トランプ大統領のレームダック化は、日本の危機につながる

トランプ大統領のレームダック化は、日本の危機につながる

アメリカ南部は、今でも白人至上主義者が強い影響力を持つ特異な区域である。

黒人差別も残っており、2015年6月18日に起きたサウスカロライナ州では教会にいた黒人が9人無差別に撃ち殺される事件もあった。(自由の国と言いながら実際には人種で分離しているアメリカ

2017年8月12日、アメリカ南部バージニア州シャーロッツビルで、KKKをはじめとする白人国家主義者たちと、リベラル派が激しく衝突した。

この抗議デモは南北戦争の南部側将軍ロバート・E・ リーの像撤去計画に抗議するものだったが、抗議は4月から始まっており、徐々に大きな注目を浴びる事象になっていた。

この日も全米各地から「オルト・ライト」と呼ばれる新世代の超保守派たちが続々と現地に集まっていたのだが、この抗議デモに対するカウンターも膨れ上がって、抗議デモで激しい暴力の応酬が見られた。

ここに20歳の男の運転する車がカウンター側に突っ込んで32歳の女性が死亡する事件も起きている。

この事件は全米に報道され、アメリカの多くの国民、メディア、政治家、経済界、警察当局、軍幹部はこぞって白人国家主義者とネオナチの集団を批判した。

トランプ大統領は経済界から「見捨てられた」

ところが、ドナルド・トランプ大統領は白人国家主義者を非難しなかった。「いろいろな側が悪い」と擁護するような発言さえ見せていた。

しかし、次第にアメリカ全土が白人国家主義者に対する批判で塗り潰されるようになると、ドナルド・トランプは「人種差別は悪だ。その名の下に暴力を振るう者は犯罪者でごろつきだ」と声明を読み上げた。

ところが翌日になると再び発言は最初に戻り、「像撤去に抗議して集まった人たちには多くの素晴らしい人々が含まれていた」とも言った。

「双方に暴力的な人間がいた」

確かに双方に暴力的な人間がいたのは事実だが、この発言からドナルド・トランプ大統領が心情的には白人至上主義者に寄り添っていると見なされた。

そのためトランプ大統領の政策運営に関わっている経済アドバイザーたちは、自分たちが「人種差別主義者であるトランプ大統領を支援している」と思われるのを嫌うと同時に態度を二転三転させるトランプに愛想を尽かして次々と辞任を表明する事態となった。

メルク、アンダーアーマー、インテルのCEOたちが「良心の問題」で辞任して去っていったのだが、このうち製薬会社メルクのCEOケン・フレージャー氏はアフリカ系黒人である。

トランプ大統領は「代わりは大勢いる」「スタンドプレーをするだけの人は残ってくれなくて結構だ」と吐き捨て、さらにケン・フレージャー氏には「薬のぼったくり価格を引き下げるための時間が増えるだろう」と侮蔑の言葉を投げている。

しかし、8月16日には「製造業評議会」と「戦略政策フォーラム」を解散すると発表した。

「製造業評議会と戦略政策フォーラムの実業家たちに圧力をかける代わりに、両機関を終わらせることにした」

トランプ大統領は「解散させることにした」と自主的に行ったように見せかけたが、実態はCEOたちが次々に辞任していくので両機関とも維持できなくなったのが本当のところだ。

これによってはっきりしたことがある。ドナルド・トランプ大統領は経済界から「見捨てられた」ということだ。

「4年持たない大統領」と化すかもしれない

ドナルド・トランプ大統領は拡大していくグローバル経済でアメリカの多国籍企業がどんどん海外に出ていって雇用を消失させていることが問題だとして「アメリカ第一」を掲げて大統領になった人物である。

そのために雇用をアメリカに戻す意味で、多国籍企業のCEOたちに協力を要請し、ときには強い圧力をかけ、雇用を引き戻そうと努力してきた。

そのための調整や圧力の現場が製造業評議会と戦略政策フォーラムであった。

しかしこの2つの機関が崩壊したということは、今後は経済界はドナルド・トランプ大統領の意向通りには動かない可能性があるということでもある。

ドナルド・トランプ大統領は対ロ制裁を解除させようとしたがそれも失敗しており、公約に掲げていた「オバマケア」の即時廃止にも失敗している。

さらに、投資家が重要視していた税制改革計画も紛糾しており、入国禁止令も大混乱を引き起こしただけだった。

パリ協定の離脱についても大批判されると「条件がより米国の国益にかなう形となる場合、再び参加の意志はある」と含みを持たせる言い方に変えている。

要するにドナルド・トランプ大統領は重要な決定や合意に関してはことごとく失敗している。今のままでいくと、経済界からの支援も得られないわけで、政権運営はより厳しくなることが予測される。

ただ、トランプ大統領の動きや言動は規格外であり、通常の予測の範囲に収まるタイプではないので、これから何が起きるのかは誰も想像できないところもあるので、巻き返しもあるかもしれない。

しかし今のところ、身動きすればするほど人望を失って、大量辞任を引き起こしているわけで、常識的な見方をすると早晩トランプ大統領はレームダック化するということになる。

弾劾や辞任勧告もあり得る。そうなると「4年持たない大統領」と化すかもしれない。

アメリカの混乱の中、日本は何をすべきなのか?

アメリカの政治的混乱がどのような結末を生むのかは誰にも分からない。

しかし、世界情勢に政治が占める割合は非常に強いわけで、もしアメリカの政治が混乱したまま身動きできなくなると中国やロシアのようなアメリカと敵対する国家が利することになる。

そうすると、アメリカと同盟を結び日米安保でつながっている日本にもマイナスの影響が出てくるのは必至である。アメリカの混乱は対岸の火事ではない。

日本が急いで考えなければならないのは、トランプ大統領が完全にレームダック化したとき、日本の安全保障が脅かされることになるということだ。

指揮系統が混乱するので、もし東アジアで一触即発の状態になったときにアメリカが対応できない。

もしアメリカがレームダック化したら、今は大人しくしている中国も今後は挑発的に尖閣諸島や沖縄を狙って侵略を進めてくることになる。これは必然的な動きだ。

また、アメリカの後ろ盾を失ったと悟った韓国・北朝鮮もあらゆる手段で日本の弱体化と侵略を進めることになる。今ですら止まらない反日はさらに暴走していく。

つまり、ドナルド・トランプ大統領のレームダック化や弾劾や辞任は、日本の危機につながっていくということだ。

日本が何をすべきなのかは至ってシンプルだ。

「自分の国は自分で守る」という当たり前を徹底し、日本のための国益を常に優先して動くということである。

国を守るためにはなりふり構っていてはいけないわけで、軍隊を持たなければならないのはもちろんのこと、敵対国が核で武装してくるのであれば、日本もまた核武装する必要もある。

そもそも他国に自国を守ってもらう状態が70年以上も続くというのがおかしい。それをおかしいと思わない人もおかしい。すでに中国・韓国・北朝鮮は日本の敵として浮上しているのだから、なおさらだ。

アメリカが政治的にレームダック化することが予測されるのであれば、日本の再軍事化はすぐにでも必要であると認識しなければならない。トランプ政権の混乱に備えるというのは、そういうことだ。

追い詰められていくトランプ大統領。アメリカが政治的にレームダック化することが予測されるのであれば、日本の再軍事化はすぐにでも必要であると認識しなければならない。トランプ政権の混乱に備えるというのは、そういうことだ。

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