国際社会が北朝鮮に振り回されて馬鹿げたことになっている。
金正恩はアメリカが本気で潰しにやってきていると知って蒼白になって「対話・平和」と言い出し始めていた。
そこで、シンガポールで会談をすると決まったのだが、アメリカのトランプ大統領のまわりを固めているのは強硬派のジョン・ボルトン氏、ピーター・ナヴァロ氏、マイク・ポンペオ氏、ジーナ・ハスペル氏である。
ジョン・ボルトン氏は北朝鮮にリビア方式を求めていたのだが、このリビア方式というのは「すべての核廃棄を完全に実行しろ。それが確認できたら経済制裁を解いてやる」というものだ。
ジョン・ボルトン氏はこのリビア方式を採るにあたって、まずは北朝鮮は保有する核を第三国、もしくはアメリカに搬入しろと強く要求していた。さらに、弾道ミサイルの破棄も要求している。
なぜか。ジョン・ボルトン氏はまったく北朝鮮を信用していないからである。ジョン・ボルトン氏はこのように言い続けてきた。
「会談でリビアのように核放棄をしなければ時間稼ぎ用の偽装にすぎない」「北朝鮮は過去25年間、合意と違反を繰り返したため懐疑的だ。北朝鮮の時間稼ぎに二度とだまされることがあってはいけない」
「北朝鮮の核兵器と装備を包装してテネシー州オークリッジ研究所に移す議論をしなければいけない」
アメリカに武器をすべて取り上げられて丸裸に
これに対して北朝鮮は今までの「のらりくらりの時間稼ぎ」がまったく通用せず、しかもシンガポール会談ではアメリカに武器をすべて取り上げられて丸裸にされることを自覚して追い詰められた。
そこで金正恩は中国の習近平と矢継ぎ早に会談していたのだが、ここに来て急に方向転換して「米国が一方的な核兵器の放棄を要求し続けるなら、来月12日に予定されている米朝首脳会談を中止する意向だ」と言い始めた。
「もし米国が我々を追い詰め、我々が核兵器を放棄するのを一方的に要求するなら、我々は協議への関心を失い、予定されている米国の首脳会談を受け入れるべきか再考せざるを得なくなる」
実際のところ、北朝鮮はリビア方式を飲めない。
今まで北朝鮮が国際社会と孤立してでも核開発に邁進したのは、政権維持のためである。それをすべて取り上げられるのだから、今までの努力が水泡に帰す。
リビアのカダフィ政権は欧米の言うがまま核兵器を廃棄したら、一気に政権崩壊に見舞われて群衆に小突き回されながら死んでいった。
北朝鮮の金正恩はそれを見ており、「核を取り上げられたら同じ目に遭う」と恐怖に打ち震えている。だから、とにかくリビア方式を受け入れるわけにいかない。それは、アメリカが仕掛けたワナだと気づいているのである。
さらに北朝鮮が気に食わないのは、トランプ政権が「自分たちが圧力をかけたから北朝鮮が折れた」と世界に言って回って、自分たちがアメリカに屈服したと思われていることだ。
北朝鮮の現体制は神格化された「はったり」で独裁政権を敷いているので、その虚飾が剥がれたら、もう恐怖での統治ができなくなる。そうなると、遅かれ早かれ政権は瓦解する。
つまり、北朝鮮はこのままシンガポール会談になればどのみち崩壊してしまうのである。
時間稼ぎもできず、体制維持もできず、しかもアメリカに屈服させられたと思われる。だから、それを突っぱねるしかない状況に追い込まれている。
中国と戦う前に北朝鮮ごときで消耗したくない?
逆にアメリカは北朝鮮の金正恩をシンガポールまで連れて来ないと話にならない。
そこでドナルド・トランプ大統領は「リビア方式にはしない」「非核化をしたら体制の維持を保証する」としきりに甘いエサを撒いて金正恩を誘い出しているのが今の状況だ。
非核化して北朝鮮を無力化したら北朝鮮は再び「どうでもいい弱小国家」に逆戻りする。そうなればアメリカは北朝鮮の体制がどうなろうと別に何の関心もない。
アメリカが関心があるのは「中国」である。ピーター・ナヴァロ氏もジョン・ボルトン氏も、究極的にアメリカの敵になるのは中国であると考えている。
トランプ大統領もまた同じ意見を共有しているのは、2016年の大統領選挙の際にしばしば中国を名指しで批判していたことで分かる。
アメリカが本音のところで言えば北朝鮮との戦争に消極的であるのは、本当の敵は中国なのに「北朝鮮のような弱小国家と戦って体力を消耗したくない」と言う感情があるからだ。
戦争になれば莫大な予算が飛んでいく上に、人的被害も避けられない。しかも北朝鮮との戦争に勝っても、見返りはほとんど何もない。見返りどころか、むしろ負担が増すだけだ。
「北朝鮮に対する軍事攻撃については好ましくないし、誰も望んでいない」と言うのはジョン・ボルトン氏も語っている。
それは、「北朝鮮のような弱小国家と戦争で消耗すると中国と戦うのに不利となる」からであり、平和主義からきている話ではないのである。
だからトランプ大統領が北朝鮮の攻撃を決断したのは、ある意味アメリカにとっては苦渋の決断であったとも言える。アメリカにとって最も良いのは、戦争しないで北朝鮮から核を取り上げ、後は勝手に崩壊してくれることなのだ。
アメリカの真の敵は中国である。
北朝鮮を完全崩壊するのが人類にとって正しい判断
シンガポールでの米朝会談があるのかないのか、今のところかなり流動的だ。あってもなくてもアメリカは困らない。困るのは北朝鮮だ。
会談が実現したらトランプ大統領はそこで非核化を迫るし、なければないで今まで通りの強力な経済制裁を継続するだけで、どちらに転んでも北朝鮮が損をする。
この状態で北朝鮮が生き残るにはどうするのか。それは、中国に平れ伏してでも手を結び、中国からの経済制裁を解除してもらうことである。
金正恩は矢継ぎ早に中国の習近平国家主席と会談しているのだが、この会談以後に強気になっていることを見ると、中国は北朝鮮に支援を伝えたことが濃厚になっている。
中国からの支援が得られれば、後は中国の属国になるものの体制の維持は保証できるので北朝鮮は「体制維持」と言う目的を達したことになる。
北朝鮮の金正恩は別に国民を豊かにするために動いているわけではない。すべては体制維持のために動いている。
また朝鮮半島の平和やら統一に関心を持っているわけでもない。自分たちの体制維持に都合が良ければ「平和・対話」と言い出すし、韓国をおだて上げて騙すこともする。
逆に自分たちの体制維持の邪魔になれば、韓国をめちゃくちゃに批判するようなこともする。
北朝鮮は「自分のことしか考えていない国」である。独裁のために国民を弾圧し、自立できないので周辺国を恫喝して支援を引き出し、違法なビジネスで外貨を稼ぐ「ならず者国家」だ。
この体質は現行体制が続く限り永遠に続く。
そうであれば、北朝鮮がいかなる取引をしてきたとしても、最終的には北朝鮮と言う国家を完全に崩壊させてしまうのが人類にとって最も正しい判断であるのは間違いない。
北朝鮮の余力と選択肢はどんどんなくなっている。どのみち、もう北朝鮮の命運は長くない。北朝鮮の崩壊は早ければ早いほど良い。(written by 鈴木傾城)