日本も早く「中国にかかわるリスク」を自覚して中国切り捨てを進めた方がいい

日本も早く「中国にかかわるリスク」を自覚して中国切り捨てを進めた方がいい

日本の政治家・事業家は、世の中がどう動いているのかさっぱり分かっていなくて、いまだに中国のマネートラップやらハニートラップに引っかかって媚中になる。こんな状態では「日本は中国寄り」だと世界に思われる。下手したら中国と一緒に制裁されることもあり得る。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

偵察気球を飛ばしてアメリカの上空を侵犯する中国の横暴

中国が偵察気球を飛ばしてアメリカの上空を侵犯し、これに激怒したアメリカが最新鋭ステルス戦闘機で撃墜するという出来事があった。

当初、中国はこれを自国のものであると認めないでシラを切って逃れようとしたが、それが不可能だと分かると「民間の気象研究用飛行船」と言ってはぐらかそうとした。そして「双方が冷静な対応をすべき」と上から目線でアメリカを諌めようとする。

しかし、アメリカは「民間の気象研究用飛行船」「誤って入った」みたいな言い訳など見向きもせず、断固とした決意で撃墜させた。そこで中国は一転して「過度な反応だ」「強烈な不満と抗議」を表明して逆ギレし、さらには「対抗措置の可能性」を口走っている。

実は、この偵察気球は日本でも数年前に観察されていた。

しかし日本政府はこれが中国からの飛来物であることを知っていながら、「中国から来たと言ったら中国様に怒られる」とか思ったのか、「正体が分からない」「何だか分からない」と言い逃れし、あげくの果てには防衛大臣の河野太郎が「気球に聞いて下さい」とか言い出す始末だった。

もしこの偵察気球が毒ガスやら細菌兵器なんかを積んでいるのであれば大きな国防の危機となるわけで、防衛大臣なら「気球に聞いて下さい」みたいな無責任なことは絶対に言えないはずなのだ。

しかし、日本では防衛をネタに増税はするのだが本当に防衛するような気概はまったくないので偵察気球ひとつですらも対処できないのが現実である。

日本政府がいかに中国に媚びへつらって対応できていないのかを示す情けない事例のひとつでもあるが、アメリカはまったくそうではない。中国共産党政府がいかに危険な集団であるのかを理解しており、いまやグローバル経済から中国をいかに排除するのかに焦点を移している。

アメリカは株式市場からも中国企業を排除しているし、半導体市場からも中国を締め出し、個人情報を抜きまくるTikTokのようなアプリの排除も考えている。アメリカは本気なのである。

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中国への攻撃はアメリカの超党派の総意

中国経済はここ2年のゼロコロナ政策で大きなダメージを受けた。しかし、ゼロコロナの問題がなくても2019年の段階で中国は行き詰まっていた。

トランプ元大統領に貿易戦争を仕掛けられて、明確にグローバル経済から切り離されようとしていたからだ。この流れはバイデン大統領の時代になって緩和されるのかと思いきや、まったくそうはならなかった。

アメリカはすでに共和党だろうが民主党だろうが関係なく「中国はアメリカにとって危険な存在だ」というコンセンサスができていたのである。「中国は危険だ。狡猾だ。締め上げろ」というのは、共和党・民主党問わず超党派の議員が発言している。

中国は自力でイノベーションを生み出して発展した国ではない。他国から知財や技術を合法非合法問わず、ありとあらゆる手口で盗み取って「自力発展した」と自画自賛しているインチキ国家である。

中国が経済発展したら民主化すると考えて1990年代から破格の待遇で経済大国化への道を推し進めてきたアメリカも、中国が民主化することはないと気づいてから、中国共産党政権を公然と見放すようになっている。

オバマ政権は中国に融和的だった。ところがそのオバマ政権も2015年あたりから距離を取り始めるようになっていた。あまりにも知的財産の侵害があからさまで露骨だったからだ。親中のオバマ政権も不快感を覚えるほどだったのだ。

そして、トランプ政権が誕生してから中国への批判と拒絶と攻撃はどんどん先鋭化するようになった。ファーウェイ等の中国ハイテク企業に対する締め付けも、TikTokに対する締め付けも、半導体の禁輸措置も、アメリカの国策として進められている。

そのため、中国は今までのように他国から技術・知財を盗んで経済発展するビジネスモデルは取れなくなりつつあり、そこにゼロコロナ政策も重なって中国経済は正念場に立たされるようになっていったのだった。

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今回の偵察気球の問題は中国の思惑をすべてぶち壊した

中国のゼロコロナ政策は失敗した。これ以上ゼロコロナ政策なんかしても無駄であると気づいた中国政府は、ここで一気に政策を転換して、国中をコロナまみれにしながらも経済を活性化させる方向に転換している。

経済を活性化させてGDP成長率を上げるためには、どうしてもグローバル経済に復帰する必要がある。そのために中国政府はどうしてもアメリカを懐柔して厳しい締め付けを緩和させる方向に持っていく必要があった。

アメリカは明確に中国を敵国であると認定し、中国経済をグローバル経済とデカップリング(分離)させようと動いている。

中国としてはこれを阻止しないことには今後の経済発展は望めない。アメリカが本気で中国の排除に成功すると、今後の中国は経済発展どころか次世代は再び「アジアの貧国」に逆戻りする可能性がある。

そこで中国はこれまでの無駄に好戦的な戦狼外交を見直して、アメリカにすり寄りつつ、グローバル経済から締め出されないように巻き返しを進めていた。それが2023年の習近平の戦略だったように見える。

しかし、今回の偵察気球の問題はこれをすべてぶち壊した。

中国は合法非合法問わず、ありとあらゆる方法で各国の国防情報を手に入れて有利に立とうと画策する工作国家であるが、偵察気球も数ある工作活動のひとつであるのは明確だ。

日本では秋田市上空でこの偵察気球が確認されたのは、米軍三沢基地やイージス・アショアの建設予定地の秋田新屋演習場上空をスパイするためであったのは誰が考えても分かる。明らかに軍事機密を盗み取ろうとする工作活動なのである。

日本政府はまるっきりの無防備で偵察気球が領空侵犯しても「気球に聞いて下さい」と他人事の国だが、アメリカはそうではなかった。

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こんな状態では「日本は中国寄り」だと思われてしまう

中国の手段を選ばない工作体質は変わらない。偵察気球の問題が忘れ去られても、中国の違法で傲慢な工作活動はこれからも次々と発覚していくことになるだろう。そして、中国に対する拒絶心や警戒心はむしろ高まったまま固定化する。

とすれば、欧米グローバル経済の中国排除はもっと本格的に行われていき、中国を締め上げることになると予測できる。

中国はこの20年近くでグローバル経済に深く組み込まれて強固なサプライチェーンを構築した。そのため、中国のサプライチェーンが混乱したら全世界が甚大な悪影響を与えることになる。

だから欧米も中国の排除が手ぬるくなり、徹底的なデカップリングも遅々として進まなかったのだが、中国共産党政権の非合法ぶりはもはや看過できないほどのレベルに達している。これからが「本気の中国切り捨て」になる。

今回、撃ち落とされた偵察気球も、その情報収集の中身が徹底的に精査される。構成部品が徹底的に洗い出され、アメリカや同盟国の部品が使われていないかを調査されて、禁輸リストに掲載されることになる。

もう中国を信頼している国はほとんどない。今後の方向性として、世界中で「中国切り捨て」が進められていく。

とすれば、日本政府も日本企業も日本の投資家も「中国には絶対にかかわるべきではない」という姿勢を持つ必要がある。中国にかかわれば、自らもとばっちりを受けることになるのだから当然だ。

日本の政治家・事業家は、世の中がどう動いているのかさっぱり分かっていなくて、いまだに中国のマネートラップやらハニートラップに引っかかって媚中になる。あまりにも情けない。

こんな状態では「日本は中国寄り」だと世界に思われる。下手したら中国と一緒に制裁されることもあり得る。日本も早く「中国にかかわるリスク」を自覚し、意図的に中国切り捨てを進めた方がいい。中国には未来はないのだから……。

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