
景気後退がやってくる。潰れないと思った会社も潰れるし、一生安泰だと思った正社員もリストラの憂き目に遭うし、就職できると思った人は内定がもらえなくなるし、非正規雇用者はまた一時休業や雇い止めに追いやられる。そういう危険が膨れ上がるのが景気後退という時期なのだ。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
日本もまたこの景気後退の深い波から逃れられない
私はずっと『鈴木傾城のダークネス・メルマガ編』で、2022年は株式市場に近寄るな、今年は金融的冒険をするな、と言い続けてきて、4月には「世界は景気後退《リセッション》に陥る可能性が高い」とも言ってきた。
リセッションに関しては、アメリカ政府はずっと否定し続けてきた。
たとえば、2022年7月はイエレン財務長官は記者会見で「減速しているが景気後退不可避でない」「米国で広範なリセッションの兆しは見られない」「米経済は一連のショックに対して非常に耐性があることが証明されている」と言っていた。
また同じ頃、米ホワイトハウスのジャンピエール報道官も「リセッションに陥っていないし、陥る前の状態にもなっていない」と言っていた。
JPモルガン・チェースのストラテジストも「株式市場の視点では、米景気下降はますます起こりそうにない」と言って、「リセッション入り確率は51%以下」とも言った。
ところが、それからどうなったのか。
2022年10月になってから、もはやアメリカ政府の要人発言を無邪気に信じている人間はほとんどいない。コンサルティング企業がアメリカの大手企業のトップ400人を対象にした調査では、9割が「アメリカ経済は1年以内にリセッション入りする」と述べている。
Meta(旧Facebook)社の新規採用の凍結や、Appleの新型iPhoneの販売不振などが次々と報道されているが、アメリカでは一部でレイオフも始まっている。
新しくできたばかりのハイテク企業は株価が半値どころか70%も80%も吹き飛んでレイオフの嵐となっているし、大手小売業者のWal-Martも200人規模のレイオフを行った。
現在のインフレによる経済不調は過剰在庫、過剰雇用に走った企業に大きなダメージを与えており、ここからいよいよ本格的なリセッションに入るので、状況はもっと悪化する。
日本? 日本もまたこの景気後退の深い波から逃れられない。
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景気後退と政治の無為無策が日本国民にもたらすもの
日本はすでにバブル崩壊以後から30年以上にも渡って経済の停滞と萎縮を続けてきている。しかし、日本政府や財務省は何をやっているのかというと、税金や社会保険料を引き上げ続けて、ダメージを受けた国民をさらに痛めつけているのである。
そういうわけで、30年も耐えてきたのだから、そろそろ良くなるというわけではなく、経済的に衰弱した国民は、これからやってくる世界的な景気後退《リセッション》の大波に飲み込まれて、もっと状況が悪化するのだ。
そんな中で与党である自民党は安倍晋三元首相の喪失や韓国カルト統一教会問題などで窮地に落ちている。岸田首相も状況を改善することができそうになく、信頼も政治執行能力も失われてしまっているので、これからやってくる景気後退で何ができるわけでもない。
2020年からのコロナ禍では非正規雇用者が窮地に追いやられた。非正規雇用者の半数は女性だったので、ここ数年で女性の自殺は8000人以上も通常よりも増えているのがそれを物語っている。
しかし、悲劇はそれで終わりではなかったのだ。コロナ禍と増税と物価上昇に見舞われた次に、いよいよ本格的な景気後退がやってくるのだ。
これまで何とか経済的に耐えてきた中間層も、2023年は相当なダメージを受けるのは覚悟しておかなければならない。これからやってくる景気後退と政治の無為無策は、全日本国民を経済苦に追いやっていくだろう。
私たちは誰でも、すっと足元が崩れて社会から転がり堕ちていく可能性がある。どんなに真面目で、楽観的で、向学心に溢れていても、社会全体がどん底に落ちたらどうしようもない。
「このままでは立ちゆかなくなる」と分かっていながら、問題を避けることができない。蟻地獄のように悪い方向に引きずられていく。
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結局は自分たちがリストラされることになる
私たちは社会と関わって生きている以上、景気後退のような大きな波が来たら、そこから逃れることはできない。
誰でもどん底に落ちたいと思って落ちるわけではない。しかし、落ちると分かっていても逃れられないのだ。勤めている会社の業績が猛烈に悪化してしまうと、一生安泰だと思っていた人生もぐらぐらと崩れていく。
これまでうまくやってきた企業だから、これからも大丈夫というのもない。
たとえば、ソフトバンク・グループは孫正義氏が率いる巨大企業である。孫正義はアリババの投資で大成功し、最先端の企業に投資し続けることでより会社を巨大化させ、2021年までは天才投資家と称されていたのだ。
しかし、その孫正義ですらも2022年には一転してロシア・ウクライナの戦争や、欧米のインフレ懸念による株式下落の波に飲まれて、数兆円もの損失を出すという事態に陥った。ビジョン・ファンドも苦境に落ちてリストラを余儀なくされている。
このソフトバンク・グループの苦境はひとえに孫正義の投資行動や志向の問題であって、社員の問題ではない。
そうであっても「社員の努力」以外のところで世の中が暗転し、巻き込まれ、「このままでは立ちゆかなくなる」と分かっていながら巻き込まれ、結局は自分たちがリストラされることになるのだ。
これから経営が悪化する業種は、畜産農業や発電所、電力小売り業、繊維・衣服等卸売業、電気工事業、管工事業などが上げられている。しかし、景気後退がやってきたら社会全体が地盤沈下するので、想像だにしなかった業種の名の知れた企業も倒れていくことになるだろう。
イノベーションを読み違えたり古いビジネスモデルに固執したりすると、今の社会では先がない。大企業から中小企業まで、すべての企業が一瞬にして「凋落」してしまうのが現代社会の特徴である。とすれば、誰しもが一瞬にして叩き落とされるということなのだ。
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避けられなくなってしまった景気後退に備えはあるだろうか?
迫りくる景気後退《リセッション》が避けられないのであれば、私たちはリセッションの時代に相応しい生き方をしなければならないということだ。何があるのか分からないので、貯金を散財するような馬鹿なことはしないでじっとしておくしかない。
「物価上昇の時代は借金をした方が勝ち」という人もいるのだが、会社をリストラされたら路頭に迷う可能性のある人は真に受けない方がいい。リストラされて収入が消えて、貯金も乏しいのに借金だけはあるというは、一気に生活を破綻させる。
景気後退の局面では収入が減ったり、消えたり、不安定になることに防御した方がいい。そうなった時は、借金が一番の重荷になるのだから、重荷はなるべく抱えないのが一番なのだ。
終身雇用時代にはリスクではなかった住宅ローンは、不安定化した雇用状況の中では、人生を破壊するほど大きな不安定要素になることも多いので注意が必要だ。景気後退は逃げ場がない。
潰れないと思った会社も潰れるし、一生安泰だと思った正社員もリストラの憂き目に遭うし、就職できると思った人は内定がもらえなくなるし、非正規雇用者はまた一時休業や雇い止めに追いやられる。
そういう危険が膨れ上がるのが景気後退という時期なのだ。今の状況では景気後退が避けられないのだから、ここに政治の無為無策やら増税などが重なったら目も当てられないことになる。
今日は安定した生活を送っていられても、明日からはもう人生が足元からガラガラと崩れていくかもしれない。
だから、私たちの誰もは「経済的な面で自分の生活を防御する」ということを真剣に考えなければならない時がやってきている。不安定な社会がより流動的になるのだから、うかうかしていると誰もがやられる。
2023年。避けられなくなってしまった地獄のリセッションに、あなたは備えているだろうか?
