永田洋子と重信房子のふたりの呪い。左翼の暴力革命の芽は今もまだ日本に残っている

永田洋子と重信房子のふたりの呪い。左翼の暴力革命の芽は今もまだ日本に残っている

(2022年5月28日に重信房子が出所して左翼暴力革命への注目が上がっているので、改めて加筆修正しました)

政府批判の過激暴力デモ、民衆暴力による政権打倒などの、いわゆる「政治闘争」は、まともな人であればあるほど拒絶感も嫌悪感も強く持っている。「もうそんなものと関わりたくない、勘弁してくれ」という気持ちしかないだろう。しかし、左翼の暴力革命の芽は今もまだ日本に残っている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

日本赤軍の重信房子と、連合赤軍の永田洋子

2022年5月28日。「日本赤軍」の最高幹部だった重信房子(しげのぶ・ふさこ)が懲役20年の刑期を満了して出所している。

「日本赤軍」と言えば、1974年にオランダ・ハーグのフランス大使館で大使ら11人を人質に取り、警察官に発砲して重傷を負わせたとして全世界に衝撃を与えた左翼テロ組織である。

重信房子は事件以後も逃亡を続け、1997年には日本に戻って「希望の21世紀」なる組織を設立して懲りずに武力革命を起こそうとしていた。この時、重信房子の日本潜伏に当たって日本国内に彼女の支持者がまだ残っており、隠避を手伝っていた事実も発覚している。

2022年5月28日の重信房子の出所の際も、彼女の娘と共に支持者が彼女を取り囲んでおり、日本に張り巡らされた「左翼ネットワーク」の強さが図らずも強調された形となった。

「治療とリハビリに専念し、世界・日本の現実を学び新しい生活様式を身につけたい」と重信房子は述べているのだが、彼女が左翼革命思想を捨てたのかどうかは分からない。

言うまでもなく共産主義と革命は切っても切れない思想の緊密性がある。そして、その革命はしばしば暴力性を帯びていくのは、重信房子のいた「日本赤軍」だけでなく、もう一方の「連合赤軍」でもそうだったことを想い出す人も多い。

1971年の「あさま山荘事件」の衝撃は、今も鮮明に覚えている人が多い。

あさま山荘事件の凄絶な暴力が映像として残っているが、その後、次々と明らかになった「総括」と称する凄絶な殺戮に世間は息を飲んだ。

この連合赤軍は、日本共産党と共産主義者同盟赤軍派が合体したテロ組織だった。最高幹部のは永田洋子(ながた・ひろこ)という気味が悪い女で、後にこの女が凄惨なリンチ事件の首謀者だったことが分かる。

殺されたのは12人で、全員が20代だった。遺体は激しい暴行を受けた痕があって、男か女かも見分けがつかないほどだった。永田洋子はこの連合赤軍の幹部であり、「総括」を主導したひとりだった。

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意見の違う仲間を「総括」と称してリンチしていた

永田洋子(ながた・ひろこ)は、大学に入った頃から共産主義の思想にかぶれていき、その後は日本共産党の神奈川県委員会のメンバーとなった人物である。

1970年に最高指導者となって、1971年に共産主義者同盟赤軍派と連携して「連合赤軍」を結成した。

もっとも、この連合赤軍は何かの活動をしていたわけではなく、警察に追われて逃げ回って意見の違う仲間を「総括」と称して、次々とリンチにかけて殺していただけの呆れた共産主義的殺人集団である。

「総括」というのは、共産主義ではよく使われる言葉だ。今でも使われている。「総括」し、「自己批判」するというのは、革命において自分のやった行為を分析し、ミスや失敗があった場合は、それを公の場で自分自身を批判するということだ。

中国共産党でもカンボジア・ポルポト政権の内部でも、体制批判者には「自己批判せよ」という激しい言葉が飛び交う世界であったことは歴史に残っている。やがて「総括」や「自己批判」という言葉は、それぞれの国で、誰かを吊るし上げる道具となって先鋭化していくものになった。

これが共産主義というグループの特徴だ。異論を認めず、異論を出した人間は仲間であれ何であれ、徹底的に弾圧する。

中国の文化革命の中では四人組(江青、張春橋、姚文元、王洪文)ら文革派が、批判者を片っ端から自己批判させて公衆の前に引き回していた。

カンボジアでも、クメール・ルージュ(カンボジア共産党)内部でイエン・サリとポル・ポトと対立する幹部が片っ端から自己批判を強制されて殺されていった。いや、殺されたという表現は違う。

薄気味悪い左翼用語では、これを「粛清」と表現する。

連合赤軍でも同様だった。左翼闘争の中であちこちの組織が集合して1971年に最終的に連合赤軍という組織になると、そこでいくつもの暴力事件が起こされて、それについて「総括」がなされ「粛清」がなされた。

連合赤軍でも、指導者である永田洋子や森恒夫を批判したり敵対したり逃亡したりした人間は、次々とリンチにかけられて殺されていった。自己批判した人間を縛りつけ、集団で殴りつけ、裸にして外に放り出すというものであった。凍死したら穴を掘って埋め、逃げたら捕まえて「総括」する。「総括」して「自己批判」して「内ゲバ」して「粛清」する。

「腹を引き裂いて子供を引きずり出そうかどうか」

「総括」も「粛清」も共産主義の伝統だ。自分に敵対する人間は決して許さない。共産党には民主的な空気はない。指導者は自分の政敵となる人間は物理的に始末する。それが共産主義の文化なのだ。

たとえば、ソビエト社会主義共和国連邦のヨシフ・スターリンは少しでも自分に敵対する人間を片っ端から「粛清」と称して殺していった殺人鬼だった。1953年にスターリンが死ぬまで、高級幹部はことごとく銃殺されていった。

このヨシフ・スターリンの行った「大粛清」は100万人以上にも及んだと言われている。そのため「ヨシフ」という名前は、世界では愚鈍な殺人狂か、馬鹿の象徴でもある。

共産主義の総本山だったソビエト連邦でこれだから、日本の共産主義者が仲間を粛清したとしても何ら驚きはない。

連合赤軍でも、指導者である永田洋子や森恒夫を批判したり敵対したり逃亡したりした人間は、次々とリンチにかけられて殺されていった。

それは自己批判した人間を縛りつけ、集団で殴りつけ、裸にして外に放り出すというものであった。凍死したら穴を掘って埋め、逃げたら捕まえて「総括」する。「総括」して「自己批判」して「内ゲバ」して「粛清」する。

妊娠8ヶ月の女性の仲間もめちゃめちゃに殴りつけ、永田洋子は腫れ上がって変形した顔をわざわざ鏡で本人に見せたという。

彼女が死んだ時に議論になったのは、「腹を引き裂いて子供を引きずり出そうかどうか」ということだった。それに何の意味があって、なぜ議論になるのか一般人には分からないが、共産主義者には大切なことだったのだろう。

内ゲバを主導していた森恒夫は刑務所で正気になったのか、これを「狂気」と表現し、1973年1月1日に東京拘置所で自殺している。

「あの時、ああいう行動をとったのは一種の狂気であり自分が狂気の世界にいたことは事実だ。 私は亡き同志、他のメンバーに対し、死をもって償わなければならない」

連合赤軍の元最高幹部だった永田洋子が死んだのは2011年2月5日だった。この女は最期まで死ぬのを怖がって、頭がおかしくなって肺炎で死んだ。

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社会の変革を求める声は日増しに高まっている中で……

1960年後半の新聞を拾い読みしていくと、このような左翼革命派の極端な事件は連日のように報道されていて、それが何年も続いているのに気がつく。

永田洋子は国内に残った赤軍だが、「日本赤軍」の重信房子は海外に出ている。拠点はパレスチナだった。偽装結婚した奥平剛士は1972年5月に計100人を無差別殺戮した「ロッド空港乱射事件(テルアビブ空港乱射事件)」の犯人だった。

この空港乱射事件は国際的にも激しい批判にさらされることになったが、日本人の衝撃もまた激しかった。何しろ、日本人が世界からテロリスト扱いされることになったのである。

当時の日本は高度成長を享受して、もうほとんどの国民は馬鹿げた共産主義革命なんか見向きもせず、資本主義国家としての成功のために尽力していた。重信房子の存在など「いい迷惑」だったのだ。

日本において共産主義が決定的に嫌悪されるようになっていったのは、この永田洋子と重信房子という二人の女性が関わった事件が原因だと言える。1970年前半には、もう日本人の誰もが共産主義にも共産党にも革命にも嫌悪していたはずだ。

政府批判の過激暴力デモ、民衆暴力による政権打倒などの、いわゆる「政治闘争」は、まともな人であればあるほど拒絶感も嫌悪感も強く持っている。「もうそんなものと関わりたくない、勘弁してくれ」という気持ちしかないだろう。

重信房子はもう後期高齢者であり、今さら革命組織を再結成して左翼暴力革命に走る気力や思想を持ち続けているのかどうかは知らないが、もしそのような意図があったとしても、そんなものは成功するはずもないと信じたい。

しかし、今も左翼暴力思想の芽は残っている。

日本は資本主義国家としてどんどん劣化していく途上にあり、すでに30年前から貧困層が増えていく社会へと変貌している。そこにきて、上がり続ける税金や社会保険料や物価に不満を持つ層や、新たに生活困窮に追い込まれる層も出てきており、社会の変革を求める声は日増しに高まっている。

そうした時代の中で左翼暴力革命を体現している「重信房子」という存在が出所してきたという事実に一抹の不安がないこともない。永田洋子と重信房子のふたりの「呪い」は、もう払拭されたのだろうか。それとも、まだ残っているのだろうか……。

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