現代社会に待ち受ける「5つの落とし穴」。頼れるものはどこにもない

現代社会に待ち受ける「5つの落とし穴」。頼れるものはどこにもない

生活保護受給者は月によって多少の増減はあるにせよ、長期的なトレンドを見るとずっと増え続けている。

また、生活保護受給者と同じレベルと見てもいい「年収200万円以下」のアンダークラスの存在も、ここ数年で1000万人を突破したまま一向に減らない状況になっている。いまや、働く人の約17%が「働いても豊かになれないアンダークラス」である。

しかし、政府は2019年10月に消費税の引き上げを強行しようとしている。

富裕層や中間層は2%の引き上げは何とか吸収できるかもしれない。しかし、10円20円の差で生活に苦しんでいるギリギリの層は追い込まれるのは確実だ。貧困と格差が拡大していくのは、もはや止められない動きだ。

高度成長期の日本と、貧困と格差が拡大していく今の日本は、まったく違う国になってしまっている。だから、高度成長期の日本の常識を無意識に引きずっていると完全に落とし穴に落ちる。

貧困の蔓延は、かつての日本と違う姿になった社会が生み出したものであり、人々は次々とその落とし穴に落ちているのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

現代の「落とし穴」とは?

日本社会は1990年のバブル崩壊以後、急激に変わっていった。どのように変わったのか。人々が頼りにしていたものが、頼りにならなくなっていったのだ。

時代が変わり、今まで「自分を守ってくれていたはずのもの」が、自分を守ってくれなくなっていた。ところが、人々は時代が変わったということに気付かず、まだ「自分はこれで守られるはずだ」と思い込んでいる。

その思い込みが落とし穴になっていて、足を踏み外して落ちたところが「貧困地獄」だったのである。

社会が変わったことによって生まれた現代社会の「落とし穴」は無数にあるのだが、その中で最も大きなものが5つある。以下のものだ。

(1)「国家が何とかしてくれる」という落とし穴
(2)「企業が何とかしてくれる」という落とし穴
(3)「学歴が何とかしてくれる」という落とし穴
(4)「資格が何とかしてくれる」という落とし穴
(5)「家族が何とかしてくれる」という落とし穴

国民が困ったら国家が助けてくれるのだろうか。日本がまだ成長期で国家予算も潤沢にあった1980年代までは、確かに助けてくれただろう。

しかし、社会保障費の増大で財政がパンク寸前になって、国民に対して「長生きしたければ2000万円を用意しろ」と言う今の国家が、国民を助ける余裕があると思うだろうか。

社会保障費の増大に苦しむ国は何をしようとしているのか。消費税ばかりに目が向いているのだが、税金はそれだけではないのだ。

所得税を取り、住民税を取り、固定資産税を取り、国民年金を取り、介護保険料を取り、自動車税を取り、ガソリン税を取り、酒税を取り、タバコ税を取り、贈与税を取り、相続税を取って、ひたすら国民からカネを毟り取るようになっている。

これだけ税金を取っても年金を払いたくない政府は、年金を薄く引き下げながら、受給年齢をどんどん後に後に引き延ばそうとしている。

「国家が何とかしてくれる」と思い込むのは危険だ。「何とかしてくれる」どころか、経済的に私たちの足を引っぱる元凶になりつつある。

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「企業が何とかしてくれる」は思い込み

「国家が何とかしてくれる」と思い込んだら、思いきり貧困の落とし穴に堕ちる。頼りにならないものを頼りにしても仕方がない。

では、「企業」が何とかしてくれるのか。いや、企業が何とかしてくれていたのもバブル崩壊以前の話だ。

1990年代のバブル崩壊で日本企業は土地という担保の極度の目減りで資産に大ダメージを受け、さらに1989年から取り入れられた消費税によって消費までもが減退して、企業体力は急激に消えていくようになった。

それが顕著になったのが1990年代後半から2000年代初頭である。折しもグローバル化が急激に進むようになり、企業は激甚化していく競争に打ち勝つためにコスト削減と経営効率化が求められるようになっていった。

だから企業は正社員を減らし、非正規雇用を増やし、給料を削減し、年功序列も終身雇用も止める方向に向かったのだ。さらにこれからは、雇用を削減するためのイノベーションが企業に入り込む。

業務のネットワーク化は中間管理職を無用にし、ウェブサイトと検索エンジンが営業マンとなり、人工知能がアフターサービスを担当する。

今後は企業内のルーチンワークのみならず、企業戦略や分析まで人工知能が関わるようになっていくのは必然である。労働者はロボットに置き換わり、雇用はどんどん減っていく。

正社員は事あるごとに切り捨てられていく。企業はどんどん身軽になっていくのだが、だからこそ「企業が何とかしてくれる」と思ったらハシゴを外されるのである。

トヨタも経団連も「終身雇用は維持できそうにない」と公然と言うようになってきている。終身雇用が維持できないというのは、要するに時期が来たら従業員を切り捨て居るということに他ならない。

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「家族」にも頼れない時代になった

企業がコスト削減のために人を抱えないようになっており、そのための技術革新も急激に進んでいる。そこらの大学に入って「大学卒」の学歴を持ったところで意味がない。

名門大学に入って官僚になったり一流企業に就職する一部のエリートのコースはまだ意味がある。

しかし、普通の大学かそれ以下の大学に入って普通の企業に勤めるような生き方は、将来をまったく保障してくれない。もう大学卒みたいな「学歴」に頼って生きるのは、賞味期限が切れているのである。

まして、莫大な奨学金という名の借金を背負って大学を卒業するという行為にはほとんど意味がない。「学歴が何とかしてくれる」という無意識が「落とし穴」なのだ。

ここに気付かない人が大学を卒業して「この学歴も借金も何にも意味がなかった」と愕然としながら、細々と借金返済の人生を送ることになるのだ。

まだあどけない二十歳前後の若者に、数百万も借金を背負わせる親はどうかしているし、こんな状況に突き落とす高校の教師も大学の教授も恥を知るべきだ。

教師は学生の将来を真摯に考えるのが仕事ではないのか。それとも、教え子に借金を背負わせるのが仕事なのか。若者を借金地獄に突き落とす残酷な仕打ちはいい加減にやめるべきだ。

学歴が意味をなくしているのと同時に、もうひとつ忘れてはいけないことがある。

企業が終身雇用を捨てて、いつでも従業員を切れる態勢にしているのだから、学歴と共に「資格」に頼るのもまた意味がなくなってきているのだ。

世の中には夥しい資格があるのだが「メシが食える資格」は限られており、ほとんどの資格は自己満足以外の何の役にも立たないものとなる。「資格を取れば何とかなる」というのも、落とし穴なのである。

資格で儲かるのは、資格を取れと煽って教材を売りつけている業者だと思えば間違いない。

世の中の何にも頼るものがないのであれば「家族」に頼るしかないのか。まさか。個人主義を取り入れ、家族の絆も弱まっている現代の日本では、もう「家族」も頼りにならなくなっているのだ。

親に仕送りもしない、親に会いにも行かない子供たちが増えているが、これが突き進めば当然だが親の方も「子供がどうなろうと知らない」という考え方になる。「家族が何とかしてくれる」というのも、落とし穴になる。

国家、企業、資格、学歴、家族……。誰も守ってくれなくなった。この残酷な事実を認識するのは重要だ。こんな世界で私たちは生きている。(written by 鈴木傾城)

国家、企業、資格、学歴、家族……。誰も守ってくれなくなった。この残酷な事実を認識するのは重要だ。こんな世界で私たちは生きている。

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