トランプ政権の政策で経済の何かが壊れることを想定して投資はこれで乗り切れ

トランプ政権の政策で経済の何かが壊れることを想定して投資はこれで乗り切れ

トランプ大統領の言動は不透明でリスキーだ。トランプ政権の政策で経済の何かが壊れたとき、米国株式市場は世界中の株式市場を巻き込みながら大きく暴落していく局面もあるだろう。株式を保有するすべての人が、それに巻き込まれていくはずだ。それならば、それに対処する必要があるのは当然だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

トランプ政権の政策で経済の何かが壊れることを想定

トランプ政権2.0になって、相場は下落していく一方だ。トランプ大統領の気まぐれな言動、同盟国への恫喝、非合理な関税政策は先行きの不透明感をどんどん強めているので、投資家はもう米国国債も、米国株も、米国通貨ドルも敬遠するようになってきている。

株式市場は乱高下しているのだが、この不透明感は4年続くのだ。ウォーレン・バフェットを始め、プロのヘッジファンドは株式から距離を置いているのだが、それはトランプ政権があまりにも予測不能だからだ。

このままでは、どこかで景気後退《リセッション》や株式大暴落がくる可能性が高いと予測する経済アナリストも増えている。というよりも「もう米国経済はリセッションに入っている」と述べるアナリストもいる。

トランプ政権の政策で経済の何かが壊れたとき、米国株式市場は世界中の株式市場を巻き込みながら大きく暴落していく局面もあるだろう。株式を保有するすべての人が、それに巻き込まれていくはずだ。

相場が下落すると、多くの投資家は含み損の拡大や資産価値の目減りを心配する。

私自身は2024年の末から現金化を進めていたのだが、トランプ政権のやり方が大きなボラティリティを生むことを想定して、今後の4年は意図的に配当銘柄・配当ETFの比率を適宜買い増していく戦略に切り替えた。

これによって、乱高下・暴落・長期低迷のすべてに対処する。

暴落は、株式を保有している人間にとっては落ち着かない局面である。自分の保有している株式が買い値を割った日には恐怖と不安にさいなまれる投資家もいるだろう。ところが、である。配当銘柄・配当ETFを中心に組み立てていくと光景が変わる。

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株式が下落すればするほど分け前が増える

株式の下落は、配当株を中心にしてポートフォリオを組み立てた投資家にとっては、むしろ「歓喜すべき局面」となる。なぜなら、株価が下がるほど配当利回り(配当率)が上昇するからだ。

同じ金額を投資していても、受け取れる配当金の額が増える。つまり、株式が下落すればするほど、買い増しすることによって配当率が上がっていく。つまり、「分け前が増える」のだ。

配当利回りとは「1株あたりの年間配当金÷株価」で算出される。たとえば、年間配当金が1株あたり50円の銘柄を株価1,000円で買っていれば、配当利回りは5.0%だ。だが、市場が動揺して株価が800円まで落ち込むと、どうなるのか。

同じ配当金額であるにもかかわらず、配当利回りは6.25%に跳ね上がる。投下資本に対するリターンが高まるわけで、配当重視の投資家には好機である。

今後、トランプ政権によって4年間のうちのどこかで景気後退、市場の乱高下、大暴落、長期低迷などがやってくる可能性があるならば、配当重視の戦略に切り替えることによって、悪い状況下でも市場から確実なリターンが手に入る。

もし、悪いことが何ひとつ起きなかったらどうするのか。それでも損はしない。高配当株や高配当ETFを買っているのだ。現金はきちんと入ってきている。不安定かつ不透明な時代は、「現金は王様(Cash is King)」だ。

ただ、このトランプ政権下で「悪いことが何ひとつ起きない」と考えるのは、あまりにも楽観的過ぎるだろう。

奇跡的に何も起こらなければいいのだが、すでに関税はかけられ、予測不能な言動が株式市場を動揺させ続けているのだから、何かが起こるのは時間の問題だと覚悟しておくほうが現実的だ。

別に「絶対、暴落する」とか「景気後退がくる」とか予測しているわけではない。そうした確率が高まって目の前にきている以上、そうなって驚くよりも何かが起こると思って準備しておいたほうがいいという話をしている。

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あまりにも景気後退が深く、長く、ひどい場合

難しい話をしているわけではない。「トランプ政権は経済を混乱させる性格があるので、高配当をもらいながら高みの見物をしよう」と言っているだけだ。非常にシンプルな考えかたである。

もし、相場が暴落や長期低迷に入ったら、「ただ耐える」のではなく「高配当をもらいながらやりすごす」ほうが合理的に決まっている。

だから高配当株・高配当ETFの比率を増やして、不労所得を拡大させておく。株価下落局面で買い増しをおこなうと、将来にわたって受け取る配当金の総額も増加するので、下落が長引けば長引くほど不労所得が膨らむ。

同じ銘柄を10万円分ずつ買い増しし続けた場合、株価1,000円のときは100株、800円のときは125株を取得できる計算である。125株なら年間6,250円の配当金が見込め、株価下落前の5,000円と比べて1,250円多い分配を得ることができる。

トランプ政権が終わり、経済が回復に向かう局面になって株式市場が反転上昇に転じた際には、キャピタルゲインも手に入れることができる。その局面になったらそこで降りてもいい。

下落局面で買い増しをおこなった分は、株価が戻ると同時に含み益も拡大し、二重の利益を手にするチャンスが生まれる。

もちろん、注意すべき点もある。個別銘柄の場合、あまりにも景気後退が深く、長く、ひどい場合は、配当そのものが減額されたりストップされることもあるかもしれない。そうなれば、高配当をもらいながら高みの見物という戦略も瓦解する。

そうならないために、配当金自体が将来にわたって維持可能かどうか、企業の業績やキャッシュフローをきちんとチェックしなければならない。株価が下落して配当利回りが上がっているからといって、よろこんで買い増しすると、あとで減配や無配転落のリスクを抱え込む可能性がある。

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 したたかに生き残る準備をしている

個別銘柄の場合は、持続的な配当性向や自己資本比率、フリーキャッシュフローなどを確認し、安全余裕度の高い銘柄を選ぶ必要がある。その安全性を担保するために、「配当貴族銘柄」や「配当王銘柄」を中心に選ぶ人もいるが良い着眼点だと思う。

配当貴族銘柄とは、S&P500採用銘柄のうち、25年以上にわたり一度も減配せず毎年配当を引き上げてきた企業を指す。

この長期にわたる増配実績は、景気変動や市場の上下動に耐えられる堅実な業績と経営体質を示すバロメーターでもある。安定した不労所得を求める投資家にとって魅力的な選択肢となる。

配当王銘柄とは、米国企業全体を対象に50年以上にわたり連続増配を継続してきた企業群を指す。配当貴族銘柄よりもさらに厳しい基準を満たすため、より高いディフェンシブ性を備え、不況期でも減配リスクが極めて低いとされる。

それでも心配な人のために、高配当ETF【VYM】などが存在する。私自身も【VYM】を保有している。今後、4年は【VYM】も買い増ししていこうと考えている。

高配当ETFといえば、欧米では【SCHD】が非常に有名で、よく買われているのだが、このETFを運用するチャールズ・シュワブは日本国内での販売登録していないので直接買えない。

その代わり、「楽天SCHD」などの投資信託で買えるので、これを買っておくのもいい選択肢だ。(ダークネス:楽天SCHDは、FIREを目指す若年層や安定した収入源を求める年配層の強力な武器だ

私自身もトランプ政権の4年は「楽天SCHD」を順次、買い増していこうと思っている。そうやって、今後、乱高下・暴落・長期低迷がやってきても、したたかに生き残る準備をしている。

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