経営者が求めるのは「誰よりも安く長時間働きます」と言ってくれる人間

経営者が求めるのは「誰よりも安く長時間働きます」と言ってくれる人間

大学を卒業しても、誰もが同じように大学を卒業していたら希少価値は減退し、「大学卒」という肩書きにはほとんど意味がなくなっていく。

特に金を払えば誰でも入れる「Fランク大学」は就職でも相手にされないと言われるくらい意味がないものと化す。

偏差値が30レベルでも入れて、大学の4年間で専門的な学問やスキルを身につけられず、ただ単に遊んで過ごすくらいの場所であると世間に思われている。それが真実かどうかはともかく、世間ではそのように受け取っている。

それでも、大卒は高卒よりもマシだという考えで誰もが大学に行こうとする。その結果、何を得るのか。借金である。大学に入るために奨学金を借りた大学生は、大学を卒業した瞬間に返済義務が発生する。

ところがFランク大学の卒業生の多くは、賃金の高い高スキルの仕事に正社員として就くことができないので、そのまま借金が地獄の苦しみになっていく。返済できなくなってしまうのである。

メディアで報道される「奨学金の返済者は約426万人、滞納者は15万人超え」というのは尋常な数字ではない。子供が支払えなくなり、連帯保証人の親も自己破産するというケースも出てきている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

「誰よりも安く長時間働きます」

大学卒という学歴が無駄になりつつあるのであるとしたら、何らかの特別な資格や技能や知識を身につければ、世の中を渡っていけるようになるのだろうか。実は、それも難しくなった。

経営者が一般の労働者に求めているのは「安い労働力」だからである。もちろん資格・技能・専門知識があればあるに越したことはないのだが、あった上で「安く働いてくれる」人がいれば、そちらを採用する。

だから、安い賃金で働く外国人が日本人よりも選ばれるわけである。

これをグローバル化と呼ぶ。すべての企業が本能的にグローバル化を求めるのは、グローバル化したら安い賃金で働いてくれる人間がいくらでも採用できるからだ。

グローバル化は陰謀ではない。ただの競争原理である。

企業は利益を生み出すために、ひたすらコスト削減に走るのだが、コストの大半は人件費なのだから、人件費を削減するのは「正義」なのである。

浮いたコストは商品の価格を下げて商品競争力を高めることにも使えるし、配当を増やして株主を引きつける資金にも使えるし、経営者の高級車購入にも使える。

いかに従業員の賃金を引き下げるか、いかに従業員を雇わないかが経営者の仕事になったのだ。だから、非正規雇用を増やして社員を減らしたり、賃金を極限まで抑えたりする動きが当たり前になる。

そう考えると、そんな時代の中で従業員がいくら資格・技能・専門知識を高めても意味がないことに気付くはずだ。まったくの無意味だとは言わないが、それをうまくやったところでたかが知れている。

経営者が求めるのは「誰よりも安く長時間働きます」と言ってくれる人間であって、「資格があるので高い賃金を下さい」という人間ではない。

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毎年必ず当たる宝くじを保有している?

格差の下の方で「生活できない層」が拡大している理由は、まさにそんなところにある。

「一生懸命に努力したら報われる」という高度成長期の労働パターンは崩壊してしまっている。これは、日本だけでなく、すべての先進国で起きている現象だ。アメリカでもEU諸国でも同じだ。

1%の富裕層が富を総取りして、99%の貧困層が搾取される構図になっていくのがグローバル経済の本質なのだ。資本主義というのは元々そういうものなのだが、それを猛スピードで収奪的にやってしまうのがグローバル経済の特徴だ。

富裕層と言えば、すでに上位は資産が10兆円レベルになっている。仮にその1000分の1の100億円レベルの富裕層であっても、貧困層にとっては信じがたいレベルである。

格差社会の今、貧困層に転落してしまった人たちにとって、生涯賃金はすでに3億円には満たなくなっている。一生働いても3億円は稼げないということだ。

ところが、100億円レベルの富裕層はその資産を3%以上の配当を出す会社の株式を保有するだけで、「寝ていても1年で入ってくる金」である。

何の努力もいらない。何の才能もいらない。何もしなくてもいい。むしろ何もしない方がいい。そうすれば、資産が3億円を稼ぐのだ。

1年間でその3億円を好き放題に使っても、翌年になるとまた棚からぼた餅の如く3億円が転がり込む。言ってみれば、100億円持っている人は、毎年必ず当たる宝くじを保有しているようなものである。

この富裕層が所有する資産は優良企業の株式であり、あるいは不動産である。

年収300万円の人間が必死で働いて生み出した利益が配当となって富裕層に転がり込み、なけなしの金から支払った家賃がそっくりそのまま富裕層のものになる。

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明らかに社会が賃金を抑制している

いつの時代でも為政者や経営者は、労働者を「生かさず殺さず」の精神で統治する。それもそうだ。自分たちがより豊かになるためには、より収奪する必要があるからだ。

現代でも基本的に為政者や経営者の発想は変わっていない。国民や従業員は「死なない程度に与えればいい」という基本方針の下で税金を取ったり、賃金を抑制したりしている。

経済が成長しているときは、取られてもインフレで賃金が増えていくのでそれが目立たないのだが、経済が成熟していくと取られる方が目立つ。

さらに経済が下り坂になっていくと、暮らせないほどの賃金しかもらえない労働と化して、「搾取」に近い状況へと追い込まれていく。しかし、当初は「食べて行けないのは自己責任」と当人の責任にされる。

年収300万円の層が膨大になっても、年収600万円の人たちも存在する。そのため、年収600万円の人たちが「年収300万円の人間がいるなんて信じられない。努力が足りないのではないか。自己責任だ」と優位に立ったつもりで嘲笑する。

年収で社会に薄いレイヤーができており、どこかのレイヤーに属している人は下のレイヤーを冷たく突き放す。

総務省統計局によると、非正規雇用者は日本では2162万人となっているのだが、その約90%は年収300万円未満である。非正規雇用者は若年層の方が多く、単身女性も3人に1人は貧困状態である。女性は高学歴でも貧困に陥りやすい。

明らかに社会が賃金を抑制していることが窺えるのに、「自己責任だ」という方がどうかしているのだが、いまだに自己責任論は止まらない。

今の社会は私たちの暮らしをこんなにも荒廃させている。だから、世界中で社会が荒廃に向かい、暴力的になり「反グローバリズム」の気運が高まっている。(written by 鈴木傾城)

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総務省統計局によると、非正規雇用者は日本では2162万人となっているのだが、その約90%は年収300万円未満である。非正規雇用者は若年層の方が多く、単身女性も3人に1人は貧困状態である。女性は高学歴でも貧困に陥りやすい。

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