この会談は「北朝鮮をどう崩壊させるのか」という点が最重要課題である。日本の首相とアメリカの大統領の見ている方向はひとつ。
「北朝鮮を崩壊させること」である。
ドナルド・トランプ大統領は北朝鮮の金正恩と会談する意向を見せている。
どこで会談するのか、本当に北朝鮮は出てくるのか、まだ事態は流動的だ。しかし、ドナルド・トランプ大統領はここで朝鮮半島の非核化と共に日本人拉致問題を北朝鮮に突きつけると共同記者会見ではっきりと明言した。
日本人拉致問題については、安倍政権が情熱と熱意を持ってトランプ大統領を説得したことで、トランプ大統領自身も強く考えるようになっている。
安倍首相は北朝鮮問題とケリをつけようとしている。それを望んでいる。そして、トランプ大統領も歴代大統領がダラダラと生かしてきた北朝鮮を自分が何とかケリをつけたいと望んでいる。だから、両首脳は北朝鮮を追い込んでいる。(鈴木傾城)
突如として今までの状況が許さなくなった北朝鮮
北朝鮮は青ざめている。今までこの国は周辺国を好きに恫喝し、ミサイルを飛ばし、他国の人間を拉致し、何かあったら逆ギレして殻に閉じこもって生きながらえてきた。
しかしトランプ大統領が登場してから、突如として今までの状況が許さなくなってきている。
北朝鮮が核開発に邁進していたのも、アメリカに届く核兵器を所有することによって一方的に攻撃されて体制崩壊させられるのを回避しようと考えたからだ。体制の維持のために北朝鮮は無理に無理を重ねてきた。
しかし今、北朝鮮は核開発によって体制の存続ができるどころか、むしろアメリカに睨まれて体制崩壊させられそうな目に遭っている。
北朝鮮の苦境は経済制裁で石油も手に入らなくなり、オンボロ船で日本に上陸して家電製品などを盗み回っていることや、沖で石油を瀬取りしていることを見ても分かる。
このまま経済封鎖されたまま持久戦になると、北朝鮮は足元から崩れ去っていくのは時間の問題にまで到達している。
そのため、金正恩は中国にまで出向いて習近平と会談して、その中で「今の体制を維持させてくれるのであれば非核化してもいい」と言うようになっている。
これは事実上の「命乞い」である。
口では勇ましいことを言いながら、裏では必死で命乞いをするしかないのが今の北朝鮮の現実だ。金正恩が命乞いをしているというのはすでにトランプ大統領も知っている。
すでに勝負はあったとトランプ大統領は見ている。だからトランプ大統領は会談をすると宣言し、北朝鮮の指導者がアメリカに屈服した姿を全世界に放映させるつもりでいるのだ。
しかし、北朝鮮は今まで窮地に陥ったら会談して何かを約束し、時期がきたら約束を反故にするというやり方で生きながらえてきた。
北朝鮮に何度も煮え湯を飲まされ続けてきた日本
北朝鮮が今回も「何かを約束して後でそれを破る」という戦略を採ったとしても不思議ではない。それを最もよく知っているのは、北朝鮮に何度も煮え湯を飲まされ続けてきた日本だ。
「北朝鮮という国は約束を守らない」という気質であることは日本人は骨の髄まで染みて知っている。約束は守らないのに、自分たちの主張はゴリ押しする。そういう国なのである。
だから、安倍首相はそれをトランプ大統領に直接伝える必要があったし、トランプ大統領が北朝鮮の戦略に飲まれないように強く警鐘を鳴らす必要もあった。
2018年4月17日の日米首脳会談はそういった意味で非常に重要なものであり、そのための会談でもあったのだ。共同記者会見の中で安倍首相は北朝鮮がいかに裏切る国であるのかを話し、その点では「一致した」と述べている。
マスコミは報じないだろうが、北朝鮮が裏切りの国であることを安倍首相はきちんと話している。このように言っている。
『1994年の枠組み合意のときも、2005年の六者による合意のときも、北朝鮮は核開発の放棄にコミットした。しかし、その約束は反故にされた。国際社会による対話に向けた努力はことごとく、核・ミサイル開発のための時間稼ぎに利用されました』
『そうした教訓の上に日米両国は、国際社会とともに北朝鮮に対して核兵器をはじめとした大量破壊兵器およびあらゆる弾道ミサイルの完全、検証可能かつ、不可逆的な方法での廃棄を求めていく』
会談はトランプ大統領の別荘「マールアラーゴ」で行われていた。
この会談では最初にトランプ大統領と安倍首相の2人で話されているのだが、その後にトランプ大統領は重要な人物を会談の場に入れている。ジョン・ボルトン大統領補佐官である。
強硬派でまわりを固めているトランプ大統領
ボルトン大統領補佐官は現在のトランプ政権の最も重要なキーマンのひとりである。
4月に辞任したマクマスター補佐官の後任としてトランプ政権に入ったばかりなのだが、北朝鮮との会談が決まった時点で、トランプ大統領はボルトン大統領補佐官を重要な地位に引き上げているのだ。
ボルトン大統領補佐官は現在のアメリカで、北朝鮮を最も正確な目で見ている政治家のひとりである。金正恩はアメリカとの会談を提示したのを見てボルトン大統領補佐官は何と言ったのか。テレビのインタビューでこのように述べていた。
「北朝鮮の申し出は核兵器を開発する時間を稼ぐ単なる策略だ」
北朝鮮という国は約束を守らないというのをボルトン大統領補佐官は知っているのである。
トランプ大統領は、北朝鮮は約束を守らない国であるというのを知らしめにいった安倍首相と緊密に会談を行った。さらに同じことを主張しているボルトン大統領補佐官を重用している。
そうであれば、トランプ大統領はすでに北朝鮮と会談をしても時間稼ぎされるだけという事実を知っている。知っていて会談をする。
ところで、トランプ大統領はすでに4月の始め頃にマイク・ポンペオ氏を金正恩と会談させている。
マイク・ポンペオ氏は現在は国務長官の地位にあるが、このマイク・ポンペオ氏もまた北朝鮮を先制攻撃すべきだと主張していた人物だ。
そして、現在のCIA長官は誰か。ジーナ・ハスペル氏である。
ジーナ・ハスペル氏はCIAの叩き上げなのだが、この人物は長らく拷問の専門家としてキャリアを積んできた人物だった。トランプ大統領が気に入ってCIA長官に据えた。
そして、このジーナ・ハスペル氏もまた「金正恩は殺害すべき」と主張する。
「北朝鮮は信用すべきではない、北朝鮮を攻撃すべき、金正恩を殺害すべき」と主張する強硬派を取り揃えているのが今のトランプ大統領である。
そのトランプ大統領が会談を望んでいるというのだから、状況から見るとこのように考える人がいても不思議ではない。
「すでにトランプ大統領は北朝鮮を崩壊させる決意をしていて、会談は北朝鮮が飲めない無理難題を押しつけてわざと破綻させるつもりでいるのではないか」(written by 鈴木傾城)
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訪米した安倍首相は共同記者会見の中ではっきりと北朝鮮は信用に値する国ではないと明言している。現在のトランプ大統領を固める重要な閣僚たちも同じことを主張している。トランプ大統領自身も北朝鮮を信用していない。北朝鮮は完全に追い詰められた状況にある。https://t.co/GKnyocsYob— 鈴木傾城 (@keiseisuzuki) 2018年4月19日
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