貯金がなかったり借金がある人たちが、家賃を滞納して路頭に迷う時代になる

貯金がなかったり借金がある人たちが、家賃を滞納して路頭に迷う時代になる

飲食店・外食産業は労働集約型産業である。ここが巨大なダメージを受けていることから多くの雇用者が路頭に迷う。さらに、もうひとつの労働集約型産業である建設業でも建設作業そのものが停止してしまったところも出てきた。これによって下請けや孫請けやひ孫受けすべての業者が経済危機に直面することになる。工事が止まると労働者はたちまち干上がる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「住む場所を失った人」「失う恐れがある人」

厚生労働省は2009年10月に「住宅手当緊急特別措置事業」というものを開始していたのだが、これは「住む場所を失った人」「失う恐れがある人」を支援するための特別な救済措置だった。

賃貸住宅の家賃上限4万円を住宅手当という形で支給するという事業で6ヶ月まで支給支援があった。

ところで、なぜ2009年10月だったのか。それは2008年9月15日にリーマンショックが発生して経済が混乱し、多くの経済的弱者が窮地に落ちて家賃の支払いができず、立ち退きや住居喪失で混乱が生まれていたからである。

2000年代に入ってから非正規雇用者は急増しており、低賃金で昇進もなく失職しやすい社会的弱者が増え続けている。いまや就労者の4割近く、2165万人が非正規雇用者になっている。

そして、非正規雇用者の中の約930万人は平均年収186万円以下で社会の底辺から這い上がることのできないアンダークラス(貧困層)であり、そのどん底の人たちはすでにネットカフェなどに寝泊まり歩く「住居喪失不安定就労者」である。

社会の底辺では、すでに「住む場所を失った人」「失う恐れがある人」だらけになっており、政府としても無視できない状況になっていたということだ。しかし、その後も非正規雇用者は一貫して増えており、状況は悪化していくばかりだ。

そんな状況の中、2020年に中国発コロナウイルスがパンデミックを引き起こし、グローバル経済を一気に縮小させた。

そして、これから何が起こるのか?

リーマンショックでも「住む場所を失った人」「失う恐れがある人」が続出していたのであれば、リーマンショック以上の戦後最悪の不況が襲いかかっている今、もっとひどい光景が目の前に現れることになるのは避けられない。

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「仕事を失った、仕事が見つからない、食べていけない」

中国発コロナウイルスによる感染拡大は日本でも止まらない。

日本政府は対応に後手後手となったので北海道・東京・名古屋・大阪の主要都市で感染がとめどなく広がっていった。

いよいよ政府は4月7日に緊急事態宣言を発令し、5月6日まで東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7つの都府県の経済活動を自粛するところにまで到達し、さらに4月16日には対象地域を全国に拡大することを正式に決めた。

これによって日本の各産業が広範囲に渡って悪影響を受けて、非正規雇用者のリストラ、雇い止め、請負の停止などが発生している。それだけでなく、中小企業・小規模事業者の倒産や事業停止が相次いでいる。

最も打撃を受けているのは飲食店経営、ホテル・民泊業、観光業なのだが、それ以外にも卸売業、小売業、製造業、建設業などが経営危機に直面している。

飲食店・外食産業は労働集約型産業である。ここが巨大なダメージを受けていることから多くの雇用者が路頭に迷う。

さらに、もうひとつの労働集約型産業である建設業でも建設作業そのものが停止してしまったところも出てきた。これによって下請けや孫請けやひ孫受けすべての業者が経済危機に直面することになる。工事が止まると労働者はたちまち干上がるのだ。

雇い止めに関しては3月末ですでに発生しており、各種相談所では「仕事を失った、仕事が見つからない、食べていけない」という悲鳴のような電話が止まらなかった。

4月はさらに状況が悪化しているので、いよいよ失職や給料減で追い込まれた人たちが家賃を滞納するフェーズに入っていく。

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私たちは「戦後最悪の不況」に向き合う必要がある

非正規雇用者は次々とリストラされている。あるいは雇い止めされている。

何とか職を確保できていたとしても、仕事がないので「一時解雇(レイオフ)」されてしまったり、「一時休業(自宅待機)」になって収入が激減している雇用者も多い。個人事業主もフリーランスも、雇用主が窮地に落ちると真っ先に仕事を失う。

個人事業主と言えば、キャバクラや風俗に勤める女性たちもすべて個人事業主なのだが、彼女たちも4月7日の緊急事態宣言で一気に窮地に落ちている。営業の自粛を要請されており、さらに客が濃厚接触を恐れてまったく寄りつかなくなってしまったからである。

では正社員は無事なのか。いや、悪影響は正社員にも及ぶ。

情報通信業業界、運輸業、医療・福祉業などの一部の業種を除いて、ほぼ9割近い業種は凄まじい悪影響を受けて売上と利益を落とすので、今後は正社員の給料が下がったり、ボーナスが大幅にダウンすることになる。収入が激減する。

失職したり収入がゼロになったりするよりはマシかもしれないが、それでも貯金がなかったり、借金を抱えていたり、過大なローンを組んでいたり、分相応なところに住んでいたりすると、すぐに窮することになる。

大家(賃貸オーナー)は、すでに一部で「家賃が払えない」という相談が増えていると報告しているのだが、家賃が支払えない人が本格的に増えるのは5月からである。非正規雇用者は年度末で多くが失職している。4月から緊急事態宣言が出されて仕事が見つかる環境ではない。

非正規雇用者のほとんどは貯金ゼロか、数十万円なのだから仕事がなければ1ヶ月ほどしか持たないのである。そうなれば、家賃が払えるはずもない。「住居確保給付金」という制度があるのだが、精神的に追い込まれた人たちが冷静に行政の支援や救済を求めることに気づけるかどうかは分からない。

これから何が起こるのか。

企業は売上と利益を大幅に落とし、正社員は給料やボーナスの減少が激減し、非正規雇用者や個人事業主やフリーランスは失職し、貯金がなかったり借金がある人たちが家賃を滞納して路頭に迷う時代になるということである。

私たちは誰ひとりとして無事でいられない。自分の首が絞まることもよく考えて「戦後最悪の不況」に向き合わなければならない。

『人類は「パンデミック」をどう生き延びたか(島崎 晋)』

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