トランプ大統領の言論封殺。GAFAは自ら凋落の引き金を引いたのかもしれない

トランプ大統領の言論封殺。GAFAは自ら凋落の引き金を引いたのかもしれない

GAFAはトランプ大統領を言論封殺するという行為で「表現の自由」を奪った。人々の不信感や猜疑心を増長させ、GAFAの成長を喜ぶのではなく懸念を抱く人を増大させた。それが今、起きていることである。GAFAは自ら凋落の引き金を引いたのかもしれない(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

トランプ大統領の発言をGAFAが次々と封じ込めた

GAFA(Goole、Apple、Facebook、Amazon)は今もなお世界に君臨する巨大IT企業であり、今後も長く世界を支配していくのは間違いない。しかし、ここ数日でGAFAを見る世間の目は非常に厳しいものになっている。

何が起きたのか。トランプ大統領の発言をGAFAが次々と封じ込めて、世論の反発が起きているのである。

多国籍企業はビジネスの性質上すべてグローバル化を推進する立場であり、特にGAFAは際立ってリベラルである。そのため、グローバル化よりも自国の国益を優先する保守派のトランプ大統領とは折り合いが非常に悪く、最初から深い溝があった。

しかし皮肉なことに、トランプ大統領は偏向するマスコミに対抗するためにSNSを効果的に使ってきた初の大統領でもある。自分たちのサービスを徹底的に使いこなしてくれて、なおかつ世界に喧伝してくれる。そのため、GAFAは苦々しく思いながらもトランプ大統領に接するしかなかった。

そんな中で、2020年の大統領選挙を迎えた。トランプ大統領を激しく嫌うメディアとGAFAは総力でトランプ大統領を潰しにかかって、目論み通りにトランプ大統領は「敗戦」した。

しかしトランプ大統領は、SNSで「選挙に不正があった」「票が盗まれた」と、国民に強く訴えてきた。そして、ジョー・バイデンを「票を盗んだ候補だ」として激しく糾弾した。

これが2021年1月6日の議会占拠につながっていくのだが、ここでGAFAは「トランプ大統領が騒乱を扇動した」としてトランプ大統領のアカウントを一気に凍結していったのである。

TwitterやFacebookはトランプ大統領のアカウントを永久凍結し、AppleやGoogleは保守派が集結していたSNS「パーラー(parler)」のアプリを使えなくした。そして、parlerのサーバー元であるAmazonは、サイト自体をサーバーから抹殺してしまった。巨大IT企業による完全なる言論封鎖だった。

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自ら凋落の引き金《トリガー》を引いたのかもしれない

GAFAは自分たちの都合の悪い存在であれば、それがアメリカの大統領であっても存在を抹殺することができる。彼らが言う「表現の自由」は自分たちの都合の良い「表現の自由」でしかなかった。

それが露呈した。だから、巨大IT企業に対する人々の見る目は一瞬にして変わったのである。「GAFAにはこんな権力があったのか」と人々は大いなる不安を感じたのだ。

確かに、GAFAが今すぐどうにかなるわけではない。しかし、トランプ大統領の言論封殺によって人々から警戒心を持たれることになったわけで、今後は何をするにしてもGAFAに対して警戒心と不信感を持つ一定の層が生まれてくる。

もしかしたら、GAFAはトランプ大統領の封じ込めに躍起になることで、自ら凋落の引き金《トリガー》を引いたのかもしれない。どんどん巨大化していく一方のGAFAだが、企業的には現在あたりが影響力のピークになる可能性もある。

言うまでもないが、巨大なものはどこまでも巨大化していくわけではない。どんな巨大で世界に君臨する企業であっても、やがて成長が止まり、徐々に衰退に向かうターニングポイントがくる。

GAFAであっても、そうした企業の栄枯盛衰とは無縁ではない。「どんなに成長する樹木でも天まで伸びることはない」と欧米人は言うが、その通りである。成長はいつか止まり、巨大化はそれ自体が重荷になる時がくる。

企業、グループ、国家、文明は、それがいったん軌道に乗ると、どんどん発展して大きくなっていく。成功すればするほど、組織は巨大化し、複雑化していく。

いったん軌道になると、本業とはまったく違う分野に進出していき、巨大化していく。そして、ありとあらゆる分野を飲み込んで複雑化していく。今のGAFAはまさにそのような状態になっている。

こういったものが膨れあがっていく時というのは、成功しているときである。成功しているときは、成功を極大化させるために、膨張することが善になる。

組織はより巨大になれるように、アメーバのように触手を伸ばしていろいろなものを取り込んでいく。システムもより利便性が高まるように、周辺機能を次々と取り込んでより包括的なものになっていく。

それが成功に次ぐ成功を生み出しているとき、組織やシステムの巨大化は止めることができず、巨大化する動きが暴走していく。その結果、どうなるのか。ある時点で、身動きできなくなる。

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「保守派の存在」とずっと敵対することになる

世の中は変わる。時代は変わる。ある日、突如として何らかのパラダイムシフトが起きて、新しい流れに変わる。そんなとき、時代の頂点に君臨していた存在は、方向転換することができずに取り残される。

GAFAはトランプ大統領を言論封殺するという行為で「表現の自由」を奪った。人々の不信感や猜疑心を増長させ、GAFAの成長を喜ぶのではなく懸念を抱く人を増大させた。それが今、起きていることである。

今後、人々がGAFAに熱狂しなくなり、むしろ批判的になって心が離れ、利用者が離れていくと、もはやGAFAは成長できない。人々が離れていくと、巨大化ゆえに現状維持もできなくなる。

まだ、そうなるとは限らないのだが、巨大化したGAFAにとって、今回の「言論封殺」がターニングポイントになったとすると、これから成長を求めるにしても厳しいことになるというのは誰でも想像できる。

しかし、もうGAFAは方向転換できない。「言論封殺」してしまった以上、これからスタンスを方向転換しようにも、あまりにも図体が大きくなりすぎて曲がれない。トランプ大統領が可視化させた「保守派の存在」とずっと敵対することになる。

「GAFAは大きくなりすぎた。危険だ」
「GAFAは権力を持ちすぎる。分割すべきだ」

一国の大統領を自分たちの都合で勝手に言論封殺するくらいの権力を持つのだから、「デカくなりすぎた、危険だ、分割しろ」という声が湧き上がるのは当然だ。

今はもちろんGAFAに変わるサービスが存在しないので、保守派の人々も不満と批判的精神を持ちながらGAFAと付き合うが、ある瞬間にパラダイムシフトを生み出す存在が登場すると、GAFAは一気にユーザーを失うことになる。

しかし、その時にGAFAは方向転換できるかというと、無理だと考えるのが自然だ。

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GAFAもそうした歴史を辿るのは避けられない?

人々は、いつの時代でも「巨大化した組織」「巨大化した存在」に畏怖を抱き、小さなものよりも大きなものを尊ぶ気質がある。たとえ、その巨大な存在が、すでに「現状維持」に入っていて、時代遅れになっているのが明白であっても、巨大さは永遠に維持できると思ってしまう。

だから、GAFAについても「巨大ゆえに影響力は延々と続く」というのは間違いない。今すぐGAFAが崩壊するとか、目に見えるほど凋落するわけではない。巨大さは人々の目を幻惑させ続ける。

10年前まで日本の家電メーカーは学生たちの人気の就職場所で、エリート学生はみんな家電メーカーに入ったが、巨大さに幻惑されて、それが時代遅れの落ち目の組織であることに気付かなかった。

学生はいつも「時代の寵児」になっている企業を選ぶのだが、その時代の寵児はその時が絶頂期で、あとは衰退するだけの存在なのかもしれない。

バブル真っ最中の頃、学生に人気の就職先は金融機関や建設会社、不動産会社だった。誰もがそこに就職したいと願い、銀行員や不動産屋になりたがった。

しかし、バブルが弾けて最も痛手を被ったのは言うまでもなく、金融機関、建設会社、不動産会社であり、当時の学生はババを引いただけで終わった。

2000年以降は、証券会社や投資会社が時代の寵児になって、誰もがそういった会社に入りたがった。しかし、2008年のリーマン・ショックがやってきて、これらの企業は一気に経営悪化に追いやられて、リストラの嵐が吹き荒れた。

巨大化に幻惑されると、人生を誤る。巨大化した存在は、安心や安泰を保証するものではないし、ましていつまでも巨大な存在でいられるわけでもないのだ。

巨大な組織だから安心だと思ってそこに寄りかかろうとした人間たちにとっては予想外だったかもしれない。しかし、巨大な組織、巨大なシステムを抱えた組織は、巨大化・複雑化に足を取られ、それが維持できなくなった瞬間に「終わり」だ。

アマゾンの創始者であるジェフ・ベゾスが「私はいつかアマゾンは潰れると考えている」と言ったことがある。アマゾンもまたそうした歴史を辿るのを避けられないと悟っているからだとも言える。

現在の世界を牽引しているのはGAFAだが、果たして10年後はどのような勢力図になっているのか興味深い。

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界(スコット・ギャロウェイ)

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