米国株式市場は短期的に見るとトランプ政権の動きに翻弄されるが長期的には?

米国株式市場は短期的に見るとトランプ政権の動きに翻弄されるが長期的には?
ドナルド・トランプ

トランプ大統領は世界の国々に対して「これから中国を取るのかアメリカを取るのか?」と二者択一を迫っている。「中国を取るのであれば、関税を引き上げてアメリカとの貿易ができないようにする」という強い姿勢で各国首脳を脅し回っている。投資家もまた二者択一を迫られる状況になる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

中国の排除はアメリカの超党派の意志でもある

アメリカは中国をグローバル経済から切り捨てようと動いており、トランプ政権2.0になってからその動きは露骨で、極端で、攻撃的になった。トランプ関税で中国はアメリカに145%の関税をかけられているが、これはもはや「アメリカと貿易するな」と言っているのに等しい。

こうした対立を、世界は新常態《ニューノーマル》として捉えるようになっている。

この対立には政治的な駆け引きも加わるので、綱引きのように緩められたり締め上げられたりする。そのため、対立の感情には波が出てくる。「緩和に向かうのでは」と思わせる動きもあれば、逆に「戦争になるのでは」と思わせる動きも出てくる。

ただ、いずれにしてもアメリカが中国を切り捨てられる意志を持っているのは明確に見える。これはトランプ政権というよりも、アメリカの超党派の意志でもあるからだ。

中国向けの半導体関連輸出規制を強化し、韓国や台湾などがAI向け半導体や製造装置を中国に輸出することも事実上禁止し、少数民族への弾圧に関連した中国当局者へのビザ発給制限といった制裁を実施したのは前バイデン政権だった。

前バイデン政権はトランプ政権ほど露骨ではなかったが、中国に対する締めつけは着々とおこなっていたのだ。

日本人の一部の人々はまだトランプ政権が去ったらアメリカは中国と関係改善し、中国は何事もなかったかのようにグローバル経済に復帰すると思っている人もいるかもしれないが、私はそう思わない。

4年後にトランプ政権が終わっても、基本的にアメリカは中国に対しては厳しい姿勢で臨むだろう。中国はアメリカにとって自分たちの覇権を脅かす危険な存在となったからだ。そうであれば、投資の観点から何を考えなければならないのか。

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「中国を取るのかアメリカを取るのか?」の選択

トランプ大統領は世界の国々に対して「これから中国を取るのかアメリカを取るのか?」と二者択一を迫っている。「中国を取るのであれば、関税を引き上げてアメリカとの貿易ができないようにする」という強い姿勢で各国首脳を脅し回っている。

当然、投資についても中国に利するようなことをすればアメリカから追い出すという話になる。そのため、投資家もまた「アメリカに投資するか、中国に投資するか」を選択せざるを得ない状況になっていくのだろう。

そのときに、アメリカを選ぶのか。中国を選ぶのか。現代の資本主義社会の中で利益を得たいのであれば、即断でアメリカを選択したほうがいいだろう。そちらのほうが選択肢としては合理的で勝率も高いからだ。

世界を支配しているのはアメリカだ。最強の軍事力を持つのもアメリカだ。金融を支配しているのもアメリカであり、イノベーションを生み出す力を持っているのもアメリカである。トランプ政権になってアメリカは孤立に向かっているが、それでも西側諸国は中国に鞍替えすることはない。

中国は強欲な領土拡張主義で世界から顰蹙を買い、他国から知的財産を徹底的に略奪して生きている国である。政治的自由もなく、中国共産党に都合の悪い人間は徹底弾圧され、社会的にも肉体的にも抹殺されるような現実がある。

こんな国が最終的に世界を支配できるわけがないのは常識を少しでも働かせればわかる。一時的な権勢があったとしても、それはけっして長続きしないものであり、最後に打倒されてしまう性質のものだ。

そうであれば、長期的に見ればアメリカが勝利をおさめるというのは間違いのない事実である。「米中対立」を軸として見れば中国に賭けるのは間違いであり、アメリカに賭けなければならないのだ。

ただ、中国も最終的に崩壊してしまうまでは、生き延びるために自国の株式市場を強力にバックアップする体制を取る。そのため、一時的に中国の株式市場がすさまじい活況を見せても不思議でもない。

だが、それは日本のバブル崩壊と同じような結末になる。人民元の価値が崩壊すると、中国はそのまま自滅して浮かび上がれなくなるはずだ。どのみち、今の資本主義はアメリカが有利な資本主義である。その構図が変わらない以上、アメリカに賭けた方が勝てる。

これは米中どちらが好きか嫌いかの問題ではない。どちらに賭ければ利益が大きいかの問題である。投資家としてアメリカに賭けたほうが利益率が高いのであれば、そうするというだけの話である。

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短期的に見るとトランプ政権の動きに翻弄される

ただ、アメリカに賭けたほうが成功すると言っても、アメリカの株式市場は短期で一本調子の右肩上がりで上がっていくわけでもない。

アメリカの株式市場は長い目で見ると平均年間利回り10%前後の上昇率で成長していくことになるが、短期的に見るとトランプ政権の動きに翻弄されてチャートはすさまじく乱高下することになる。特に対立の激化している現在はなおさらだ。

トランプ政権2.0の始まった2025年から相場は大きく崩れているのだが、短期的な目で見ると資産のが大きく減少する年も当然ながら出てくる。場合によっては大きな暴落もくるかもしれない。

ただ、きちんと利益を上げ続けている米国企業を保有しているのであれば、それだけで最終的には報われる。もし、個別銘柄特有の影響を排除したいのであれば、S&P500などに連動するETF(上場投資信託)を持てば、最終的には平均年間利回りの10%を取ることができる。

【VYM】と【QQQ】の組み合わせで保有するのもいいし、シンプルにいきたいのであれば、【VOO】【VTI】などのETFを一本だけ持てば自分自身が「アメリカの株式市場」になれる。

これらは、短期的には買い値を割ったとしても、長期的に見ればけっして損はしない。短期の含み損に動揺せずに保有し続け、それをドルコスト平均法で投資していれば、10年たてばだいたい含み損は消え、20年たてば平均年間利回り分の上昇率を享受できる。

一時的な含み損には、焦る必要はないし慌てる必要もない。むしろ、含み損を抱えている状況の時ほど保有数を増やし続けておかないと、来るべき上昇のブーストがかからない。

平均年間利回り「以上」の上昇率を得たいのであれば厳選した個別銘柄で、平均年間利回りで満足できるのであればETFで、相場の乱高下を乗り切る。調整時期には耐える局面も必要だが、それは報われる。

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ある意味、これからが面白い局面になる

今後、米中対立が深まれば深まるほど市場は動揺しやすくなっていき、相反する分析が日替わりで現われる。2025年の予測でも、すでに「株式市場は上昇する」という分析もあれば「壮絶な暴落がくる」という分析も出てきている。

これは珍しいことではない。ボラティリティが高い状況の中では、こうした真逆の分析が日替わり弁当のように出てくる。

FRBがどう出るのか、トランプ大統領は何を発言するのか、中国は貿易戦争で妥協するのか否か、そうした予測不能な出来事が折り重なって市場はベア(弱気派)とブル(強気派)のせめぎ合いが続く。

それを今から「どうなる」と予測したところで何の意味もない。

重要なのは短期の予測ではなく、自分の長期の立ち位置と行動である。トランプ政権は稚拙で心もとないのだが、それでも米中対立は最後にアメリカが勝つ確率が高いという結論さえわかっていれば、黙ってアメリカに投資していればいい。

実際のところ、株式市場は下落すればするほど株数が増やせるので大きなチャンスであると言える。下落局面では他人と一緒になって売っていたら馬鹿を見る。他人が売って極度に下がっているのであれば、そこを買い込まなければならないのだ。

私自身は基本的にはアメリカの株式市場全体を網羅した全米株式ETF【VTI】をコアにして、ボラティリティが大きいと思われるトランプ政権2.0のあいだは、変則的な対応をすることで乗り切る予定でいる。

私がどのような対応をしているのかは、メルマガにも書いたので関心のある人は読んで欲しい。(メルマガ:波乱と不確実性で株価が下落すればするほど利益が大きくなっていく投資とは?

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