投資銀行の名門であるゴールドマン・サックスは、現物株式取引部門に配属されていたトレーダー600人を、わずか2名にまで「削減」することに成功している。AI(人工知能)がトレードのほとんどを担うようになったからだ。
ここ数年でトレードにおける自動化は急激に進んでおり、2017年の時点で、すでに金融取引の45%はAIによる電子取引に置き換わっている。これからも、この比率は急激に増えていくことになる。
超高額の給料を得ていたトレーダーはみんな必要なくなる。ゴールドマン・サックスはこれにより莫大な経費が削減できる。
JPモルガン・チェースもまたAIを活用して「法律専門家や融資担当者の年間作業時間を36万時間減らすことに成功した」と発表している。
AIは、工場勤務の労働者や流通やコールセンターの人間をリストラするだけでなく、高収入ホワイトカラーをもリストラするのは日本でも銀行員が次々とリストラされているのを見ても分かるはずだ。
銀行はインターネットにおける新たな決済システム(フィンテック)の大波でビジネスの根幹が揺らいでおり、大量の行員が重荷になってしまっている。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
AIが人間の知性を打ち負かすのは当たり前になった
次の技術革新は、AI(人工知能)にあるのは明白だ。
AIはインターネットのビッグデータを解析しながらありとあらゆる事象を学ぶようになっており、急激に台頭しつつある。
すでに、ルールのあるゲームの世界では、AIが人間の知性を打ち負かすのは当たり前になった。
人間は、もうAIにスピートでも思考の深さでも勝つことができなくなっているのである。(ダークネス:グーグルは人工知能の潜在能力を隠したが、その意味に気付くべきだ)
今後、このAIはさらに緻密なアルゴリズムを手に入れて、ルールのない世界でも活用されるようになっていく。そうなることはすでに確実になっている。
その結果、何が起きるのか。
今、人間がやっている仕事の多くをAIが代替するようになっていくのだ。2020年以後、こうした動きは鮮明化するようになり、「第4次産業革命」の時代に入る。(ダークネス:すぐに第4次産業革命が来る。自分を高度化させないと死ぬ)
AIの技術革新と同時並行で起きているのはロボット化の技術革新だが、この2つが結びつくと次の時代は間違いなく人間から多くの仕事を奪っていく。
欧米では、すでにAIがカスタマーサポートや定型的な新聞記事の作成に携わっており、知的な分野でも人々の仕事を奪うようになっている。
今後は、小売店販売員、レジ、会計士、一般事務、セールスマン、一般秘書、積み降ろし等の作業員、コールセンターの案内、ビル管理人……とありとあらゆる職業がAIとロボットに奪われていく。
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そんな人間になるように、仕立て上げられてきた
AI(人工知能)やロボットの時代になっても、これらは「自発的に考える」ということができないので仕事を完全にこなせるわけではないという意見もある。
しかし、この「自発的に考える」という部分がくせ者だ。
よく考えて欲しい。企業はこれまでコスト削減のために、どんな努力をしてきたのか。従業員を、上司の命令をそつなくこなす「歯車のように動く人間」にしてきたのではなかったのか。
なぜ企業が従業員を「歯車化」していたのか。いったん仕事をルーチン化するところまで持っていけると、従業員が入れ替わっても仕事が止まらないからである。
さらに考えなければならない。従業員を入れ替えても仕事が止まらないというところまで仕事をルーチン化できると、次に企業は何を行うのか。
企業は従業員を「より安く雇える人間」にどんどん変えていくのである。
正社員が非正規雇用に入れ替わる流れというのは、「仕事を単純作業にまでブレイクダウンし、その上でコストの高い従業員をコストの安い従業員に入れ替える」という仕組みで成り立っていたのである。
企業は利益を生み出すために、ひたすらコスト削減に邁進していく。だから、「正社員を非正規雇用に代える」「従業員を安い賃金で働く外国人に代える」という流れに向かって走っていたのだ。
従業員を安い賃金で働く外国人に代えるためには、企業が自ら製造拠点を海外に持っていくか、もしくは自国で外国人を雇うかの2つの方法があった。これをグローバル化という。
グローバル化とは「従業員の賃金を下げる」というコスト削減のために行われているのであり、別に多文化共生みたいなもののために行われているのではない。多文化共生は、言ってみれば自分たちの金儲け目的をカモフラージュするものである。
企業の目的は常に利益を増大させることでしかない。主義主張などは二の次だ。
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従業員の賃金をどんどん下げるための仕組みとは?
最近はコスト削減のために行われていたグローバル化が各国で大きな反撥を生み出すものになった。
グローバル化が「自分たちの賃金をどんどん下げていく」という仕組みを、企業に雇われている人々がやっと実感として理解できるようになっていったからだ。
逆に言えば、企業は「グローバル化で従業員の賃金を下げている」ということが「完全にバレた」のだ。ついでに多文化共生も、リベラルの空論であることもバレた。
自分たちの給料を下げられて黙っている人はどこにもいない。
だから、欧米では反移民・反難民の勢力がどんどん支持されるようになり、アメリカでは反グローバリズムを鮮明にした異質の大統領ドナルド・トランプが登場した。
この弱肉強食の資本主義を支配しているのは巨大企業だ。巨大企業の体制は強固であり、その支配はこれからも続くので、グローバル化は紆余曲折があっても止まらない動きである。
しかし、現在は予想外に大きな反撥がグローバル化を停滞させている。そうであれば、企業がコスト削減のためにAIやロボットの活用をより急ぐと考えて間違いない。
外国人を使ってコスト削減するという方策が停滞するのであれば、AIやロボットを使ってコスト削減するという方向に向かうのである。
それはうまくいくのだろうか。多くの企業は従業員をAIやロボットに置き換えるのはうまくいくと考えている。
企業は今まで「仕事を単純作業にまでブレイクダウンし、その上でコストの高い従業員をコストの安い従業員に入れ替える」という仕組みの中でコスト削減を行っていた。
では具体的に「仕事を単純作業にまでブレイクダウンする」というのは、どのように対処していたのか。それが「マニュアル化」である。
企業は、仕事を単純作業に落とし込み、従業員をマニュアル通りに動かすことによって、非正規雇用者でもアルバイトでもパートでも成り立つように現場を改善してきた。
マニュアル通りに動く……。これこそ、AIやロボットが最も得意とする分野であることに気付かなければならない。グローバル化が賃金引き下げの手段であることが「バレた」のであれば、企業は次の戦略に進む。それがAIとロボットで置き換えるというものである。(written by 鈴木傾城)
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マニュアル通りに動く……。これこそ、AIやロボットが最も得意とする分野であることに気付かなければならない。グローバル化が賃金引き下げの手段であることが「バレた」ので、企業は次の戦略に進む。それがAIとロボットで置き換えるというものである。
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多国籍企業がグローバル化を推し進めていたのは、グローバル化で低賃金の労働者を雇うことができたからだ。リベラルを焚き付けて多文化共生とかを語らせていたのは、言ってみればカモフラージュだ。しかし、それがバレたので企業は次の戦略に移る。それがAI導入である。https://t.co/9D21oWbezU
— 鈴木傾城 (@keiseisuzuki) 2018年8月29日