だ。
o3の運用には膨大な計算リソースが必要となるため、AmazonのAWS、MicrosoftのAzure、GoogleのGCP(Google Cloud Platform)といった、クラウドサービスプロバイダーの需要増加が見込まれる。
さらに、o3の能力を活用したサービスを展開する企業にも投資機会が生まれる。高度な自然言語処理サービスや、複雑なデータ分析ツールを提供する企業などだ。たとえば、パランティア、IBM、マイクロストラテジー、セールスフォースなどがそれに該当する。
ただし、これらの投資機会には慎重な判断が必要だ。すでにAIの爆発的成長を見込んだ投資資金が大量に入り込んで株価は押し上げられているし、現在はまだ競争の初期段階でそれぞれの企業の優位性はすぐに変化する。
勝者を見極めるのは難しい。投資家は、技術動向だけでなく、社会的・政治的な動きにも注意を払う必要がある。
しかし、ここに大きな投資機会が存在するのは間違いない。AI市場は今後も拡大が見込まれており、早期に参入することで大きな利益を得られる可能性がある。AI技術の進化に伴い、新たな投資機会も次々と生まれていく。
OpenAIのo3モデルの登場によって、2025年もAIを取り巻く動きはますます過熱化していくことになるだろう。この状況から目が離せない。
![メルマガ](https://bllackz.com/wp-content/uploads/2024/08/2f661f862dbc6137afbccb0408306eff.jpg)