
ナイキは「世界のどこかで極度に安い労働力を手に入れて、先進国で正義ぶったコマーシャルを打って徹底的に高く売る」というビジネスモデルを構築してきた。このビジネスモデルはグローバル化の基本でもあるのだが、これを追求すればするほど、「低賃金労働・劣悪な環境放置・長時間労働・児童労働・強制労働」という問題を抱えることになる。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
社会正義の推進もへったくれもない多国籍企業ナイキ
中国はウイグル人を徹底弾圧して文化と人種を抹殺しようとしているのだが、中国はウイグル人を100万人も拘束していて強制労働もさせている。この強制労働で作られている製品が、ナイキのシューズだ。
ペンス副大統領は、「人権侵害を進んで無視しているアメリカの多国籍企業」として、ナイキを名指しで糾弾したこともあるのだが、ナイキは以前から中国べったりで悪名高い多国籍企業である。
ナイキは「社会正義の推進」を売りとしているのに、裏ではあこぎな金儲けしか考えていない。アメリカ人の労働者の賃金は高いからと言って、コストを削減するために中国に工場を持っていった。
さらに、その中国でも極度にコストを下げるためにどんどん奥地に入り込み、とうとう強制収容所に収監されたウイグル人の強制労働でシューズを作るようになっていったのである。
ウイグル人が凄惨な境遇に貶められているのは私たちは誰もが知っている。(ブラックアジア:『私の身に起きたこと〜とあるウイグル人女性の証言〜(清水ともみ)』を読んで)
ナイキが本当に「社会正義の推進」を実現したいのであれば、ウイグル人に「弾圧に負けるな、差別に負けるな、中国を追い出せ、我々は虐げられている君たちを支援する、Just Do It!」と言って、弾圧されたウイグル人と共に中国と戦うのが当然の姿である。
それなのに、何もしていない罪のないウイグル人が次々と強制収容所にぶち込まれて、拷問されたり、人体実験されたり、内臓を抜き取られたり、殺されたり、強制労働されたりしているのを見て見ぬフリをする。それがナイキのやっていることだ。
そしてナイキは金儲けのために、強制収容所に収監されているウイグル人を強制労働させてシューズを製造しているのである。「社会正義の推進」もへったくれもないアメリカ最悪の多国籍企業である。
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独裁国家の側に立って「個人の自由」を弾圧している企業
中国はウイグル人を抹殺するために、ウイグル人女性に一方的に不妊手術を行ったり、中絶させたり、避妊を強制させたりしている。中国のやっていることは、ウイグル人に対する「ジェノサイド」である。
ウイグル人の強制労働を使うというのは、要するにこのジェノサイドに加担しているも同然である。ナイキがやっているのはそういうことだ。
それなら「金儲けのためにやっているんだ、何が悪い?」と開き直ればいいものの、表向きでは「社会正義の推進」を言っているのだから悪質だ。ナイキはとんでもなく不正義な企業である。
あと、ナイキは中国におべっかを使って香港をも見捨てた企業である。2019年10月、民主化運動真っ只中にあった香港について、あるバスケットボールのマネージャーが「香港の民主化運動を支持する」というツイートをしたことがあった。
中国共産党政権がこれに噛みついたら、マネージャーはいそいでツイートを削除して謝罪した。ナイキはどうしたのか。ナイキは北京にあった5店舗から、このバスケットボールチームの関連グッズをすべて撤去して中国に媚びた。
中国は巨大な経済圏だ。一大製造拠点であると同時に、一大消費拠点でもある。中国を怒らせたら企業の売上が減る。中国を怒らせたら製造が滞る。中国を怒らせたら株価が下がる。
だから、ナイキは必死になって中国に尻尾を振って「自分たちは中国様に逆らうことはありません」と忠誠を誓っているのである。
ペンス副大統領はナイキを名指しで「香港の問題では、社会的良心を捨てることを選んでいる」と批判した。ナイキは、ペンス副大統領の言うとおり「中国政府の子会社のような振る舞い」をしている。
ナイキは「社会正義の推進」なんかしていない。むしろ、逆に中国の経済パワーに媚びて正義を捨て、ウイグル人を捨て、香港人をも捨てた。社会正義の側に立つのではなく、独裁国家の側に立って「個人の自由」を弾圧している。
ナイキとはそんな企業である。
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人権に配慮しているようなコマーシャルで闇を覆い隠す
ナイキが「不正義な企業」であることは、今に始まったことではない。
1997年にもナイキは強制労働の問題で激しく批判されたことがあった。ナイキはこの当時インドネシアやベトナムでシューズを製造していたのだが、徹底的に安く作るために現地の工場では以下の5つの問題が横行していた。
・低賃金労働
・劣悪な環境放置
・長時間労働
・児童労働
・強制労働
まさに違法と搾取のオンパレードだ。表では「社会正義の推進」とか格好を付けながら、裏では悪徳企業の見本のようなことをしていたのだ。
ナイキはこれをいっさい認めなかったのだが、アメリカのNGOは証拠映像を出しながら激しくナイキを糾弾した。これによって、ナイキは世界的に批判されるようになり、世界各国で不買運動が引き起こされた。
ナイキは以後、利益至上主義に傾倒せず「CSR(社会的責任)を果たす」として、それを実行していたはずだ。しかし、今回のウイグル人の強制労働にナイキが関わっていたことを見ても、体質は変わっていなかったというのが分かる。
ナイキは「世界のどこかで極度に安い労働力を手に入れて、先進国で正義ぶったコマーシャルを打って徹底的に高く売る」というビジネスモデルを構築してきた。
このビジネスモデルはグローバル化の基本でもあるのだが、これを追求すればするほど、「低賃金労働・劣悪な環境放置・長時間労働・児童労働・強制労働」という問題を抱えることになる。
グローバル化とは、最終的には多国籍企業が個人を徹底搾取することにつながるというのは、ナイキの工場が常にダーティーな問題を抱えるのを見ても分かる通りだ。
だから、この現実を隠蔽するために、ナイキは上っ面の「正義」だとか「人権」みたいなものをイメージ戦略を進めている。自分たちの汚れたビジネスモデルを、あたかも人権に配慮しているようなコマーシャルで覆い隠して実態を見えなくしているのである。それがナイキのやっていることだ。
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正義づらし、少数派をことさら持ち上げて炎上させる
ナイキのコマーシャルなんかに騙されてはいけない。ナイキは「低賃金労働・劣悪な環境放置・長時間労働・児童労働・強制労働」で成り立っているビジネスモデルを見えなくするために、そうしたイメージ戦略を採っている。
ナイキのコマーシャルは一流の広告企業が莫大な金をかけて製作している。ナイキの実態を知らないでコマーシャルだけを見たら、ナイキはいかにも正義一辺倒な企業に見える。ナイキのコマーシャルを見て、ナイキが嫌いになる人はいない。
しかし、それはナイキが莫大な金をかけて印象操作をやっているのであって、ナイキ自体は決して正義の企業ではないのである。そもそも、そのコマーシャルも安い労働力を使って浮かせたコストで作っているのである。
ナイキのやっていることは、あまりにも偽善的だ。
「正義」とか「人権」とか叫ぶ企業そのものが、裏側で東南アジアの低賃金層や中国人の低賃金層やウイグル人の収監された人たちを「搾取」しているのだ。これを偽善的と言わないで何と言えばいいのか分からない。
そう言えば、ナイキはコリン・キャパニックという元アメフト選手を広告に使ったのだが、このコリン・キャパニックは国歌斉唱中で起立拒否した「非」愛国的な選手である。
多くのアメリカ人はナイキに激怒してナイキのシューズをゴミ箱に捨て、燃やし、ナイキは再び不買運動にさらされることになった。トランプ大統領も国歌斉唱を拒絶するような人間を広告に担ぎ上げたナイキを激しく批判した。
ナイキはこうやって国家内を「分断」するような動きを好んで行う企業でもある。正義づらし、少数派をことさら持ち上げて炎上させ、それで儲ける。ナイキというのは、「そういう企業」なのである。
日本人はこんな企業に騙されてはいけない。ナイキのやっていることは、あまりにもひどすぎる。
ナイキのシューズなんか持っているのであれば、すぐにゴミ箱に叩き捨てるべきだ。口だけで「社会正義の推進」みたいなことを言っている企業の製品なんか、誰も心地良く思わない。
