数ヶ月後、全世界は激しい暴動や自殺が多発する殺伐とした光景になるのか?

数ヶ月後、全世界は激しい暴動や自殺が多発する殺伐とした光景になるのか?

政府もあまりアンダークラスの存在に触れない。こうした存在が増えたという統計や事実や社会現象は「不都合な真実」だからである。あまりそこに光が当たると、それが政権批判の種になるので政府としてはなるべく触れたくない。そのため、政府は往々にして大企業の正社員の賃金が上がったとか、株価が上がったとか、そういったアンダークラスに関係のないところに着目し、経済対策がうまくいっていることをアピールする。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「景気の調整弁」として大量に切り捨てられる

1年を通じて働いているのに、平均年収が186万円程度の人たちを社会は「アンダークラス」と呼ぶ。すでに、アンダークラスは日本にも930万人ものボリュームで存在しており、社会の一大勢力となってきている。

当初アメリカで見られたこのアンダークラスは、日本でも「非正規雇用」が拡大したことによって、小泉政権以後どんどん膨れ上がっていくことになった。

2002年から見ても非正規雇用者の増加はまったく止まっておらず、第二次安倍政権が始まった2013年以後も増加する一方だ。

もちろんこれからも増える。

それは企業の立場から見れば分かる。非正規雇用で人が安く雇える仕組みができたのに、なぜわざわざ正社員を増やしてコストを上げなければならないのか。

正社員を減らせば減らすほど非正規雇用で人が安く雇えるようになって、しかも景気が悪くなればいつでもリストラできるのだから、非正規雇用という仕組みを企業が自分から捨てるのはあり得ない。

そして、2020年4月。

新型コロナウイルスで経済が大ダメージを受けている今、企業はこの「切り捨てる」ためのシステムを次々と発動させている。

非正規雇用は景気が悪化したら「いつでも切り捨てられる」便利な存在として用意されたものだから、真っ先に切り捨てられるのは避けられない。アンダークラスは、「景気の調整弁」として大量に切り捨てられることになる。

【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)

資本主義なのに、資本を増やす道が断たれている

企業の経営者と株主は、企業がコストを削減してその分を利益として計上すれば自分たちが儲かる。彼らは利益を吸い上げ、どんどん金持ちになっていく。企業が内部留保した利益にアクセスできるからである。

逆に非正規雇用者は自分たちの賃金が引き下げられ、最後には「使い捨て」されるので、いずれはアンダークラスになる。

もっとも現代は職業選択の自由があるのだから、非正規雇用者も起業するか経営者になるか株主になればいいと考える人もいるのだが、現実を見るとそのどれも望み薄だ。誰もが資本主義的に生きているわけではないし、誰もが資本主義に有利なキャリアを歩めるわけではない。

人間の生き方は多様なので、人間社会は多様な人たちによって豊かな文化が育まれている。すべて「カネ」に集約する考え方は傲慢でしかない。だから、資本主義的な生き方をしない人がいても当然なのだ。

しかし、今はそうした人たちを低賃金で使い捨てする社会になっている。彼らの平均年収186万円かそれ以下なので、生活だけでも精一杯になっている。

日本社会の底辺に位置する人たちは、最初から資本主義の埒外に蹴落とされていて、絶望的なまでに厳しい社会を生きなければならなくなっている。この厳しい世界が生み出すのが、人生の不安定化である。

仕事は安定しない。企業が景気が悪いと思えば「雇い止め」するので、自分の都合とは関係なく頻繁に仕事がなくなる。そして「雇い止め」されたら、すぐに次の仕事が見付かるわけでもない。

この不安定化は外部からもたらされているので、自分ではどうしようもない状況であると言える。仕事が安定しないのだから、当然のことながら賃金も安定しない。賃金が減って生活が安定するわけがない。貧困化すると、人生の不安定化は極度に増す。

【ここでしか読めない!】『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』のバックナンバーの購入はこちらから。

アンダークラスはいつまで経っても浮かばれない

賃金減少のショックを緩和するのが貯金だ。しかし、常にギリギリの生活を強いられていると、その肝心な貯金ができない。できたとしてもわずかな額でしかない。

所得も低く雇用が不安定な立場にある人こそ、本当は「何かあったときのため」に必死で貯金をしなければならない。ところが、その層に貯金がない。これも不安定化を増大させる。

では、雇い止めされて賃金がもらえず貯金も消えたら、アンダークラスはいったいどのように危機をしのげばいいのか。そこに出てくるのがキャッシング(借金)である。

クレジットカードを使うにしろ、消費者金融を使うにしろ、金利は驚くほど高い。貯金しても0.02%くらいしか金利がつかないのに借金をすると途端に11%だとか15%の金利を毟り取っていくのが金融機関だ。

こんなところで金を借りたら、以後は金融機関の奴隷のようになってしまうしかない。働いても働いてもわずかな賃金しかもらえず、その賃金を今度は金融機関にごっそりと毟り取られていくのである。

これで、生活の不安定化はさらに増す。

アンダークラスは、それでも社会に理解されたり保護されることはない。むしろ社会や政府から冷たい扱いを受けることの方が多い。アンダークラスは企業から搾取されて使い捨てされている側なのに、なぜか社会からは「努力が足りない」「自業自得だ」と罵られる。

政府もあまりアンダークラスの存在に触れない。こうした存在が増えたという統計や事実や社会現象は「不都合な真実」だからである。あまりそこに光が当たると、それが政権批判の種になるので政府としてはなるべく触れたくない。

そのため、政府は往々にして大企業の正社員の賃金が上がったとか、株価が上がったとか、そういったアンダークラスに関係のないところに着目し、経済対策がうまくいっていることをアピールする。

アンダークラスはいつまで経っても浮かばれない。そうした立場もまた、アンダークラスの生活を不安定化させる。

ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』

不安定化が極限まで行き着くと、どうなるのか?

そんな不安定化した生活を強いられると、絶望や自暴自棄や慢性的なストレスや精神疲労に追い込まれても仕方がない。心も身体も壊れやすくなる。鬱病に追い込まれたりすると、もはや生活破綻を避けられない状態となる。

アンダークラスの生活の極度の不安定化は、絶望しか生み出さず、それが社会の底辺に渦巻く閉塞感となっている。では、その底辺の人々の極度の不安定化と閉塞感は何を生み出すのか。

それは、いち早くアンダークラスの増大を生み出した国家であるアメリカを見れば分かる。

アメリカでは2000年代の金融機関の壮大なマネーゲームで格差が広がり、2008年9月15日のリーマン・ショックで「大きすぎる銀行は潰せない」として国民の税金で金融機関を救済した。

これ以後、アメリカでは「ウォール街を占拠せよ」運動が広がり、「1%の金持ちとそれ以外の99%」の分断が国を揺るがすようになった。

やがて反グローバル化の声が大きくなり、グローバル化を擁護するマスコミに激しい批判がインターネットで繰り広げられ、それこそが泡沫候補だったはずのドナルド・トランプを大統領に押し上げた原動力となったのだ。

これらの動きはすべて「底辺の人々の極度の不安定化と閉塞感」の爆発という根源的なもので一直線につながっている。つまり、「底辺層の不安定化は、社会システムそのものを不安定化させる」のである。

新型コロナウイルスのパンデミックで全世界が一斉に未曾有の景気悪化に直面している今、私たちは社会の底辺にいる人たちが生きるか死ぬかの瀬戸際にまで追い込まれていることを注意を払わなければならない。

不安定化が極限に向かおうとしているのだ。

数ヶ月後、全世界は「激しい暴動」「自殺」が多発する殺伐とした光景になるのが私には見える。

『雇用身分社会(森岡 孝二)』

鈴木傾城のDarknessメルマガ編

CTA-IMAGE 有料メルマガ「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」では、投資・経済・金融の話をより深く追求して書いています。弱肉強食の資本主義の中で、自分で自分を助けるための手法を考えていきたい方、鈴木傾城の文章を継続的に触れたい方は、どうぞご登録ください。

貧困カテゴリの最新記事