中国共産党政権は、千年計画で知的財産の強奪を目論み、ファーウェイで機密情報を盗むことを画策し、ウイグルで徹底的な人権弾圧を行い、香港の一国二制度を完全に踏みにじった。アメリカのトランプ政権は中国の横暴を激しく批判し、対立している。そんな中で、大統領選挙が迫ってきている。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
「千人計画」を推し進めている中国
アメリカと中国は2019年には激しい貿易戦争を繰り広げたのだが、2020年上半期はコロナショックで「米中新冷戦」が霞んだ。しかし、米中の対立はコロナによって終わったのではなく、裏側でずっと続いていたのだ。
アメリカは中国がアメリカから莫大な機密情報や知的財産を強奪しているとして、調査しているのだが、そこで浮かび上がってきたのが「千人計画」だった。
「千人計画」とは何か。
それは、中国共産党政権が諸外国で活躍している世界トップレベルの中国人を破格の待遇で引き抜いて、中国に情報を提供させるスパイ計画である。これは、2008年から秘密裏に行われているのだが、まさに中国共産党政権が仕組んだエリートを使ったスパイ工作だった。
アメリカでは、「このスパイ工作の拠点となっているのがヒューストンやサンフランシスコの総領事館である」とFBI(米連邦捜査局)のクリストファー・レイ長官が述べていた。
2020年7月7日、クリストファー・レイ長官はシンクタンクの講演の中で、「中国は米国の知的財産を何度も窃取してきた」と激しく中国を糾弾し、スパイ工作の対象は「防衛装備品から風力タービン、コメやトウモロコシの種子に至るまで全ての研究だ」と述べた。
FBIが抱えているスパイ防止案件の5000件の半数は中国共産党政権の工作であると、レイ長官は赤裸々に語った。そして、2020年7月21日。トランプ大統領はヒューストンの中国総領事館を命じた。
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ヒューストンの中国総領事館を巡る衝突
「米国の知的財産権と米国民の個人情報を守るため、中国はテキサス州ヒューストンの中国総領事館を7月24日までに閉鎖せよ」とトランプ政権は命じた。中国は「政治的挑発だ」と激しくアメリカを批判したが、トランプ政権の意向は変わらなかった。
トランプ大統領がヒューストンの中国総領事館を急いで閉鎖させた裏には、コロナワクチンの情報を中国共産党政権が盗もうとしているのを察知したからだと裏側でリークされている。
ヒューストンには「テキサス医療センター」がある。ここは世界最大の医療機関の集積地で、センター内には60以上もの医療機関が集まり、10万6000人以上もの従業員を抱え、年間1000万人もの患者を受け入れている。
ここでも、コロナウイルスの研究が行われ、機密情報が蓄積されていた。
アメリカ政府は今、「オペレーション・ワープスピード(コロナワクチン開発加速計画)」を進めており、民間企業(J&J、メルク、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ等)と組んでいる。
中国はアメリカで行われているこのワクチン開発の機密情報を盗んで、ワクチン市場に一番乗りしようと画策していた。
2020年7月24日。FBIは、中国人民解放軍の将校や研究者ら合わせて4人を逮捕している。この4人は中国軍との関係を隠して「民間人のふり」をしてアメリカに潜り込んでスパイ工作に就いていた。
そのうちの1人はカリフォルニア大学デービス校の研究施設に潜り込んでいたが、この工作員は生物学専攻の研究者で名前を唐娟(Tang Juan)と言った。身分が割れた後、この工作員は在サンフランシスコ中国総領事館に駆け込んで逃れようとしたが、逮捕されている。
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総領事館は中国のスパイ行為の活動拠点だ
中国は明確かつ戦略的に工作員を全世界に送り出し、知的財産を徹底収奪しながら成長している国だ。アメリカはその最大の標的になっており、いまやコロナワクチンの情報まで盗まれようとしていた。
こうした中、ポンペオ国務長官は次のように述べている。
『中国共産党は長年、知的財産を盗もうとし続けてきた。トランプ大統領は『もうたくさんだ』と言っている。中国が振る舞いを改めないのであれば、我々は米国民の安全や経済を守るため行動する』
『習主席は破綻した全体主義の信奉者で、長年の野望は中国共産党の世界制覇だ。中国共産党から自由を守ることは我々の使命だ』
共和党のルビオ上院議員も当日、「総領事館は中国のスパイ行為や影響力拡大の活動拠点だった」とツイートした。
これを受けて、中国共産党政権は報道官に「このような行為は絶対に許されるべきではなく中国は断固戦う」と言わしめて、報復として成都にあるアメリカ総領事館の閉鎖を命令した。
この中国の報復を受けて、今度はアメリカ側がP-8A哨戒機を東シナ海に飛ばして中国沿岸を近距離偵察行動している。
アメリカと中国の対立は、私たちが思っている以上に緊迫した情勢になっているのが見て取れるはずだ。
他にもアメリカはファーウェイを通信の基幹システムから取り除くためになりふり構わず行動し、ウイグルでの弾圧を人権侵害であるとして糾弾し、中国が香港に対する一国二制度を捨てたことをも激しく批判して、すべてにおいて対立している。
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2020年は世界にとっても正念場となる
こうした情勢の中で、オーストラリアのシンクタンクは「アメリカと中国は3年以内に軍事衝突を引き起こす可能性が高まっている」と述べるほどになっている。そのような予測がシンクタンクから出てくるほど、事態は緊迫しているということだ。
アメリカは2020年11月に大統領選挙というイベントを控えているのだが、ドナルド・トランプ大統領が勝つか、ジョー・バイデンが勝つか、情勢はまったく分からなくなっている。
もし、トランプ大統領が再選されたら、中国に対する締め付けはより激しいものになる可能性が高く、場合によってはオーストラリアのシンクタンクが述べるように、いよいよ軍事衝突もあり得るかもしれない。
ジョー・バイデンが大統領になってもアメリカが中国に融和的になるかどうかは分からないが、トランプ大統領よりもマイルドな扱いになる可能性は高い。中国としては、ジョー・バイデンが大統領になってくれた方が扱いやすい。
だから、BLM(Black Lives Matter)では、中国が暴動を扇動する方向で工作活動を仕掛け、トランプ大統領を窮地に追いやろうとしているのだろう。
2019年まではドナルド・トランプが勝ちあがる可能性は高かったのだが、アメリカでコロナが爆発的大感染するにつれてトランプ大統領に支持率は急激に落ちている。
現職の大統領が再選されるかどうかは「経済がうまく回っているかどうか」にかかっているのだが、コロナが収束していないのだから劇的な回復劇はない。仮に、9月から11月の間に株式市場が暴落するようなことになると、トランプ大統領の再選はない。
しかし、大統領選挙は何が起こるか分からない。2016年は鉄板だと思われていたヒラリー・クリントンが敗北したが、今回も何らかの理由でジョー・バイデンが敗北する可能性もゼロではない。
トランプ大統領が再選されたら、次の4年こそ米中対立は本番となる。冷戦(コールド・ウォー)ではなく、本格的な軍事衝突になることも十分にあり得る。2020年は世界にとっても正念場となる。