本格的に貧困者が増える事態を避けられなくなった日本で議論すべきこと

本格的に貧困者が増える事態を避けられなくなった日本で議論すべきこと

2019年3月6日。SMBCコンシューマーファイナンスの調査で、30代から40代の世代で「現在の貯金額がゼロ」と答えた人が23.1%となったことを報告している。100万以下で見れば60.5%だった。

「貯金はゼロか100万円以下」が圧倒的多数を占めているのが現状だった。ところが、それにも関わらず平均貯蓄額は195万円である。これは、一部に1000万円以上の人間もいるということを意味している。

平均貯蓄額は、少数の勝ち組が引き上げているというわけだ。そのため、平均貯蓄額195万円は勝ち組にとっても負け組にとっても意味がある数字にはなっていない。経済格差が開くと、平均貯蓄額ほど意味を失うものはない。

貯金ゼロの人間から見たら195万円の貯金は「多い」と感じるし、貯金1000万円以上の人間から見ると逆に「少ない」と感じるものである。「100万円未満が圧倒的多数で、中には1000万円超えがいる」という言い方が誰もが納得できるものになる。

それにしても、日本は先進国のはずだったではないか。その先進国で働く30代から40代の世代の多くが貯金100万円以下というのは、かなり低いと言えるかもしれない。しかし、それが現実でもあった。

先進国だから豊かになれるとは限らないということだ。社会は二極分化し、「底辺」が限りなく広がっている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

高齢層も若年層も女性も苦しい

追い込まれているのは30代から40代ばかりではない。全世代が等しく二極分化しているのが現状だ。

日本はとっくの昔に高齢者が満ち溢れる国となったが、まったく預金を持たないで破綻してしまった高齢層の生活保護受給者も、うなぎ上りに増えている。追い込まれている高齢層が多くなっていて、非常事態宣言が出されてもおかしくない。

こうした高齢層の貧困は、一時的な貧困ではない。なぜなら高齢者は心身が衰えているのが普通であり、時期が来れば働けるようになるわけではないからだ。働けない高齢者は一生働けない可能性が高い。

一方の若年層も、相変わらず身分の不安定な非正規雇用や低賃金で苦しんでいる。そのまま何年も非正規雇用で過ごすと、もう正規雇用に入るのは難しい。一生を非正規雇用者として不安定な身分で苦しむことになる。

こうした中で女性の単身者も増えているが、女性の場合はもっと正社員になるのが難しく、若い頃は何とかなっても30代を超えると絶望的に仕事が見付からなくなっていくのが現状だ。

日本経済はバブルが崩壊した1990年以後、長期低迷を余儀なくされている。

そこに就職難、政治の無策、若者を非正規雇用者にする小泉政権の構造改革、グローバル化の進行、少子高齢化による人口減、2009年から2012年までの民主党(現・民進党)の円高放置……と数々の悲劇が重なって、日本の底辺で経済的弱者と生活困窮者が増大することになった。

日本人の経済的な苦境は、家計貯蓄率が2013年にいよいよマイナスに突入したことでも見て取れる。金融資産の取り崩しは、とっくに始まっている。

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金持ちはさらに金持ちになった

金融資産を持っている裕福な世帯は2013年からずっと資産を増やし続けている。貯蓄ゼロの世帯が増えているのに、一方で平均貯蓄額は年々上がっているのだが、これは奇異な現象ではない。

端的に言えば、「貧困層は増えているのだが、金持ちはさらに金持ちになった」という現象が起きているということだ。

「持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられる」

新約聖書のマタイの法則が進んでいるのだ。

金持ちがより資産を増やしたというのは、金持ちが24時間働いたということを意味しているわけではない。

こうした金持ちはみんな株式資産を持っているが、2013年から日経平均が上昇し、さらに株式市場の総本山であるアメリカ株もまた上昇していることから、労せずして資産を膨らませたのである。

これが資本主義の中の金融のマジックで、労働力と資産の増加は一致しているわけではない。

「一生懸命に働く」という道徳は今も社会の底辺では成り立っているのだが、それが巨大な資産を生み出すことは絶対にない。巨大な資産は、「金で金を生む」というやり方で生み出す世界になっているのだ。

これが、持つ者と持たざる者の乖離を深めている。

高度成長期の時代に日本が成し遂げた一億総中流の世界は、もうとっくに消え去った。今は、株式を大量に保有できる層がまったく汗をかかないで資産を増やし、どん底の貧困層を涼しい目で見ている荒廃した弱肉強食の世界と化している。

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何かするにしてもどれもが手遅れ

雇用は不安定になり、給料の伸びは限定的で、高齢層が引退して生活苦に追い込まれ、貯蓄ゼロ世帯も増え、生活保護受給もどんどん増えている。少子高齢化は止まらず、年金受給者は増える一方である。

それが故に、年金財政は急激に悪化している。今や、国家予算の半分以上が社会保障費と国債費となっているのだから、これで国家財政が今後も安泰だと思う方がどうかしている。

年金は破綻しないと言っているが、年金支給開始の年齢は基本65歳に引き上げられており、さらに引き上げられる気配がある。

政府は年金を破綻させないために「受給開始年齢をどんどん後にしている」というのが現状だ。そのうち、どうにもならなくなって年金額が減らされるか、年金支給額は70歳ということになるのかもしれない。

まさか70歳と思うかも知れないが、このまま推移するとそうなってもおかしくない。厚生労働大臣は「個人の選択で年金の支給開始年を75歳程度にまで広げることができないかを検討する」と述べたこともある。

60歳で定年を迎えた人が、仮に70歳まで年金をもらえないとなると、10年は貯金を食いつぶして生きて行かなければならないことを意味している。しかし、10年も貯金を食いつぶしていれば1000万円ある人でも70歳になった頃は貯金ゼロになる。

もはや国に頼れる時代は完全に終わっている。そして、いよいよ日本は本格的に貧困者が増える事態を避けられなくなっている。全体を見れば、社会構造は貧困に向かっている。

そうであれば、もう「貧困を抜け出すにはどうすればいいか」という議論は終わったと言っても過言ではない。

財政悪化を生み出す少子高齢化の問題も、低賃金を生み出す非正規雇用の問題も、格差を生み出すグローバル化の問題も、日本人は何一つ真剣に向き合うことも、考えることも、止めることもできなかった。

今となっては、何かするにしてもどれもが手遅れに近い。そうであるならば、これからしなければならないのは、「貧困に慣れるにはどうすればいいのか」という議論ではないのか……。(written by 鈴木傾城)

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財政悪化を生み出す少子高齢化の問題も、低賃金を生み出す非正規雇用の問題も、格差を生み出すグローバル化の問題も、日本人は何一つ真剣に向き合うことも、考えることも、止めることもできなかった。今となっては、何かするにしてもどれもが手遅れに近い。そうであるならば、これからしなければならないのは、「貧困に慣れるにはどうすればいいのか」という議論ではないのか……。

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