インド最強にして最大の企業『リライアンス・インダストリーズ』を知っているか?

インド最強にして最大の企業『リライアンス・インダストリーズ』を知っているか?

インド最強にして最大の企業は『リライアンス・インダストリーズ』である。今後、インドが強烈な経済成長をするようになっていくと、誰もがこの企業の名前を知ることになるはずだ。インド最強・最大の企業であるリライアンスはどのような企業なのか知っておくのはムダではない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

『リライアンス・インダストリーズ』という企業

世界でもっとも人口が多い国となったのがインドだが、このインドでアンバニ一族のことを知らない人はいない。アンバニ一族は言わずと知れたインド最大にして最強の企業である『リライアンス』を冠した企業のオーナー一族なのだ。

実はこの一族は創業者であるディルバイ・アンバニの死後にふたりの兄弟が激しく対立して経営権を争い、ついにグループが二分化されて、リライアンス・インダストリーズとリライアンス・ADA・グループの2つに分断される事態になっていた。

しかし、経営的には圧倒的に長男が率いた『リライアンス・インダストリーズ』グループが強く、ムケシュ・アンバニが実質的に『リライアンス』財閥のトップであるのは間違いない。

現在、インドの政治経済を率いているのは、ナレンドラ・モディ首相なのだが、このモディ首相を強烈にバックアップしているのが『リライアンス・インダストリーズ』の支配者であるムケシュ・アンバニである。

今、アジア最大の資産家は日本人でも中国人でもなく、インド人のムケシュ・アンバニであることはあまり知られていない。

ほんの数年前までは中国のIT実業家であるジャック・マーがアジア最強の富豪だったのだが、2018年にこのジャック・マーを超えていったのがムケシュ・アンバニだった。現在、推定資産は834億ドルなので、日本円で言うと12兆3000億円レベルであり、凄まじい資産であることがわかるはずだ。

アジア最強の富豪であるだけでなく、世界レベルで見ても9位につけるランクにある。今後、インドが人口ボーナスを得て高度成長期に入れば、恐らく世界ランクでもかなりの上位に入る富裕層になる可能性が高い。

場合によっては世界ナンバーワンの金持ちになるかもしれない。

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「リライアンス」はどのような成り立ちだったか?

興味深いことに、この財閥の創業者であるディルバイ・アンバニは、最初から金持ちだったわけでも何でもない。当初は外国に出稼ぎをして稼ぐ、ガソリンスタンドの一従業員に過ぎなかった。

そこから日用品や繊維の取引や輸出事業に関わるようになり、インド最強にして最大の企業に成り上がっていったわけで、その経営能力は天才的であったとも言える。つまり、この財閥は一代にして短期間に築き上げられたものだった。

当初は繊維業界が主となっていて、レーヨンの製造販売輸出の最大手となっていた。あのインド女性がまとう美しいサリーは、ディルバイ・アンバニの手によって提供されていたのである。

この繊維を軸にして、やがて1970年代からは石油事業に乗り出していき、ここから「リライアンス」は飛躍的に巨大化していくことになった。

1980年代にもなると、リライアンスはインドを代表する企業として知られるようになっていき、2002年にはインド企業として初めてフォーチュン500にランキングされた。ディルバイ・アンバニは2002年に死去した。

その後、この天才創業者ディルバイ・アンバニの後を受け継いで的確な経営を行ってインドを代表する巨大企業にしたのが、長男のムケシュ・アンバニであった。2代目の手腕も見事であったとも言える。次々と新規事業を成功させていき、今も貪欲に新規事業に触手を伸ばしている。

インド企業なのに法令遵守(コンプライアンス)を徹底して、コーポレートガバナンス委員会を社内に設置もし、苦情処理委員会もあって顧客やステークホルダーの声をよく汲み上げて経営が為されている。

この『リライアンス・インダストリーズ』の主力は石油精製や石化事業なのだが、新事業への開拓は非常に貪欲であり、化学・IT・通信・金融・保険・小売のすべてで大きな存在となっている。

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iFreeNEXTインド株インデックス

リライアンスは、デパートも、ショッピングセンターも、コンビニも、すべて手中に収めている。

今後、インド経済が発展していく中では内需の取り込みが非常に重要になっていくのだが、リライアンスはここも重点的に押さえる戦略を採っているわけで、まさにインドを飲み込むような勢いで経営の網を張っている。

どの分野にもリライアンスが関わっているということは、外国人投資家の目から見ると、「インドの成長を買うというのは、リライアンスを買う」ということに等しいことになる。

インドには2つの株式市場がある。「Nifty」と「SENSEX」である。Niftyはナショナル証券取引所(NSE)で、SENSEXはボンベイ証券取引所(BSE)となる。

最近、私は「iFreeNEXTインド株インデックス」に資産のほんの一部で投資したのだが、このインデックスはナショナル証券取引所(NSE)の主要企業であるNifty50と連動するものである。このNifty50だが、上位組み入れ10銘柄を見ると以下のようになっている。

1. リライアンス・インダストリーズ
2. HDFC銀行
3. ICICI銀行
4. ハウジング・デベロップメント・ファイナンス
5. インフォシス
6. ITC
7. タタ・コンサルシー・サービス
8. コヒタック・マヒンドラ銀行
9. ラーセン・アンド・トゥブロ
10.アクシス銀行

やはり、リライアンス・インダストリーズがトップに鎮座しているのが見て取れる。この企業は「SENSEX」にも上場しているので、SENSEXの指数に連動した投資信託を買ってもやはりリライアンス・インダストリーズに関わることになる。

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テクノロジー企業として変貌していくリライアンス

リライアンス・インダストリーズは、巨大なコングロマリットなのだが、あまりにも扱う業態が広すぎて日本人には捉えどころがない企業のようにも見える。コングロマリットというのは、外国人には実体がわかりにくいのだ。

私はリライアンス・インダストリーズという企業は、日本のソフトバンクに近いのではないかと考えている。ソフトバンクの創始者である孫正義氏は非常に多くの事業を展開して業態を広げている。

ただ、ソフトバンクは「IT分野」のみで裾野を広げているのだが、リライアンス・インダストリーズはそれを「全分野」で進めている企業であるのが違う。

ところがおもしろいことがある。

現在、リライアンスが力を入れているのがデジタルの分野である。すでにグローバル経済はインターネット経済で動いているのだが、リライアンスは5Gのネットワークからインターネットの決済分野までを押さえようとしている。そのため、奇しくも企業の形がソフトバンクによく似てきた。

初期は繊維で事業を拡大し、次に石油で事業を巨大化していったリライアンスだが、今後は石油事業からハイテクに軸足を移していこうとしている最中で、それを巨大資本で非常に強い意志で行っている。

恐らく日本人の大半がこの企業を知ることになるのは、「テクノロジー企業として」ではないかと私は思っている。

アメリカのテクノロジー企業にはマイクロソフトもグーグルもアドビもそうだが、多くのインド人の経営者が関わっているのだが、インドとテクノロジーは非常に相性が良いのは証明されている。

とすれば、テクノロジー企業へと変貌していこうとしているリライアンス・インダストリーズは、グローバル経済にとっても巨大な存在になる可能性もある。このあたり、どのようになるのか私は非常に強い関心を持って見つめている。

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