少子高齢化は日本を滅ぼす史上最悪の社会現象であるという意識を日本人は持て

少子高齢化は日本を滅ぼす史上最悪の社会現象であるという意識を日本人は持て

本当に日本を愛しているのであれば……、そして日本という国の素晴らしさを後世に残すつもりならば、今、日本社会を蝕んでいる大きな問題に目をやって、危機感を持って「生き残り」を考える必要がある。少子高齢化をどうすべきか、真剣かつ真摯に考えるべきだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

人工知能(AI)やロボットで問題は解決するわけではない

少子高齢化は「子供を増やし、人口を増やす」という王道以外の解決方法はない。

人口が減るのであれば人工知能(AI)やロボットで補えば問題は解決すると言う人もいる。しかし問題を深掘りしていくと、そんな単純なものではないことに気づく。

人工知能やロボットは労働力を補完することはあるのだが消費しないので、内需の拡大に貢献しない。また子供を産み育てることもない。次の社会を担うこともなければ、文化を創ることもない。

また、人工知能やロボットはイノベーションの結果として生まれて来たものであって、イノベーションを生み出すものでもない。

しかも、こうした技術革新の多くは、ハードよりもむしろソフトウェアの方が重要である。このソフトウェアの分野で世界を圧倒的に先駆けているのが、アメリカの株式市場に上場しているハイテク企業群である。

アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトと言った超巨大な多国籍ハイテク企業に匹敵する日本企業は存在しない。ということは、人工知能やロボットで補えばいいというのは、社会の命運をそっくりこうした巨大多国籍企業に託すということに他ならない。

そうであれば、「日本がソフトウェア部門で追いつけばいいではないか」と考える人もいるかもしれない。

しかし、少子高齢化が進んだことによって、2019年の段階でIT技術を担う人材がピークを迎えてしまった。そのため、今後は業界そのものが人手不足で技術大国の地位が揺らぐ。

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今後、ITを担う人材が55万人不足する恐れがある

今後、私たちの社会はよりハイテクにシフトするようになり、DX(デジタル・トランスフォーメーション)などの技術が世の中を変えていくことになる。ところが日本には危機的な事態が訪れている。

ITを担う人材が圧倒的に足りなくなるのである。どれくらい足りないのか。経済産業省は2019年4月23日に今後の10年間で「ITを担う人材が55万人不足する恐れがある」と危惧している。

アメリカの巨大ハイテク企業は人工知能による進化によって、イノベーションを加速させて文明を変えていこうとしているのだが、日本はこの人工知能の分野でも今後は12万人不足する。

経済産業省の懸念を受けて、政府は「全国の小中学校で1人につき1台のパソコンなどの情報端末を配備する方針」を決めたのだが、そうするとマスコミは「1人に1台が本当に必要なのか」みたいなことも言い出して引き留める。

「本当に教育現場にパソコンが必要なのか」みたいな意見に一定の賛同があるのを見ても分かる通り、今の日本にはハイテク分野で未来を切り拓いていこうという気概はどこにもない。

そんな状況を俯瞰して見ると、「技術大国」としての日本は、今後10年で見るも無惨に収縮していく可能性が高い。少子高齢化は「技術大国」としての日本の地位をも揺らがせる元凶になってしまうのである。

ところが、「少子高齢化をこのまま放置しておくと日本が壊死してしまう」という現実が分かっていない無知な日本人が多すぎる。

また、少子高齢化の解決の糸口が立っていないにも関わらず、日本は永遠に素晴らしい国だと言っている能天気な人たちにも呆れ果ててしまう。日本を愛するのであれば、足元を見なければならない。

「素晴らしい日本」という国は、自画自賛して永続するものではなく、むしろ国内の諸問題に対して危機感を持って解決することでしか永続できない。

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銃弾の1発も使われないのに約90万人が抹消される

日本は歴史の転換期にある今、国の存続がかかっているような大きな問題で山積みになっている国なのである。

マスコミはたまに「日本はすごい」と外国人に言わしめて日本人に足元を見ないように仕向けているが、そんな自画自賛の有害番組に毒されて良い気持ちになっていたら日本は終わりだ。

はっきり言おう。今の日本は、このままではさらに社会状況は悪化していくばかりであり、国家存続の危機に直面している状況である。

少子高齢化の問題は、「先送り」「事なかれ主義」で問題解決できるわけではない。むしろ、先送りすればするほど自滅する確率が高くなっていく。

この問題は20年以上も前からずっと「深刻になる」と言われ続けてきたのだが、政治家は危機意識をまったく持たなかったし、国民もそれが何を意味するのかよく分かっていなかった。

本来であれば、最優先事項の問題として取り組まなければならない喫緊の課題であるにも関わらず、まるっきり放置されてきた。

少子高齢化で最初に追い込まれるのは地方なので、首都圏に住む人の中には、これを地方の問題と勘違いする人もいる。しかし、これは地方の問題ではない。日本全体の問題なのだ。

現在の日本の人口は約1億2630万人だが、40年後は9000万人を下回る。3630万人が40年で消える。年間で言うと約92万人が消滅する計算となる。銃弾の1発も使われないのに、日本人は約90万人が消えていくのだ。

この過程で、不動産が暴落するとか、内需が減るとか、成長率が下がるとか、地方が死ぬとか、さまざまな問題が毎年のように噴き出すことになるのはすでに予測されている。

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場合によっては「コロナ復興税」みたいなものも取り入れられる

人口が減りながら子供が足りなくなり、高齢者だけが爆発的に増えていくのだから、ただ人口が減るだけではなく、いびつな人口構成で社会が成り立たなくなってしまうのが「確約されている」のである。

そして、社会の衰退と崩壊がさらに日本人の人口を激減させるという負のスパイラルを生み出す。

40年後に9000万人になった人口は、そのまま推移すると100年後は5000万人になっていく未来が待っていると国立社会保障・人口問題研究所は指摘している。

つまり、この少子高齢化問題というのはただの社会問題ではなく、日本民族の存続の危機に関する重大な問題なのである。日本は素晴らしいと言っているヒマなどない。いかに日本民族の足元が崩れているのか、目を覚まさなければならないのだ。

今後、高齢者の増大で年金・医療・介護費等の社会保障費が膨れ上がっていく。早晩、危機がやってくるのは間違いない。

すでに私たちは法外な所得税を取られ、法人税を取られ、消費税を取られ、住民税をとられ、固定資産税を取られ、自動車税を取られ、入浴税を取られ、タバコ税を取られ、酒税を取られ、贈与税を取られ、相続税を取られ、国民年金を取られ、介護保険料を取られている。

これだけ苛烈な税金を国が取っているのに、炭素税やら携帯電話使用税なども検討されており、場合によっては「コロナ復興税」みたいなものも取り入れられるのではないかという噂も出ている。

そう言えば、死んだら死亡税も取るのはどうだろうか、と伊藤元重・東京大学教授が社会保障制度改革国民会議で口にしたこともある。挙げ句の果てに、年金支給年齢を70歳にするとか75歳にするとか厚生労働省年金局も言っている。

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悲観的に考えて対処するのは、楽観的に考えて自滅するよりマシ

今でさえこんな状況に陥っているのに、それでも多くの日本人は少子高齢化という国家存続の危機、民族存続の危機に対して何の危機感を持たない。

本当に日本を愛しているのであれば……、そして日本という国の素晴らしさを後世に残すつもりならば、今、日本社会を蝕んでいる大きな問題に目をやって、危機感を持って「生き残り」を考える必要がある。

少子高齢化をどうすべきか、真剣かつ真摯に考えるべきだ。

足元の問題を放置して、無条件に日本を褒め称えるのはあまりにも無責任すぎる。国を愛する、日本を愛するというのは、日本の問題に立ち向かい、日本が永続できるように声を上げていくところから始まる。

何度も言うが、日本は少子高齢化で国家存続の危機に陥る。

経団連や政治家はこれを大量移民で乗り切ろうとして、「留学生・技能実習生・単純労働者・インバウンド」という隠れ移民政策をどんどん拡大している。少子高齢化が解決できないと、問題の多すぎる隠れ移民政策が定着して、日本は日本人の国や文化でなくなっていくだろう。

「いたずらに日本に悲観するのは良くない」という甘い考え方は捨てるべきだ。現実を直視すべきだ。悲観的に考えて問題に対処するのは、楽観的に考えて自滅するよりずっとマシなのだ。

少子高齢化は日本を滅ぼす史上最悪の社会現象であるという意識を日本人は持たなければならない。

書籍
『人口減少社会のデザイン 2050年、日本は持続可能か?(広井 良典)』

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