肩書、経歴、資産、高級ブランドを自慢する人間と金の話はするな

肩書、経歴、資産、高級ブランドを自慢する人間と金の話はするな

カリフォルニア工科大学のランジェル博士が行った実験で、値段も種類もバラバラのワインを実験者に飲ませ、脳を調べる実験をした。

5種類のグラスを用意したのだが実際には3種類のワインであった。さらに、このワインを飲んでもらう前に実験者には価格表を見せていた。

その結果、実験者は高いワインを飲むと、脳部位の「内側眼窩前頭皮質」という部分が強く活動することが分かった。ここは快楽を感じる部位である。

味が決め手だったわけではない。前もって教えられた価格が高ければ高いほど、内側眼窩前頭皮質の働きが活発になったことでそれは分かる。

どういうことなのかというと、ワインの本当の味も影響があるのかもしれないが、それよりも何よりも「高額のワインを飲んでいる」という意識が重要だったのである。

ワインで酔う前に、高級イメージに酔う。モノの資質よりも前に、社会的なポジションに一目置く。これは、人間が「ブランド」「イメージ」「社会的立場」というものに強く影響される動物であるということを意味している。

これを悪用するのが詐欺師たちである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

「ブランド」「イメージ」「社会的立場」に酔う

通常の何の変哲もないバッグに、高級ブランドのマークを付けると高額で売れる。こうした偽ブランド品は本物よりも若干安い値段にしたら本物よりも売れると言われている。

だから、偽ブランド品を扱う業者はどんなに摘発しても次から次へと生まれて来る。こうした偽ブランド品は、絶対に根絶できないと言われている。

偽造できるのは商品だけではない。学歴でも同じだ。

表側で活躍している人の中には、しばしば学歴詐称をして箔をつける人がいる。テンプル大学の学位を持っていると言った人間もいたし、ペパーダイン大学を卒業したと詐称していた政治家もいた。

コロンビア大学卒業を謳っていた芸能人もいたし、東工大の非常勤講師を名乗っていたジャーナリストもいれば、テキサス大学オースティン校で政治学を専攻して卒業と言っていたジャーナリストもいる。

誰かが調べればバレるかもしれないが、調べられるまではバレない。学歴が高いと尊敬され、ちやほやされる。どんな馬鹿げた言動をしている人間でも、学歴があれば「賢い人」と錯覚されるのである。

同じことが社会的地位のある人間にも言える。社会的地位が高いと言えば、みんな知的で人格者なのかと言えばそうでもないのは誰でも知っている。

しかし、社会的地位がある人間は、どんな間抜けでも「きっと何か特別な力があるはずだ」と、社会は勝手に勘違いする。

本当は「親がすごいだけ」だとか、「家系がすごいだけ」であっても、その親や家系がブランドとなって、その人まですごいことになってしまうのだ。

それほど人間は「ブランド」「イメージ」「社会的立場」に対して、脳が強く反応して本能的に酔う。無意識に、そして知らない間にメロメロになってしまう。

ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』

「誇大な肩書き」を思い切り真剣に演じる詐欺師

だから、詐欺師の多くは詐欺をするときには、とても入念に外観を飾り、出身や家系を創作する。

たとえば、日本にクヒオ大佐と名乗る詐欺師がいた。生粋の日本人で、本名は鈴木和宏という平凡な名前なのだが、外見がハーフに見えるので、外国人になりすまして女性を騙す詐欺を思いついた。

この男は「自分はハワイ出身の、アメリカ空軍特殊部隊パイロットである」と言って日本女性に近づき、「父はカメハメハ大王、母はエリザベス女王の双子の妹」と名乗っていた。

どう考えても荒唐無稽極まりない与太話だ。

ところが、こんな誇大妄想を真剣に信じた女性もたくさんいて、次々とこの男に騙されていった。1億円も騙し取られた女性もいたのだから、「なぜこんな見え透いた嘘に騙される女性がいるのか」と騒然となった。

しかし、これも「ブランド」「イメージ」「社会的立場」を全開にして仕組まれた詐欺だった。

立派な外国人という「イメージ」。
カメハメハ大王、エリザベス女王という「ブランド」。
アメリカ空軍特殊部隊パイロットという「社会的立場」。

クヒオ大佐と名乗るこの男の経歴は嘘八百だったのだが、詐欺師は往々にしてこの誇大な肩書きを思い切り真剣に演じる。

そのため一部の女性は、「彼が言っていることは本当なのかもしれない」とその作られた虚飾の高級イメージに酔ってしまうのである。

それを知っているから、詐欺師はいつも全力で肩書きを粉飾する。「自分はある財閥一族のひとり」だとか「皇族」だとか「有名芸能プロダクション」だとか「一流大学の教授」だとか、そんな肩書きを自由自在に生み出して、自信満々にカリスマを演じる。

【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)

無防備でいると、どうしてもブランドになびく

詐欺師というのは、もともと自己陶酔型の人間も多い。

そのため、こうした嘘を情熱的に演じ、自分で演じているうちに、自分でそれが本当のつもりになってしまう。そして、雰囲気に飲まれやすい人がそれに巻き込まれていく。

こうした結婚詐欺師の誇大妄想に引っ掛かった女性を嗤う世間も、実はそれほど大して立派でもない。

たとえば、政治家はみんな実力があるとか、社長はみんな優秀だとか、一流大学の教授はみんな頭が良いと、無邪気に信じ込んでいる人もいる。

中には「テレビで物知りのジャーナリストが言っていたから本当だ」とか、この時代になっても思っている人さえいる始末だ。これは、クヒオ大佐に騙された女性と大差ないレベルにあると言っても過言ではない。

しかし、仕方がない面もある。「ブランド」「イメージ」「社会的立場」を持った存在には陶酔してしまう本能を持っている以上、人間はこうしたものに騙されやすい傾向にあるのは間違いない。

人は他人を信じて生きているものだし、無防備でいるとどうしてもブランドになびく本能があるからだ。

そんな中で騙されないようにするためには、常識的な判断を身につけるということくらいしかない。

やたら肩書きや家柄を強調する人には気を付ける。社会的立場を自慢する人を信用しない。肩書、経歴、資産、高級ブランドを自慢する人間とカネがかかわる話をするときは最大限に警戒する……。

常識と直感が働く人であれば騙されることはないのだが、人間はもともと「ブランド」「イメージ」「社会的立場」に騙されやすい脳を持っていることを考えると、人生の中で何度かは詐欺師に騙されることもあるかもしれない。

そのとき、自分をあまりにも過信してしまっていると、致命的なまでにダメージを受ける。(written by 鈴木傾城)

このサイトは鈴木傾城が運営し、絶えず文章の修正・加筆・見直しをしています。ダークネスを他サイトへ無断転載する行為は固くお断りします。この記事の有料転載、もしくは記事のテーマに対する原稿依頼、その他の相談等はこちらにメールを下さい。

常識と直感が働く人であれば騙されることはないのだが、人間はもともと「ブランド」「イメージ」「社会的立場」に騙されやすい脳を持っていることを考えると、人生の中で何度かは詐欺師に騙されることもあるかもしれない。

一般カテゴリの最新記事