DX化する社会。変化を恐れたり抗うのではなく、それを武器にする必要がある

DX化する社会。変化を恐れたり抗うのではなく、それを武器にする必要がある

企業・国家・家族が自分を守る存在ではなくなり学歴すらも頼りなくなった今、自分自身を守ってくれるのはDX(デジタル・トランスフォーメーション)の知識である。社会がデジタルによってまったく違う形になる(デジタル・トランスフォーメーションする)のだから、変化を恐れたり抗うのではなく、それを武器にする必要がある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「70歳定年」どころか終身雇用の時代が終わったことを見せつける動き

政府は2021年4月1日より「高年齢者雇用安定法」を施行し、「従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保せよ」と企業に対応を求めている。世間では「70歳定年法」と呼ばれているものだが、帝国データバンクの調べによると、対応が決まっていない企業は5割弱に上る。

それどころか、多くの企業が「45歳以上の社員を対象にした早期退職」を矢継ぎ早に繰り出している。

カシオは2019年に特別退職金を加算して早期退職者を募集したのだが、2021年もまた早期退職者募集して「45歳以上の一般社員、50歳以上の管理職社員」を退職させて人員削減している。

近畿日本鉄道も2021年2月26日から「人数を設定しない早期希望退職」、すなわち退職したい人間はいくらでも退職させるという早期希望退職の募集を行っていた。サッポロビールも「勤続10年以上で45歳以上の社員」を対象にして早期希望退職を募っていた。

この流れはコロナ禍で経営的にダメージを受けたというのもあるが、そもそもコロナ以前から起きていた流れだ。2018年はNECやキリンが3000人の早期退職を募っていたし、2019年はセブン&アイ・ホールディングスが4000人規模の人員削減を発表していた。

大正製薬も、アステラスも、武田薬品も、みずほ銀行も、三菱UFJ銀行も、三井住友銀行も、コカコーラ・ボトリングも、それぞれリストラを進めていた。ほとんどが45歳以上の社員で、リストラの規模は数百人から数万人にのぼる。

「70歳定年」どころか終身雇用の時代が終わったことを見せつける動きである。

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自分で自分を何とかしないと容赦なく叩き落とされる

企業のビジネスサイクルも短くなり、企業の効率化で人が要らなくなっている。さらに、新しいテクノロジーが次々と社会を変え、今までの仕事を消滅させ、複雑化させ、高度化させていく。こんな中、中高年も片っ端から放り出されているのだ。

学歴があれば問題ないのだろうか。いや、学歴があっても、企業が効率化して人が要らなくなったら容赦なく見捨てられる。名だたる企業のリストラされる社員は、そのほとんどが大学卒であることを考える必要がある。

これは、「学歴も自分を守ってくれなくなった」ということだ。

そもそも現代社会では、無理して学歴を手に入れること自体が一種のワナになっている。学歴がないと就職できないと煽り立て、学生に多額の借金を背負わせて大学と消費者金融が儲ける。学歴をエサにして学生をカモにしている。

学歴が身を助けるどころか、学歴を取るための莫大な借金が学生を自滅させていく。企業は学歴がないと雇わない。かと言って、学歴にすがりつく者を徹底的に食い物にする。現代はそんな邪悪な世界である。

では、いざとなったら「家族」が助けてくれるのか。

それも期待できなくなりつつある。日本は30年に及ぶデフレで苦しんできた国であり、このデフレによって親世帯も収入が上がらず、経済的な安定を失ってしまっているからだ。

ニートやフリーターや引きこもりをしていた人間たちは、親に依存し、寄生して生きていた。しかし、現在はその親世代が困窮化しており、いつまでも自立できない子供の面倒を見られなくなりつつある。(ブラックアジア:引きこもりも日本人である以上、私たちは誰でも彼らとは無縁ではないのだ

このように見ると、社会は非常に厳しい方向に変質したことが分かるはずだ。

今まで安定した生活を保障してくれていたはずの、「企業・国家・家族」のすべてがセーフティーネットとして機能しなくなった。誰かが助けてくれるどころか、食い物にされていく。

自分で自分を何とかしないと、容赦なく叩き落とされる社会と化したのだ。

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DX(デジタル・トランスフォーメーション)に適応すべき

誰も頼りにできない中で生き残るためには、「自分に何が必要なのか」を常に考えておかなければならない。生き残るために必要な武器は自分で手に入れるしかない。

現代社会は超高度情報化社会なので、一般的には高度に専門化・体系化された知識が必須である。端的に言えば、ハイテクとインターネットの高度な知識が必要になる。それが武器となって収入を生み出す。

いまやビジネスはすべてデジタルに集約されている。紙が消えてディスプレイがビジネスの最前線だ。

こうした流れをDX(デジタル・トランスフォーメーション)と呼ぶ。

どのシステムを使うのか。どのクラウドを使うのか。どのソフトウェアが重要なのか。セキュリティはどうなのか。やりたいことは、どうやれば実現できるのか。どの技術が将来性があるのか。そして、データはどう保存すべきなのか……。

こうした、ひとつひとつに最適な選択をするためには、DXを支えている根幹的な技術に対する深い知識(リテラシー)がなければならない。逆に言えば、ITに関する高度に専門化・体系化されたリテラシーがある人だけが超高度情報化社会に生き残れるのである。

教育の現場に期待できると思ってはいけない。教育は昔のことは教えるが新しいことは教えられない。未来は猛スピードで進化し、教師も教える技能がない。

今でもスマートフォンですぐにグーグルにアクセスして検索できる時代に、いつまでも詰め込み教育のカリキュラムしかできていないのを見ても、日本の教育の限界が分かるはずだ。

そのため、自分で動いて業界の深い専門知識を手に入れることができるかどうかで、人生が大きく分岐していく。

激甚な競争にさらされている企業は、もはや昔のように人を育てているヒマも金もない。さっさと即戦力を雇う。高度な知識がなければ役に立たない人間なので切り捨てられるだけだ。

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社会に合わせて自分自身をもトランスフォームしなければならない

少子高齢化をまったく解決できない無能な日本政府は、もう高齢者の面倒は見たくないと思っているので、「引退するまで2000万円貯めろ」とか「70歳まで働け」とか「70歳まで働けるなら年金の支給も70歳からだ」と、徐々に徐々に高齢者を切り捨てる方策を進めている。

今後は、国も企業も家族も頼れないことを見越して、自分で自分を助けるしかない。誰も助けてくれないのだから、そんな社会では「自分で自分を高度化させる」以外に生き残れないということだ。

「5G」が社会に浸透していくと、超高度情報化社会はますます過激に進んでいく。インターネットのさらなる進化、人工知能の促進、ロボット化、フィンテックの浸透などによって、社会は一変《トランスフォーム》する。

すでに、社会のトランスフォームは始まっている。

こうした中、IT分野への知識と対応がどこまでできるかで自分の将来が決まると言っても過言ではない。IT技術の基本的な部分が理解でき、高度に使いこなし、次々と生まれるイノベーションで自分自身をもトランスフォームしなければならない。

社会が一段も二段も高度化するのに自分が高度化しないのであれば、それは次の時代に取り残され、生きていけなくなるということでもある。待ったなしだ。

自分を自分で向上させることに成功した人は、これからの格差社会の中で有利なポジションを手に入れることができる。その逆に自分を助けられなかった人は、まわりも助ける余裕がなくなっているので、やがて見捨てられて社会の底辺《ボトム》に落ちていくことになる。

企業・国家・家族が自分を守る存在ではなくなり学歴すらも頼りなくなった今、自分自身を守ってくれるのはDX(デジタル・トランスフォーメーション)のリテラシーである。

社会がデジタルによってまったく違う形になる(デジタル・トランスフォーメーションする)のだから、それを武器にする。

さもなくば、個人も国も容赦なく時代に見捨てられて、下手すれば今の社会で何が起きているのかすらも分からなくなる。ぼんやり社会の変化を見ていてはいけない。何とかするなら「今しかない」のである。

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