
日本の自然が破壊され、景観が壊れ、災害を招きやすいメガソーラーについては、日本はもう一度立ち止まって「本当にこれでいいのか?」とよく考える必要がある。地域住民が反対し、抗議しているというのに、SDGsの名の下にそれを強引に進めるというのは許されない。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
日本政府はうなりをあげて太陽光発電に邁進
いま、SDGs(持続可能な開発目標)の名の下で日本で急激に押し進められているのが、太陽光発電である。
太陽光発電は「環境に優しい」だとか「クリーンエネルギーだ」とよく言われるのだが、太陽光発電がどんどん設置される中で、多くの国民が疑念を抱き「ちょっと待ってくれ」と言うようになってきている。
日本全土に大規模な太陽光発電「メガソーラー」が設置されるようになってきているのだが、広範囲に渡って山の斜面を削り取って設置されたメガソーラーは景観を醜悪なまでに破壊する。
ソーラーパネルはクリーンだとか言われているのだが、山の斜面を削り、そこにパネルを敷き詰めていくのだから、自然を破壊し、景観を破壊するものである。クリーンであるわけがない。自然と調和もしていない。
しかも、森林を伐採したところに敷き詰めるのだから、自然がもともと持っていた保水機能をも喪失させ、雨が降ったら泥を下流に垂れ流して麓や川や海を恒常的に汚し続ける。
2021年7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で激しい土砂崩れがあったのだが、その土石流起点の近くにも太陽光発電が設置されたいた。他にも豪雨や台風でソーラーパネルが崩れたり破壊されたりしている画像もインターネット中に出回っている。
豪雨が起きたら、設置のためにハゲ山にして保水機能が消えたところにソーラーパネルの重さが重なって土砂崩れが起きやすくなっているのだ。「環境に優しい」どころではないのである。
しかし、日本政府はうなりをあげて太陽光発電に邁進しているような状況だ。
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メガソーラーで引き起こされた「まぎれもない人災」
世界中で気候変動が起こり、日本もまた気候が熱帯的になっていて、毎年のようにゲリラ豪雨で被害が発生している。そんなところに山を広範囲に削り、場合によっては盛り土をしてメガソーラーを設置する。
尋常ではない。どうかしている。
山を削ってメガソーラーを設置したら甚大な災害が発生すると言われ、実際にそうなっているのだから、これはもはや「天災」ではない。メガソーラーで引き起こされた「まぎれもない人災」である。
こんなものを「クリーン」という政治家や経営者がいるのだから驚きだ。どうかしている。メガソーラーはクリーンでも何でもない。
もちろん、ゲリラ豪雨だけがメガソーラーの敵なのではない。日本を襲いかかる天災は、すべてメガソーラーを破壊する可能性があるものだと推進派の政治家や経営者は気づかなければならない。
台風はどうか。メガソーラーは、実は台風にも非常に弱い。敷き詰められた板が強風で煽られ、まくれ上がり、引きちぎれ、吹き飛んでいく。
下手したら、敷き詰められたソーラーパネルすべてが巨大な風力によって吹き飛んでいくこともある。さらにまわりの森林から飛ばされてきた樹木がソーラーパネルに直撃して破壊してしまうこともある。
台風は毎年「必ず」日本にやってくる。天災は避けられない。メガソーラーは天災を人災にしてしまう危険なものであると分かっているのだから、こんなものを日本全土に敷き詰めるというのは「筋が悪い」と誰でも気づくはずだ。
気づかないのは、日本の景観なんか自分の利権のためなら破壊してもいいと思っている政治家と、金のことしか考えていない経営者だけだ。筋が悪いと気づいて利権や金のためにやっているのであれば、どうしようもない。
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ゲリラ豪雨にも、台風にも、地震にも、洪水にも弱い
日本には地震もやってくる。ソーラーパネルは地震にも弱い。メガソーラーともなると、樹木を広範囲にむしり取って設置する分なおさら弱い。
山の斜面に敷き詰めるタイプのものは、斜面に重量のあるものを設置するのだから、地震で揺さぶられたら崩れ落ちてしまう危険が高まるのは当然のことである。
平らなところに建てられた建築物さえも地震ではダメージを受けるのに、斜面に簡易に設置された重量のあるソーラーパネルを設置して何もないはずがない。メガソーラーは危険を倍増させてしまうのである。
自然災害は、場合によっては洪水をも引き起こす。洪水と言えば、メガソーラーを設置するために自然堤防を削って自然破壊し、集中豪雨で川が決壊してしまったケースもある。
2015年の鬼怒川氾濫は凄まじい洪水被害を引き起こしたのだが、これはメガソーラーの開発が引き起こしたものであり、典型的な「メガソーラー人災」であった。
メガソーラーの設置業者は「何の問題もない」と住民に説明し、反対者には恫喝さえしていた。しかし、地元の人々は最初から自然堤防を掘削してメガソーラーを設置することに懸念していた。
「こうなるかもしれない」と恐れていたことが起きたのである。実際に巨大被害が引き起こされてこのメガソーラーの設置業者は反省したのか。まさか。洪水が引いた後、この業者は再びメガソーラーを設置しはじめた。
言語道断だ。
ちなみに、経済産業は洪水でソーラーパネルが水没したら「絶対に太陽光発電設備に近づくな」と警告している。なぜなら、ソーラーパネルが浸水すると、高圧電力で感電死する恐れがあるからだ。それは危険物と化すのである。
ソーラーパネルそのものだけでなく、架台・支持物、集電箱、パワーコンディショナー及び送電設備のすべてが危険なのだ。
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日本の山の斜面にこんなものを大量に敷き詰めるな
ゲリラ豪雨にも、台風にも、地震にも、洪水にも弱い。それが太陽光発電である。
日本政府は「国土強靭化対策を取る」と言っているのだが、それならば太陽光発電の設置は強く法的規制をかける必要がある。なぜなら、太陽光発電を敷き詰めるのは国土弱体化に他ならないからだ。
ソーラーパネル自身は正しい場所に正しく設置されれば効果を発揮するシステムかもしれない。太陽光発電に適した環境を持つ国もあるだろう。メガソーラーはそういうところに設置すればいい。
しかし、日本はどうなのか。日本の山の斜面にこんなものを大量に敷き詰めるのは「環境に優しい」ことなのか? こんなものを敷き詰めるために日本中の山をハゲ山にするのは「クリーン」なのか?
そんなことがあるわけがない。それは国土強靭化どころか国土弱体化なのだ。
今、日本で進められている太陽光発電は正しくないということだ。正しくないことを、金儲けのためにメガソーラーの業者がやっている。しかも政治家がそれを推進する。そこに問題があるのだ。
日本の自然が破壊され、景観が壊れ、災害を招きやすいメガソーラーについては、日本はもう一度立ち止まって「本当にこれでいいのか?」とよく考える必要がある。
地域住民が反対し、抗議しているというのに、SDGsの名の下にそれを強引に進めるというのは許されないことである。
日本の自然を愛し、日本を正しい方向に導きたいと思うのであれば、山の斜面や自然堤防を削って作るような不自然極まりないメガソーラー事業には断固とした反対姿勢を見せるべきではないか。
自然を破壊しても何も思わないクズのような政治家や業者に対して日本人は明確に「ノー」を強く突きつける必要がある。それができないと、日本の国土は最終的に荒廃する。
