アップルが史上初の時価総額1兆ドル企業になったことで考えるべきこと

アップルが史上初の時価総額1兆ドル企業になったことで考えるべきこと

アップルが史上初の時価総額1兆ドル企業になっている。これはアメリカの企業でも初のことであり、大きなエポックメイキングとして語られるべき出来事だ。

アップルは名実共にアメリカのハイテク企業の頂点に立ち、そしてその強大なブランド力、販売力で、これからも高収益を維持し続ける企業でもある。

このアップルも最初から順風満帆だったわけではない。

社内の混乱で創始者スティーブ・ジョブズが解任されて急速に魅力が色褪せて売上が落ちていき、赤字が累積し、ギル・アメリオ時代にはいよいよ倒産寸前にまで追い込まれている。

スティーブ・ジョブズが復帰した時、アップルはすでに資金が尽きかけていた。

「ジョブズが始めたアップルというカルトはジョブズが終わらせるべき」と批評家が言っていたほど、アップルは経営的にも財政的にもズタズタの企業だったのである。

実際、アップルが復活できるのかどうかは誰にも分からないところだった。

しかし、アップルを支える熱狂的なファンは相変わらず存在していた。そして、スティーブ・ジョブズもまたアップルを心から愛していた。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

アップルが失っていたのはアイデンティティと哲学

金もない。シェアも失った。批評家にも見捨てられ、ユーザーもみんなマイクロソフトに流れてしまった。誰が見ても、どこから見ても、アップルには勝機がなかった。

そんなアップルに何があったのか。スティーブ・ジョブズの突破口は何だったのか。それは「哲学」だった。「革新的な製品によって、宇宙に衝撃を与える」という哲学だ。

他人の真似はしない。他人を追わない、現状に満足しない。この哲学をスティーブ・ジョブズは「Think different」とマーケッティング的に表現した。

「他人と違う考え方をしろ」というこの哲学は、アップルのアイデンティティを強烈に指し示していたものだった。

初期のアップルは「個人が使えるコンピュータ」を引っさげて巨人IBMに挑んできたのだが、アップルは当初から「他人と違う考え方をしろ」で育ってきた企業だったのだ。

1985年にスティーブ・ジョブズがアップルを追放され、11年後に復帰するまでの10年間でアップルが失い続けてきたのも、この哲学だった。

だから、金もない、シェアもない、ユーザーも去ったアップルが最初に取り戻さなければならなかったのは「アイデンティティ」であり「哲学」だったのだ。

創始者スティーブ・ジョブズが戻ったことによってアップルはアイデンティティと哲学の両方を取り戻し、そしてこの哲学に沿った製品が市場に受け入れられることによってアップルは復活していった。

それが iMac であり、iPod であり、iPhone だった。

現在のアップルを支えているのは「iPhone」という史上最強のスマートフォンだが、アップルがなければスマートフォンというジャンルはこれほどすぐれたデザインとユーザーエクスペリエンスで登場しなかったはずだ。

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アップルには企業としての確固たる哲学があった

アップルが時価総額1兆ドル企業になったのは「iPhone」という製品が広く受け入れられてきたからである。

スマートフォンという分野はアップルが極限までブラッシュアップした製品で拡大し、世の中を変えた。そういう意味でアップルの成功はスマートフォンの分野で成功したからであると言うことができる。

しかし、それだけではない。「スマートフォンで当てた」という見方は表層的な見方であり、アップルの成功のすべてを語っていない。

アップルの成功は、一にも二にも、企業としての確固たる哲学があったことである。

文明を変えてしまうまでのイノベーションを生み出し、それを受け入れてもらうという「Think different」の哲学を強烈に持ち続けたことである。

そして、その哲学によって注意深く経営が組み立てられたからである。

道なき道を切り開くというのは簡単なことではない。時には大きな失敗をすることもある。アップルも完璧な企業ではなく、今までに数々の失敗製品を生み出している。

しかし、それでも「他人の真似はしない。他人を追わない、現状に満足しない」という哲学を追求して、極限まで製品をブラッシュアップする姿勢が大きな尊敬を呼び寄せている。

アップルの強烈なブランド力は、強烈な「哲学」が生み出したものであり、その哲学が持つ力は大きなものである。

私がアップルという企業に惹かれるのは、この企業がとても奇妙な企業だからである。製品をスペックや販売力で語らない。哲学で語る。

ビジネスを追求しているのだが、根底に大きな哲学がある。普通の感覚では説明できない奇妙な「何か」を持ち合わせている。それが「哲学」だった。

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自らを「Think different」しなければならない時代

アップルが史上初の時価総額1兆ドル企業になったというのは、そういう意味で興味深い現象だ。

ある意味、「他人と違う考え方をしろ」というのは、奇妙な哲学であるとも言える。その哲学が時代を制したということになるのだから……。

そのような目でアメリカのハイテク企業を見回すと、アップルだけでなく、グーグルもフェイスブックもアマゾンも凄まじくユニークであることに気づく。

「イノベーションで世界を変える」という点に焦点が合っていて、既存の枠組みをイノベーションで破壊しながら突き進んでいるのである。

そうであれば、アップルも重要だが、アップルだけでなく現在のアメリカのハイテク企業はそのどれもが重要な存在であることに気づくはずだ。

今後、インターネットはさらに重要なインフラとなり、時代を変革していく。人工知能やロボットや自動運転や仮想現実やブロックチェーンは、文明のあり方を一変させてしまう。

「他人と違う考え方をしろ」という企業が世の中を変えていくのだから、これからの世の中は「今までとまったく違った社会になる」というのは、現代人は肌で感じるはずだ。

そのため、私たちもまた考え方を変えなければならない時代になっているということに気づかなければならない。

今までと同じことをしていたり、同じ考え方をしていたり、同じ生き方をしていればもう次の時代には完全に取り残されて生きていけなくなってしまう可能性が高まっている。

私たちは自らを「Think different」しなければならない時代に差し掛かったのだ。

用意は、できているだろうか?(written by 鈴木傾城)

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