世界は二度と元に戻らない。これからの生き残りのために考えるべきことは多い

世界は二度と元に戻らない。これからの生き残りのために考えるべきことは多い

ウイルスは強毒化しているし、全世界に広がって蔓延が止まらないし、特別に効く治療薬もないし、ワクチンの開発も多くが失敗する可能性が高まってきた。奇跡的によく効くワクチンが早期に開発されるかもしれないが、あれこれ試して何も見つからない可能性も逆にある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

人々はかつてのように飛行機を乗ることはなくなる

ウォーレンバフェット氏が航空株をすべて売却したと言う報道は、全世界の投資家に「航空株はもう駄目だ」と言う事実を印象づけた。

2020年第1四半期を見ると、海外旅行者数は前年比で22%減少となっている。海外旅行者数は2020年は楽観的に見ても58%減、場合によっては78%減にまで落ち込む可能性を国連世界観光機関は指摘している。

コロナ禍が収まるまで、人々はかつてのように飛行機を乗ることはなくなる。

コロナ禍はいつ収まるのかは誰にも分からないが、ワクチンの開発が意外に手間取っている現状を考えると、1年から2年、場合によっては3年は今のような状況がだらだらと続く可能性もある。

そうであれば、航空株を保有しているというのは大きなリスクとなる。ウォーレン・バフェットが航空株をすべて売却したのは、リスク回避の観点から見ると当然のことでもあった。

もっとも、投資家は単に株を売り飛ばすだけで済む。航空業界で実際に働く人はそういうわけにはいかない。自分たちの努力以前の外部環境で状況は悪化しているので為す術がない。場合によっては職場が存続できるかどうかという瀬戸際にまで追い込まれてしまう。

では、すぐに他の業界に転職できるかと言えばそうでもない。航空業界は「空を飛ぶ」という特別な憧れが喚起される職場なので、夢を持って働いている人が多い。業界が極度の不景気に落ちそうだと分かってはいても、他の業界に転職したいと思う人はなかなかいないのではないか。

そうであればコロナ禍に巻き込まれている現在や、今後の数年は、かなり苦しい閉塞感に耐え続けなければならないだろう。

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4月になってから負債の大きいホテルが力尽きた

中国発コロナウイルスによって駄目になった業界は、航空業界以外にも多い。ホテル・宿泊業界は全滅だ。世界のホテル・宿泊業界はインバウンドの波に乗って規模をどんどん拡大していた。

日本でも、東京・大阪・京都では膨れ上がる観光客の需要を見越して、ホテルがどんどん建築されたのだが、中国発コロナウイルスのパンデミックが明らかになった2020年2月から一瞬にして宿泊客が消えてしまった。

3月だけで全世界の海外旅行者数は前年比で同57%減だったのだ。あまりにも急激に、かつ大規模に、宿泊客が消滅したのだ。

そしてどうなったのか。2月、3月はキャンセルの嵐に見舞われながらも何とか持ちこたえた宿泊業だったが、4月になってから負債を大きく抱えたホテルが力尽きてどんどん倒産していくという流れとなった。

東京商工リサーチは、2020年はホテル・宿泊施設の倒産は100件を超えるのではないかと予測している。すでに4月だけで25件の倒産があり、その中で負債10億円以上の大型倒産は5件もあった。

大阪が最も大きなダメージを受けているのだが、これは大阪がインバウンドで最も人気があった場所でもあったからだ。4月27日に民事再生法の適用を申請したWBFホテル&リゾーツも大阪の会社だった。負債総額は約160億円だった。

5月以後もインバウンド需要が戻るのは絶望的なので、増えすぎたホテルは負債の多いところから淘汰されていくことになる。

今後、ホテル・宿泊業界はM&Aが加速する可能性も指摘されているのだが、それでもコロナ禍が長引けば業界そのものが地盤沈下を起こしてしまうので、生き残れるのはほんの少数かもしれない。

このような状況なので、当然のことながらホテル・宿泊業界に勤める人々も解雇や無給の一時休業などを強いられ、厳しい状況で生きなければならなくなる。

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日本は恐らく末端から機能不全に陥っていく

人々は出歩かなくなった。インバウンドが消えただけでなく、出張も消え、帰省も消え、テーマパーク需要も消え、コンサートも消えた。

4月27日、JR東海は第一四半期の連結決算を出しているのだが、純利益は前年同期比で85%減の97億円という衝撃的な数字になっていた。ゴールデンウィークはJRにとっては稼ぎ時なのだが、山陽新幹線の自由席の乗車率は10%割れという無残な状況だった。

4月25日から5月5日の11日間で、自動改札の利用実績が東京駅で85%減、渋谷駅で82%減というのだから、いかに自粛が経営に大きなダメージを与えたのかが分かる。

今は緊急事態宣言の最中にあるのだから、交通機関のすべてで壊滅的な売上減になったとしても仕方がないところもある。しかし、今後、緊急事態宣言が解除されたとしても、以前のように人出が戻るのかどうかは何とも言えないところがある。

特効薬や治療薬が開発されていないのだから、人々は意識的に外出を避けて緩やかな自粛が続くだろう。そうであれば、交通機関に関わる業界はコロナ禍が続くうちは回復できない可能性も高い。

経営体力を温存しなければならない時だが、そうだとしても「出口」が遠いと自ずと限界もある。

路線バスの運行会社も追い込まれている。従来の路線が維持できないどころか、会社の経営そのものが維持できないような状況に追い込まれているところも多い。観光バスも、高速バスも、貸し切りバスも状況は同じだ。

路線が廃止されると、ますます人々は身動きできなくなる。過疎の地区では、一度路線が廃止されると二度と復活することはない。日本は恐らく末端から機能不全に陥っていく。

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状況は長期化するという前提で考える

2020年2月頃は、中国発コロナウイルスはそれほど重篤なものではなく、人から人に感染することもなく、治療薬もいろんなものが使えて、ワクチンもすぐに開発されるという空気があった。

しかし、あれから数ヶ月経った今、状況はそれほど楽観できるものではないということが分かってきた。ウイルスは強毒化しているし、全世界に広がって蔓延が止まらないし、特別に効く治療薬もないし、ワクチンの開発も多くが失敗する可能性が高まってきた。

奇跡的によく効くワクチンが早期に開発されるかもしれないが、あれこれ試して何も見つからない可能性も逆にある。

「ワクチンの開発は最短で9ヶ月、最長で2年くらいではないか」とビル・ゲイツは述べている。9ヶ月で成功すればいいが、それでも2020年の年末になるわけで、すでに世界中の多くの指導者は「長期化する」という前提で考えるようになっている。

政府による助成金や経済支援というのは、あくまでも一時しのぎでしかなく、需要が消えてしまえばどれだけ支援を厚くしても経済は復活しない。長期化すればするほど、悪影響が拡大するのに支援の方は薄くなっていく。

ジョージ・ソロス氏は「私たちはパンデミックが始まった頃の状態に戻ることはない。それは明らかだ」「私たちの文明の生存を脅かしている」と述べている。

コロナ禍による経済悪化を私たちはまだ甘く見積もっている可能性がある。私たちも「この状況は長期化する」という前提に立って、人生設計を立てる必要がある。

収入はどれくらいまで失われても問題ないか、自分の勤めている会社が潰れたらどれくらい生きていけるか、ダウングレードはどれくらいまで可能か、自分の暮らしている自治体は存続できるか……。

世界は変わった。生き残りのために考えるべきことは多い。

『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画(冨山 和彦)』

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