ロバート・F・ケネディJr.の保健福祉長官承認なるか。この機会に注目したい株とは?

ロバート・F・ケネディJr.の保健福祉長官承認なるか。この機会に注目したい株とは?

ロバート・F・ケネディJr.はワクチン問題だけでなく、マリファナの合法化を強く支持している点でも異彩を放っている。マリファナの規制が厳しすぎるとして医療用にとどまらず娯楽用途まで幅広く検討すべきだと主張し、現在の連邦法のあり方に正面から疑問を投げかけている。興味深い政治的主張だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

ケネディJr.はマリファナ合法派

ロバート・F・ケネディJr.は、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥として名を馳せる政治的名門の一員だ。環境問題や公衆衛生に関する活動を通して多方面で注目を集めてきたが、近年はワクチンへの批判的態度や数々の陰謀論とのかかわりが大きく報じられている。

そんな彼が保健福祉長官への就任承認に近づいている事実は、アメリカ国内のみならず世界が無視できない動きだ。

ロバート・F・ケネディJr.はワクチン問題だけでなく、マリファナの合法化を強く支持している点でも異彩を放っている。マリファナの規制が厳しすぎるとして医療用にとどまらず娯楽用途まで幅広く検討すべきだと主張し、現在の連邦法のあり方に正面から疑問を投げかけている。

すでに多くの州で合法化が進むアメリカにおいて、連邦レベルのトップポジションにマリファナ支持派が加わる影響は大きい。ロバート・F・ケネディJr.の承認が確実視される状況は、政治の世界に大きな波紋を広げている。

歴史的に、マリファナはアメリカを含む多くの国で違法薬物として不当な扱いをされてきたが、医療用の有効性が指摘されるにつれて世界的に認知が変化している。

アメリカでは州単位で合法化の流れが加速しており、保健福祉長官がマリファナの価値を認める方針を持つことは、さらなる法改正や業界拡大に直結すると見られている。トップの見解は方向性を決めるカギになる。

マリファナ市場は拡大を続けており、大手企業やスタートアップが続々と参入している。連邦レベルで規制が整えば、金融機関の取り扱いなどが容易になり、さらなる市場拡大が実現する。ロバート・F・ケネディJr.が保健福祉長官という公衆衛生行政の要職につけば、この流れを加速できる。

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マリファナ関連銘柄はいくつもある

マリファナに関連する銘柄は、医療から娯楽分野まで多岐にわたる。かつては違法薬物のイメージが強かったマリファナだが、米国やカナダを中心に合法化が進むと同時に、多数の企業が上場を果たし投資家の注目を集めている。

合成カンナビノイドの研究や嗜好用マリファナの栽培・販売など、ビジネスモデルは多彩だ。医療マリファナの研究開発を手がける企業は特に勢いがあり、市場の拡張とともに企業価値が急上昇している例も多い。

代表的なマリファナ銘柄として、カナダのAurora Cannabis【ACB】やCanopy Growth【CGC】、Tilray【TLRY】、Cronos Group【CRON】などが挙げられる。これらはマリファナ栽培のライセンスを取得し、本格的な施設投資と研究開発を進めている。

カナダでは連邦レベルで嗜好用マリファナが合法化されているため、これらの企業は国内需要だけでなく、合法化が進む他国への輸出も視野に入れ成長を加速させている。

アメリカではマリファナ関連ETFが投資家のあいだで一定の人気を得ている。【CNBS】や【MSOS】などのETFはマリファナ事業にかかわる複数企業を組み合わせた投資商品として機能し、個別銘柄のハイリスクを分散する手段として注目されている。

マリファナ企業は法規制や政治的決定の影響を大きく受け、株価が急騰・急落を繰り返すことが多い。ETFを選択すれば、そうしたボラティリティを一定程度、平準化できるメリットがある。

株価の面ではマリファナ銘柄のボラティリティが非常に高い。特に法整備に関するニュースが出ると、マーケットは即座に反応し、取引高が急増する。

ロバート・F・ケネディJr.が保健福祉長官に承認されるという報道や、銀行によるマリファナ関連ビジネスの取り扱い規制緩和案の浮上によって、ふたたびマリファナ株が息を吹き返す状況が見られている。マリファナ関連銘柄にはつねにリスクがつきまとうのだが、個人的にはマリファナには愛着を持っており好きな領域だ。

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アルトリア・グループを見よ

マリファナ業界の流れの中で大きな注目を集めるのが、アメリカを代表するタバコ企業アルトリア・グループ(Altria Group)だ。

アルトリアは、マールボロなど数多くの有名ブランドを抱える巨大企業として知られている。だが、近年は喫煙率の低下や健康志向の高まり、規制強化などの逆風を受け、投資家からも嫌われ、見捨てられている。

そんな中で、同社はひっそりとマリファナ市場への参入をしつつある。アルトリア・グループはカナダのマリファナ企業Cronos Group(CRON)に大型投資を行い、実質的に同社の支配権を半分近くを握った。

これは注目すべき動きであるともいえる。タバコのビジネスで培った流通網やマーケティングノウハウ、そして行政へのロビー能力をマリファナ業界に活用することで、新たな成長モデルを築こうと裏側で動いている。

アルトリアは厳しい規制の中で事業を展開してきた歴史を持つ。そのため、政府機関との交渉や広告宣伝の制限への対応に長けている。

マリファナも依然として多くの国や州で複雑な規制に直面しているが、タバコ業界で積み上げた実績が強固なアドバンテージになる。マリファナの品質管理や製品の安全性を担保する技術も活用し、既存のブランド戦略になぞらえて市場を開拓する姿勢が明確だ。

また、アルトリア・グループは消費者の嗜好を捉えるマーケティングにも長けている。タバコの味や香り、デザインなどを研究し、幅広い年齢層に向けたブランド展開を成功させてきた。

そのノウハウをマリファナ製品にも転用し、個別の嗜好に合ったラインナップを展開できるのが強みだ。マリファナ専業企業にはない資金力を投下し、研究開発や製品デザインを強化することによって差別化を図る。

もちろん、マリファナ事業への参入には批判も多い。タバコ企業がマリファナを扱うことで健康リスクの拡大につながると警鐘を鳴らす医療関係者は少なくない。

若年層への訴求や依存症への懸念が社会問題化しており、法整備もさらに厳しくなっていくだろう。ただ、アルトリア自身はすでにCronos Groupへの巨額投資を実行済みであり、この流れを簡単に後退させる気配はない。

私自身は、時期がきたら大手タバコ企業がマリファナ市場を飲み込むこともあるのではないかと考えている。

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アルトリアに強い関心を持っている

アルトリア・グループは高配当銘柄として投資家から根強い人気がある。

タバコ事業の安定した収益基盤を持ち、つねに魅力的な配当利回りを提供してきた。健康志向の高まりによる喫煙人口の減少が続く中でも、ブランド力と既存市場での圧倒的シェアに支えられ、一定のキャッシュフローを確保してきた。

ここにマリファナビジネスが本格的に加われば、新たな利益成長の余地が拡大すると評価されている。

ロバート・F・ケネディJr.が保健福祉長官になれば、米国では銀行によるマリファナ関連事業の取り扱い緩和案が検討され、連邦レベルでの法整備も進む可能性が高まる。

従来、マリファナ関連企業は州法と連邦法の齟齬によって融資や銀行サービスの利用で不利益をこうむりやすかったが、アルトリア・グループのような大企業が参入すれば金融界の抵抗感を一気に崩す力を持っている。

アルトリア・グループはCronos Groupへの大型投資を通じて、マリファナ領域への足がかりを確立したわけで、あとは政治と世論の気運が高まってくれば、自ずとそれが利益に結びついていく。

マリファナ市場は合法化の広がりとともに商品ラインナップの多様化が進み、研究開発も盛んになっている。アルトリア・グループが強みとする広告・ブランド戦略をマリファナビジネスへ適用できると面白い。

同社の株価は長年の逆風で割安水準に放置されてきた。喫煙人口の減少や規制強化という難題がのしかかる中、株価の伸びは鈍化していたが、今後はマリファナビジネスという新たな成長要素がその停滞を打破するとの見方もできる。

タバコ事業による安定配当を得つつ、マリファナ市場での拡大余地を同時に享受できる点が投資家にとって魅力となっている。

先行きに不安を感じてタバコ銘柄から撤退していた投資家が、アルトリア・グループへ回帰する動きも出始めている。楽しみな銘柄のひとつである。それこそ、7%の配当をもらいながら、マリファナ需要を待つのも悪くない。

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