FacebookとInstagramを中心とするMetaの巨大SNSは、デイリーアクティブユーザー数が約32.7億人に達しており、これは世界人口の約40%に相当する。この巨大なユーザーベースは、広告主にとって非常に魅力的なターゲット層を提供する。この企業がAIに邁進している。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
驚異的な成長を遂げるMeta Platforms
Meta Platforms(旧Facebook)の財務パフォーマンスは、2024年に入り驚異的な成長を遂げている。2024年第3四半期の決算では、総売上高が405億9,000万ドルに達し、前年同期比で19%もの増加を記録した。この成長は、広告収入の回復とAI技術への積極的な投資が主な要因とされている。
特筆すべきは、営業利益が173.5億ドルに達し、営業利益率が43%という高水準を維持していることだ。
これは、Metaが効率的な経営をおこないながら、成長投資を継続できていることを示している。当期純利益も156.9億ドルと、前年同期から大幅に増加しており、1株当たりの利益は6.03ドルに達した。
この業績は、Metaの広告事業の回復と収益性の改善を明確に示しており、特に広告単価の11%増加と広告インプレッションの7%増加が大きく貢献している
2024年の広告インプレッションは前年比20%増加し、広告あたりの平均価格も6%上昇している。これは、Metaの広告プラットフォームの効果が向上していることを示すと同時に、広告主からの需要が依然として強いことを表している。
アナリストの予測によると、Metaの2025年の収益は1862億米ドルに達すると見込まれており、これは過去12か月と比較して19%の成長を意味する。この予測は、Metaの持続的な成長ポテンシャルを裏づけるものだ。
株価動向を見ると、Metaの株価は2023年末から2024年初頭にかけて64%もの上昇を記録し、現在603ドルという高値圏で推移している。急激な株価上昇は、投資家のMetaに対する期待の高さを如実に表している。
Metaの財務状況を詳細に見ると、資本支出が85億ドルに達していることがわかる。これは主に、サーバー、データセンター、ネットワーク・インフラへの投資によるものだ。この大規模な投資は、Metaが将来の成長に向けて積極的に基盤を整備していることを示している。
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デイリーアクティブユーザー数32.7億人
Metaの競争力の源泉は、その圧倒的なユーザーベースと効果的な広告プラットフォームにある。
FacebookとInstagramを中心とするMetaのプラットフォームは、デイリーアクティブユーザー数が約32.7億人に達しており、これは世界人口の約40%に相当する。この巨大なユーザーベースは、広告主にとって非常に魅力的なターゲット層を提供する。
Metaのビジネスモデルは、広告収入に98%以上依存しているが、この集中戦略が功を奏しているともいえる。
特に、InstagramのリールやFacebookのビデオ広告など、新しい広告フォーマットが好調だ。これらの新しい広告形態は、特に若年層のユーザーをターゲットにしており、Metaの広告収入の多様化に貢献している。
Metaの競争力を支えるもうひとつの要因は、AI技術への積極的な投資だ。
特に、生成AIに関連するプロジェクトに注力しており、これにより広告のパーソナライズ化が進んでいる。結果として、広告主にとってのROI(投資対効果)が向上し、Metaの広告プラットフォームの魅力がさらに高まっている。
MetaはAI戦略として人工知能アシスタントを強化している。Messenger、Facebook、WhatsApp、InstagramのDMで音声による対話が可能になり、ユーザーが声で話しかけると、AIも音声で応答するし、画像に関する質問に答えられるようになる。
Metaのデイリーアクティブユーザー数32.7億人のことを考えると、勝算は十分にありそうだ。OpenAIやGoogleと共に、MetaもまたAI市場においても主要プレイヤーとなる可能性は十分にある。
Metaは、オープンソースの大規模言語モデルであるLlama 2も出している。Llama 2は、リリース以来3,000万ダウンロードを記録しており、オープンソースとクローズドソースの大規模言語モデルに対する強い需要を示している。
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AIを縦横無尽に使いこなしているのがMeta
Metaの将来の見通しも、AIにかかっているといってもいい。MetaがOpenAIやGoogleと違うのは、LLM(大規模言語モデル)をオープンソース化していることだ。
Llama2のオープンソース化により、Metaは優秀なAI人材を惹きつけ、モデルの改善と応用範囲の拡大を図っていこうとしている。Llama2ではAPIアクセスの提供し、Llama2のクラウド化からも収益を得られるようにするはずだ。
すでに抱えているデイリーアクティブユーザー数32.7億人とLlama2を結びつけることが可能になると、AIでも大きなシェアを獲得し、そこから利益が得られるようになるはずだ。
OpenAIのサム・アルトマンはAI事業に広告を結びつけるのは否定的で、それをするにしても「最後の手段」といっているのだが、マーク・ザッカーバーグはむしろ積極的にAIと広告事業を結びつける。
すでにMetaは、AIを活用した「ASC(商品販売に特化した自動化広告キャンペーン)」をおこなっている。ターゲティング、クリエイティブ選定、配信面の選択をAIが自動で選択し、広告運用の効率化とパフォーマンス最大化を実現するというものだ。
MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグは、すでにこのASCがMetaに大きな収益をもたらしていることを強調している。今後もAIを使った広告効率化はより洗練されていき、中核事業の成長を支えることになるかもしれない。
AIは企業の経営と事業を効率化させる能力があるのだが、それを縦横無尽に使いこなしているのがMetaなのかもしれない。
もちろん、Metaの成長には課題もある。EUとUSにおける法的および規制上の風向きが厳しくなりつつあり、規制およびコンプライアンスのリスクが増加している。これらの規制リスクは、Metaのビジネス運営および財務結果に重大な影響を与える可能性がある。
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成長と課題のバランスを取るMetaの未来
Meta Platformsは、デジタル広告市場において圧倒的な存在感を示し続けている。
2024年の財務パフォーマンスは極めて堅調であり、売上高、営業利益、純利益のいずれも大幅な成長を遂げている。この成長は、AIによってさらにブーストされていく雰囲気すらもある。
ただ、投資家の誰もがMetaが優良企業であることを知っており、今後もAIでより事業を加速させることを理解している。だから株価は急激に上昇しているのだが、これだけ株価が上がると、当然ながら調整リスクも高くなる。
リスクといえば、TikTokに代表される新興プラットフォームの台頭や、厳しさを増す規制環境は、Metaの将来の成長に対する不確実性の要因だ。さらに、広告事業についても、ユーザーのプライバシー保護などで、つねに攻撃の対象となっている。
つけ加えれば、Llama 2を中心としたAI戦略は、Metaに新たな収益源をもたらす可能性があるが、これらの分野での投資は短期的には利益を圧迫する要因ともなっており、これも投資家には潜在的なリスクになる。
Metaの今後の成功は、既存の広告ビジネスの強みを維持しつつ、AIという新たな技術分野でリーダーシップを発揮し、同時にプライバシー保護や競争法の観点から厳しさを増す規制環境にいかに適応していくかにかかっている。
さまざまな懸念はあるのだが、そうした懸念を乗り越える潜在能力をマーク・ザッカーバーグは持ち合わせている。
AIという巨大なパラダイムシフトが社会を激変させている中で、そこから大きな収益を得る能力があるMetaは、見逃せない銘柄でもある。これまで以上に、投資家の期待と注目は大きくなっていくのだろう。