配当率6%超のコロンビア・バンキング・システム【COLB】だが注意すべき点もある

配当率6%超のコロンビア・バンキング・システム【COLB】だが注意すべき点もある

高配当株を狙う投資家のあいだで、注目されている「目立たない企業」がある。コロンビア・バンキング・システム(Columbia Banking System Inc)【COLB】がそうだ。配当率6%超なので、高配当株投資家にかなり注目されている。この企業は、どういう企業なのだろうか?(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

コロンビア・バンキング・システム

高配当株を狙う投資家のあいだで、注目されている「目立たない企業」がある。コロンビア・バンキング・システム(Columbia Banking System Inc)【COLB】がそうだ。

名前を見ると、南米のコロンビア共和国に関係している銀行のように見えるかもしれないが、実はまったく関係がない。

社名の「コロンビア」は、アメリカの歴史や地名によく使われている単語であり、アメリカ国内では「コロンビア川」「コロンビア州」「コロンビア大学」など、多くの場所や団体で見られるが、いずれも南米の国名とは無関係である。

同社のサービスも米国西部・太平洋岸北西部が中心であり、ラテンアメリカ諸国での事業展開や資本関係もまったく存在しない。つまり、名前には「コロンビア」と入っているが100%アメリカの企業である。

ポジション的には、アメリカの銀行業界の中でも中堅に位置する商業銀行で、本社はワシントン州タコマにある。設立は1993年。もともとはローカルな地域銀行としてスタートしたが、現在では複数州にわたり支店網を持つ。

主な営業エリアはワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、カリフォルニア州などで、これらの地域の企業・個人を顧客基盤としている。

取り扱う業務は幅広く、預金業務、貸出業務、住宅ローン、小口融資、商業向け不動産ローン、さらには資産運用や信託サービスまで多岐にわたる。一般的な地方銀行とは異なり、比較的大規模な企業の合併・買収も展開している。

この企業が注目されているのは、現在は株価が下落して、配当率が6%超となったからだ。

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 注意しなければならない点はどこなのか?

コロンビア・バンキング・システムの株価は、2025年に入ってから下落基調を続けて芳しくない。

その主な理由は、ひとことで言うと「米国地方銀行セクター全体を取り巻く環境悪化」だ。米国は今、長期金利が上昇しているのだが、これによって住宅ローンや商業不動産ローンの需要が大きく減退している。

これがコロンビアのような地銀の貸出成長を鈍化させ、業績の先行き不安につながっている。

さらに、不動産市況の悪化で貸倒れリスクも高まっている。地方銀行は、だいたい商業用不動産ローンの比率が高い傾向にあるが、この銀行もまた同様だ。そのため、投資家からの警戒感が強まっており、投資家が逃げている。

2023年には米地銀破綻問題が起きていたが、トランプ政権2.0の政策で景気が冷え込んでいくとふたたび同じことが起きても不思議ではない。そうなれば、預金流出も起きれば、資本の安定性への懸念も起こるだろう。

同社の直近の決算でも、四半期ごとの売上や利益の伸び悩み、EPSの減少など、収益面で明確な減速がみられる。こうした実績が株価の上値を重くし、配当利回りの高さにもかかわらず株価が反発しない構造となっている。

全体として、金利・不動産・信用不安がいっせいに重なったことで、2025年以降の株価下落は必然だったと言える。

ただ、もし同社がこの状況を乗り越えて成長していくことができるのであれば、配当株投資家は「割安」でこの銀行を手に入れることができることになる。

配当株投資家は誰もが逃げているときに、安く買って、配当をもらいながら成長を待つ。この銀行は株価も安くなり、割安で放置され、配当率も6.10%と銀行株にしてはかなりの高配当となっている。

だから、多くの高配当株投資家が目をつけている。

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配当株投資家が同社の買いを見送るとしたら

この企業の株価収益率(PER)は9.96、予想PERは7.71となっている。これは、米国企業平均と比べても、業界平均と比べても割安感が強い。株価純資産倍率(PBR)も0.95で、純資産と比べて評価が低い。

これは、それだけ投資家が銀行セクターへのリスクを恐れていることを意味している。すでにアメリカはトランプ政権の政策で不透明感が増しており、これから何が起こるのかもわからない。投資家が慎重になるのも無理もない。

配当利回りは6.10%だが、配当性向は56.48%で、利益の半分以上を配当に回す姿勢が示されている。配当株投資家にとっては魅力的な水準だが、利益減少時の減配リスクも無視できない。

もし、配当株投資家が同社の買いを見送るとしたら、この部分だろう。

この企業は連続増配株ではない。つまり、何が何でも株主に還元しようという強い姿勢があるわけではない。過去に減配があったし、当然これからも状況次第では減配はありえる。

営業利益率は25.81%、純利益率は16.8%で、収益力自体は地方銀行として標準以上の水準にある。自己資本利益率(ROE)は9.73%、総資産利益率(ROA)は0.96%で、効率面でも一定の水準を維持している。

有利子負債比率(Debt/Equity)は0.63で業界標準に近い。そのため、景気が悪化しても即倒産とはならないはずなので、そのあたりの心配はほぼない。だが、そのときは株価も下がって減配もあるので、株主のダメージは大きいだろう。

配当利回りが高く、財務も一見安定しているが、成長性の鈍化や外部環境の悪化が心配だ。配当株としての魅力もあるのだが、リスクもある。

ただ、景気の先行きは「悪化する」とは限らない。もし多くの投資家の意に反してアメリカが好景気になったら、この企業を割安・高配当で手に入れた配当株投資家は大きなリターンを得ることになる。

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何も起きないと楽観する根拠もない

私自身はトランプ政権の政策全般をあまり信用していない。理由は単純で、過度な保護主義や突発的な外交政策、規制緩和の一方的な推進などが、経済全体のバランスを大きく損ねるリスクを常につきまとうからだ。

特に、強引な関税政策や特定企業の狙い撃ちの恫喝関税などは、市場を大きくゆがめる要因になっていくだろう。

最近も、米国外で作ったiPhoneには関税25%をかけるとか、インドに工場を作らずにアメリカに作れとAppleを脅しているのだが、そういうことを大統領が「恐喝」するような構図が続いたら、いずれアメリカの経済システムの「何か」が破綻する。

すでに、企業が作り上げたグローバルなサプライチェーンはトランプ大統領の言動でズタズタになってしまっているのだが、やがてこれらの悪政は産業のコスト構造や消費者の生活コストをいっせいに押し上げる。

つまり、インフレがくる。景気も悪化するので、それは「スタグフレーション」となって経済を襲う可能性すらもある。そうなったら、FRB(連邦準備銀行)も状況を救うのに苦慮することになるだろう。

経済を守るために金利を引き下げたらインフレが加速するし、インフレを抑えるために金利を引き上げたら経済が壊れるのだ。

トランプ政権がこうした危機を「絶対に引き起こす」とは言えないが、これだけ異常な言動を続けて何も起きないと楽観する根拠もない。

そういうことも十分にありえると思っているからこそ、私はトランプ政権下の4年間は投資に慎重を期して、高配当株に投資して配当をもらいながら「高みの見物」をするつもりでいる。最近、高配当株に言及しているのは、そういう意図もある。

コロンビア・バンキング・システム【COLB】も、そんな中で注目している企業のひとつでもある。ただ、金融株はややリスクかもしれず、減配もありえるので積極的に投資しようと思っているわけではない。

しかし、状況が変わったら十分に投資に値する企業であるとも思っているので、同社を興味深く見つめている。

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