根拠のない流言・噂・デマ・憶測・都市伝説・虚説・陰謀論に基づいて投資するな

根拠のない流言・噂・デマ・憶測・都市伝説・虚説・陰謀論に基づいて投資するな

情報源があいまいで、根拠のないフェイクニュースのほうが、普通のニュースよりも拡散速度が速いという統計も出ている。なぜなら、根拠のない流言・噂・デマ・憶測・都市伝説・虚説・陰謀論ほど、感情を強く刺激する言葉や極端な表現が使われ、人々の感情に突き刺さるからだ。しかし、信じたらカモにされる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

自分以外の誰かが答えを知っている?

何月何日に株価が下がるとか、戦争が始まるとか、株価が大暴落するとかしないとか、そういう根拠のない流言・噂・デマ・憶測・都市伝説・虚説・陰謀論は、常に私たちのまわりに流れている。

投資の世界では、市場操作のために、意図的かつ悪意を持ってフェイクニュースが流されることもしばしばある。そして、それが信じられたりする。あからさまなデマでも、信じる人は多いのだ。

なぜ人は、証拠もなく真偽があいまいな情報に強く影響されてしまうのか。

おそらく、誰も先のことがわからず、不安や不確実性が深層心理に強く作用するからだろう。「この先どうなるかわからない」という状態に直面すると、人はなんでもいいから答えを求めたくなるのだ。

そのため、不安が募れば募るほど、どんなに信頼性が低くても「こうらしい」「こういうことが起きるらしい」という情報にすがるようになる。それがデマだろうと、陰謀論だろうと、何だろうと、人はそれで答えを得た気持ちになる。

もうひとつ、「自分は知らないが、他の誰かが答えを知っているはずだ」という感情も、うさんくさい情報に飛びついて信じる元凶にもなる。

金融市場や投資環境は、そもそも情報の非対称性が大きい。全員が同じ情報を持っていることは絶対にない。市場に参加するすべての投資家が、常に不完全な情報のもとで意思決定を迫られている。

この「情報の穴」を埋めるために、人は身の回りで聞いた噂や、SNSで目にした流言を頼りにしてしまう。「この情報を信じて動いたほうが得かもしれない」という心理が、噂やデマを信じる動機をさらに強くする。

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真実からますます遠ざかっていく

昔からそうだったが、今はそういう傾向がさらに悪化している。インターネットが当たり前のインフラとなり、SNSで情報が飛び交い、一瞬で世界的に共有されていくからだ。

実は、情報源があいまいで、根拠のないフェイクニュースのほうが、普通のニュースよりも拡散速度が速いという統計も出ている。なぜなら、根拠のない流言・噂・デマ・憶測・都市伝説・虚説・陰謀論ほど、感情を強く刺激する言葉や極端な表現が使われ、人々の感情に突き刺さるからだ。

誰かが「聞いた話」として、もっともらしくSNSに投稿すれば、それがいっせいに拡散され、次の瞬間には何千人、何万人もの人が同じ噂を目にする。しかも、拡散される過程で情報が脚色されたり、意図的に加工されたりするため、真実からますます遠ざかっていく。

人間の心理には「確証バイアス」と呼ばれる傾向がある。投資家は、自分が信じたいと思う情報だけを無意識に集め、都合の悪い情報は排除しがちである。

株式市場で自分の持ち株に都合のいいデマが流れたとき、それがいかに根拠のない話であっても「やっぱりそうか」と納得してしまう心理的な構造がある。この確証バイアスによって、流言や都市伝説の信憑性は実際以上に高まっていく。

金融市場に限らず、社会全体でも災害や経済危機、パンデミックのような不安定な状況になると、デマや都市伝説が爆発的に増加することが知られている。

2024年の米国大統領選挙でもトランプ陣営やバイデン陣営を巡って大量のデマや陰謀論が流布されたし、その前のパンデミックでも根拠のないデマが大量に流れたのも記憶に新しい。

人は不安や不確実性の中で、根拠のない情報に過度に依存してしまう傾向が強い。投資は自分の資金を賭けて人生を豊かにするためにやっているものなのだが、そんな大事なものを、ワケのわからない情報でリスクにさらすのは問題だ。

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噂で高値づかみして事実で損をするリスク

安易に根拠のない噂や流言、フェイク、都市伝説、陰謀論を額面通りに受け取り、それに基づいて売買をおこなうのは、きわめて危険だ。そうした情報による株価の変動には持続性なんかないし、そこに事実の裏づけがないのであれば一瞬にして株価は思惑と違う方向に動く。

実証研究でも、噂やデマによる一時的な株価変動は、長期的なリターンに結びつかないことが明確になっている。

ただ、たしかに噂に飛び乗って儲ける投資家も皆無ではない。

「噂で買って事実で売る」という格言もあったりする。それが事実であろうがなかろうが、噂で急騰したならば、それに飛び乗って、事実が出るか出る直前に売ればちょっとした浮利を儲けることができる。

しかし、常にそんなにうまく乗り降りできるものではない。その確証のない情報にどれくらいの投資家が「乗る」のかは誰にもわからないし、その情報の化けの皮がはがれるのがいつなのかも誰にもわからない。

そのため、「噂で高値づかみして事実で損をする」というリスクがつねにつきまとう。特に経験の浅い個人投資家や、情報収集にかける時間や労力が限られている層ほど、デマや都市伝説に踊らされやすい傾向が統計データからも示されている。

株価変動の裏には、たしかに本質的な企業価値や業績以外に、思惑や噂による短期的な資金流入がある。しかし、長期的に見ると、こうしたノイズは最終的に排除され、企業の実力に株価が収れんする。

短期的な流言による値動きを当てにして繰り返し取引しても、安定したリターンにはつながらない。噂や憶測を信じて売買をおこなうこと自体が、投資として極めて非合理的な行動だ。

非合理なら、最初からやらないほうがいい。投資の分野だけでなく、日常生活全般においても、根拠のない流言や噂、都市伝説、陰謀論が引き起こす混乱や損失は絶えない。

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情報があふれる社会では、その情報がワナとなる

根拠のない情報に左右された結果、本来得られるはずだった利益を失ったり、無用な不安やパニックを経験したりする投資家が後を絶たない。事実に基づかない情報は、個人の判断を狂わせ、群集心理をさらに過熱させる。

最近では、暗号通貨でしばしばそういう現象が見られる。SNSで噂が流れ、投資家がそれに食いつき、買いが殺到し、その後事実と異なることが明らかになると、一転して売りが殺到する。

こういうものに振り回されると、いずれは致命傷を負う。ネット掲示板の噂やSNS上の憶測、匿名アカウントによる都市伝説は、検証可能な事実がない限り情報価値はゼロである。

それよりも、事実だけを淡々と積み重ねて判断し、個人的な願望や他人の思惑にはかかわらないほうが理に適っている。投資で長期的に成果を出している投資家は、ほとんど例外なく「客観的なデータ」「企業の財務指標」「市場全体の統計」など、根拠の明確な材料を重視している。

この姿勢が最終的にリターンの差となって現れる。

情報があふれる現代社会では、その情報がワナとなる。根拠のない流言・噂・デマ・憶測・都市伝説・虚説・陰謀論は、退屈しのぎのヒマつぶしにはなるが、あまりにもそういうのと接していると、だんだん理性がゆがんでくる。

それならば、そういうのとは最初から「かかわらない・信じない・聞かない」というスタンスを徹底するほうがいい。それで、無用なリスクを遠ざけることができる。初めから無視して、自分の人生から遠ざける。

現実に、多くの人が根拠のない話に流されるたびに大きな損失を被っている。群集心理やネットの風説にはけっして巻き込まれず、自らの判断を客観的な基準で支え続けることが、激変する社会を生き残る唯一の方法だ。

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