大混乱していく金融市場の動乱で、読みを誤らないために知るべきこと

大混乱していく金融市場の動乱で、読みを誤らないために知るべきこと

ドナルド・トランプ大統領が中国に仕掛けた貿易戦争は株式市場を混乱させる要素となっている。中国の株式市場はずるずると下落を続け、中国の通貨である人民元もまた急落を余儀なくされている。

トランプ大統領は「中国はアメリカの知的財産権を侵害している」と公然と批判し、さらに「中国はウイグルを弾圧している」と攻撃した。

さらに「中国人留学生は全員スパイ」と非公式の場で話し、ファーウェイやZTEのような中国ベンダーも締め出している。中国が「民主主義陣営の敵」であることを、トランプ大統領はまったく隠していない。

政治的な動きによって中国が動揺し、そのつど株式市場が撹乱される動きは、これからも続くことになる。

それに加えて、トルコの通貨リラの暴落、そしてそれに端を発した新興国のつれ安、さらに中国株の下落、テンセントの13年ぶりの減益によるハイテク企業株の投げ売りが起きて、株式市場が複合的に波乱要素を抱えている。

世界の株式市場は平穏ではない。場合によっては、全世界を巻き込んだ大きなショックが起きたとしても誰も驚かないところにまで来ている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

瓦解寸前になってしまっているEU(欧州連合)

アメリカも中国も世界の金融市場では巨大なプレイヤーであり、この両者が貿易戦争で激突するとなると、まったく何の影響もないというのはありえない。

いろんな意味で、中国に関わっている国も一緒に動揺することになる。場合によっては、中国と共に景気後退や政情不安に巻き込まれる。

たとえば、ドイツのメルケル政権は中国と深く関わってしまったが、中国がこければドイツもこける。

メルケル首相は、ただでさえ移民・難民を無制限に国内流入させた愚策によって求心力を失ってしまっている。これで中国に深入りしたことによる弊害を追及されると、政権運営はより不安定になる。

ドイツ経済が揺らぐと、もはや瓦解寸前になってしまっているEU(欧州連合)もまた根幹から揺らぐ。

EUでは、もはや保守派の台頭がニュースにもならないほど「当たり前の現象」になっている。移民・難民に寛容であるはずのスウェーデンですらも「移民反対」の政党が躍進するという有様だ。

ヨーロッパのそれぞれの国の人々は、EUでアメリカと並ぶような経済ブロックを作るというグローバル化の理想で移民・難民を大量に受け入れてきた。

問題が起きても、経済発展で豊かになれるはずだと我慢してきた。それなのに経済が撃沈して、移民・難民の問題ばかり押し付けられるのであれば、ヨーロッパの全国民がEU脱退を望むようになっても当然だ。

中南米はブラジルもベネズエラもメキシコも、石油価格の暴落で経済的な停滞を余儀なくされたままであり、特にベネズエラはもはや国家の体をなしていない。

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有事のドル買いとリパトリエーションが起きる

こうした混乱が続いていくと、必ず治安も乱れるようになるので、暴力があちこちで発生し、様々な有事が起きる可能性が高まる。暴動やテロが起き、場合によっては国家のデフォルトや政府転覆もあり得る。

そうなったら世界はどうなるのか。その時、何もしなくてもアメリカの「ひとり勝ち」が起きる。

なぜそうなるのかというと、有事のドル買いとリパトリエーションが起きるからだ。

1974年に南ベトナムが崩壊する際、あるいは1998年にロシアが国家破綻する際、多くの国民は自国通貨を必死になってドルに交換しようともがき苦しんでいた姿を私たちは目撃している。これが「有事のドル買い」である。

たとえば、私たちがユーロ資産を持っていたとする。今後ユーロが分裂の危機に直面するようになると、欧州の多くの人は世界で一番安全な資産に変えようともがき回るはずだ。

あるいは、中国で政治的混乱が避けられないとなったとき、多くの中国人が自国通貨である元よりも、ドルの方が信頼できるといっせいにドルに転換しようとする。ここでもドル買いが発生する。

リパトリエーションとは、本国への資金還流だ。

多くの投資家はユーロが危ないと思えば、ユーロ圏から資金を引き上げてアメリカに資金を戻そうとする。

ロシア、ブラジル、中国、南アフリカ、あるいは東南アジア諸国に出回っていた資金は、もはやグローバル経済が混乱して成長が難しいとなると、いっせいに「アメリカに資金を戻す」動きが加速するのである。

実際、このような動きが起きたからこそ、現在の新興国は外貨準備金が急激に減少し、中国でも「ドル手に入らない」状況になっていく。

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世界が混乱してくれたほうが当面は都合が良い

今後、世界が混乱し、投資家が「新興国もユーロも中南米も危険だ」と危機感を持てば持つほど、有事のドル買いとリパトリエーションが発生しやすい状況になる。

逆に言えば、アメリカは世界経済が崩壊しない程度に世界が混乱してくれたほうが当面は都合が良い。

国際問題がアメリカの内政問題の目くらましになる。世界の危機感が煽られれば煽られるほど、資金がアメリカに環流して、アメリカは利することになっていく。

うがった見方をすれば、アメリカは今後の政策として世界の混乱と危機を煽り、有事のドル買いとリパトリエーションを推進させたとしても不思議ではない。

だから、世界の混乱がさらにひどいものになっていくと、経済に関しては注意が必要だ。

経済混乱が世界中のあちこちに吹き荒れるようになっていけば、逆にそれが原因でアメリカの「ひとり勝ち」になるという奇妙な状況が発生することになるからだ。

現に、今もそうなっている。現在、世界で最も安心できる金融市場はアメリカ一国である。これから世界が混乱すれば、もっとそうなる。

もちろん、有事のドル買いもリパトリエーションも限度があるし、アメリカもまたグローバル経済の減速に大きな悪影響を受けるのは避けられない。

これを乗り越えるには、景気が上向かなければならず、そのためには経済成長が必要なのである。しかし、そんな中でもやはり最後に資金が辿り着くのは、アメリカであるという事実には変わりがない。

逆に言えば、世界が混乱するのであれば何を持たなければならないのか、これで分かるはずだ。持つべきは、いつでも「ドル資産」なのである。

現在の資本主義の総本山がアメリカだという現実はよく認識しておくべきだ。(written by 鈴木傾城)

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