リオティント【RIO】。ロスチャイルド家発祥の企業の投資に向いている投資家とは?

リオティント【RIO】。ロスチャイルド家発祥の企業の投資に向いている投資家とは?

リオティントは、ロスチャイルド財閥が所有する名門銀行「ロスチャイルド&サンズ」によって創業された企業だ。ロスチャイルド家を含む投資家グループがスペインのリオティント鉱山を買収し、大規模開発のための鉱山会社を設立したのが始まりである。由緒ある企業だが、環境の面からは社会に嫌われている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

ロスチャイルド家発祥の鉱山企業

リオティント【RIO】は、世界屈指の鉱山資源企業として名高い存在だ。その本拠地はイギリス・ロンドンとオーストラリア・メルボルンの二つにまたがり、グローバルに展開する多国籍企業の代表である。

リオティントは、1873年にロスチャイルド財閥が所有する名門銀行「ロスチャイルド&サンズ」によって創業された企業だ。具体的には、ロスチャイルド家を含む投資家グループがスペインのリオティント鉱山を買収し、大規模開発のための鉱山会社を設立したのが始まりである。

リオティント鉱山からは銅とゴールドが採掘されており、これがロスチャイルド一族のゴールド支配にもつながったわけで、歴史的にも人々の関心を惹く企業でもある。

以降、この企業は鉄鉱石やアルミニウム、銅、ダイヤモンド、ウラン、工業用鉱物など幅広い資源の開発に携わり、世界有数の「資源」採掘企業となった。現在、数ある鉱山会社のなかでも、とりわけ鉄鉱石で圧倒的なシェアを誇り、世界の鉄鋼業界を支える基盤となる存在として多大な影響力を持つ。

リオティントの経営は、豊富な資源埋蔵地を戦略的に掌握し、採掘から加工、流通までを一貫して取り仕切ることで、効率的なグローバルなサプライチェーンを築く点に大きな特徴がある。

オーストラリアのピルバラ地区での鉄鉱石生産を軸として、モンゴルの巨大銅鉱山「オユトルゴイ」への出資、中国との合弁事業によるアルミニウム生産など、世界各国での事業拡張を進めてきた。

特にピルバラ地区における自動運転トラックやドリル技術の導入など、最先端のテクノロジーを活用した生産効率の向上にも積極的である。こうした旺盛な投資と技術活用の成果として、2022年度には売上高が500億ドルを上回る規模に達し、莫大な利益を生み出している。

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リオティントの暗い一面とは?

ただ、リオティントは社会との軋轢の歴史もあり、由緒あるグローバル企業ではあるが、評判は芳しくない。巨大資源企業に共通する課題だが、環境破壊や地域住民との摩擦、文化遺産保護の問題などで批判を浴びることも多い。

とりわけオーストラリアのジュカン渓谷で先住民の考古遺跡が破壊された件は、企業ガバナンスや社会的責任への大きな疑念を呼び起こし、経営陣の刷新や方針転換を余儀なくされた。

こうした不祥事はイメージを傷つけるだけでなく、後々のライセンス取得や政府との関係に暗い影を落とす要因にもなっている。

そういった面はあるが、採掘技術や輸送インフラの高度化、投資の最適化を通じて、リオティントは安定した生産量とコスト競争力を武器に、鉱物資源の需要増に対応し続けてきた。

その結果、世界経済の拡大局面では利益を伸ばし、経営を強固にする好循環が生まれている。古い歴史の企業なのに、現代においても株式市場で大きく注目されるのは、こうした底力と、業界全体をリードする巨大資源企業ならではの規模効果にある。

世界は資源に飢えている。そうであるならば、リオティントはなお一層の存在感を示し続けるはずだ。企業規模の大きさと歴史、世界的オペレーションの妙は、リオティントを理解するうえで欠かせない。

投資対象として、なかなか興味深い。配当も7%を超えている。

ただ鉱山資源業界は、世界経済の動向や地政学リスク、さらに環境規制の強化や新興国の需要拡大といった要因が複雑に絡み合う、大きな変動が起こりやすい市場であるのは理解しておく必要がある。

特にリオティントの主力商品である鉄鉱石は、インフラ投資が増加する局面や製造業の活性化によって価格が大きく上下しやすい。つまり、自動車や建設セクターへの依存度が高い鋼鉄メーカーの動向によっても左右されるため、素材価格の見通しは他産業の需要予測と強く連動する宿命を背負っている。

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環境的な側面から嫌われている

リオティントのビジネスの中では、銅やアルミニウム、リチウムといった金属も重要な収益源になりつつある。

銅は電気自動車や再生可能エネルギー分野での需要増が見込まれ、アルミニウムは軽量化の流れに乗って航空機や自動車分野で採用が急増、リチウムはバッテリーのコア素材として不可欠という具合に、今後の成長期待が高い金属が揃っている。

そのためリオティントは、従来の鉄鉱石依存にとどまらず、ポートフォリオを多角化することで業界内の地位を盤石なものにしようと試みている。

とは言えども、このリオティントの将来性に影を投げかけるのが、環境問題やサステナビリティへの厳格な要請だ。世界各国で鉱山開発や製錬所の排出ガス規制が強化され、業界全体がクリーンエネルギーや脱炭素技術へのシフトを求められている。

リオティントも例外ではなく、これによって経営が締めつけられている。現在、リオティントのPERは10倍を割っているのだが、これほど安値で放置されているのは、環境的な側面から嫌われているからでもある。

リオティントは自社の鉱山運営におけるCO2排出削減目標の設定や、水資源管理の見直しなどを公表しているが、環境団体や投資家の眼差しは依然として厳しい。鉱山開発に伴う森林破壊や先住民の土地権利問題に加え、気候変動への責任を追及される場面も増えている。

地政学リスクの高まりも「グローバル企業」としてのリオティントには弱点となる。

昨今はロシア・ウクライナ情勢の先ゆき不透明感や、中国の経済減速といった要因、さらにはトランプ大統領の恫喝関税外交といった不確実性も相まって、鉄鉱石やアルミニウムなどの価格に影響を与えることが多い。

中国は世界最大級の金属消費国だけに、その景気動向はリオティントを含む大手鉱山会社の業績を大きく左右する。

資源ナショナリズムの機運も高まっている。各国政府が資源管理を厳格化することで、採掘ライセンス取得や税制が変化し、プロジェクトの不確実性が増す可能性も否定できない。こうした業界特有の激動は、リオティントの売上と経営を激震させる。

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安値で放置されているバリュー株

リオ・ティントは典型的な「安値で放置されているバリュー株」であるといえる。どれくらい安値で放置されているかというと、10年くらい普通に横ばいであるくらい放置されている。

詳しく説明すると、P/E(株価収益率)は9.28、Forward P/E(予想PER)は8.99となっており、これだけでも割安であることが示されている。

EPS(1株当たり利益)の変動を見ると、過去12カ月のEPSは6.56であるが、今年のEPS成長率は-5.39%と減少している。

来年の予想EPS成長率も-1.26%と低調であり、さらに今後5年間のEPS成長率は-3.20%と予測されている。過去5年間のEPS成長率も-4.80%とマイナスである。こうしたデータから判断すると、リオ・ティントは完全に成熟しきった企業である。

それは売上にも表れている。売上の成長率を見ると、過去5年間の年平均成長率は7.61%と比較的良好だが、実直の成長率はほぼ横ばいだ。売上成長はかろうじてプラスを維持しているものの、急速な成長が見込める状況ではない。

財務の安定性に関しては、比較的健全な状況が維持されており、過度なレバレッジに依存していない。財務リスクは低く、安定した経営基盤があることがうかがえる。ROA(総資産利益率)は10.74%、ROE(株主資本利益率)は20.04%、ROI(投資利益率)は15.65%と、いずれも良好な水準だ。

特筆すべきは配当性向(Payout)が69.96%と高いことである。

これは、利益の大部分を株主還元に充てていることを意味している。つまり、リオティントは成長することよりも、株主へのリターンを重視する企業なのだ。

こうした状況からこの企業の全体像が見えてくるはずだ。この企業は安定した財務基盤と高い利益率を誇るが、今後の成長は企業自身が望んでおらず、高い配当性向を求める投資家に報いる企業だったのだ。

最近、この企業はグレンコアとの合併が噂になっている。合併が成功したらコバルト資産が加わることで、市場地位が強化されるかもしれない。合併が失敗したら、相変わらず配当重視企業として生き続けるだろう。

ちなみに、アメリカの企業と違って、配当は毎年大きく変動するので、規則的な配当や増配を求めている投資家には向いていない。ただ、長期で見ると配当は10年前から2倍となっているので、悪くはない。個人的には、こういう社会に嫌われながらも、長らく生き残って配当も高い企業は好きだ。

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