社会のおいしい部分は子に継がせて世襲化。そんな社会を打破する合理的な方法とは?

社会のおいしい部分は子に継がせて世襲化。そんな社会を打破する合理的な方法とは?

巨大企業でも、高級官僚でも、能力のない人間が世襲でトップに立つ。「神輿は軽ければ軽いほど良い」とか言う人間もいるが、「頭がない組織」はいざという時には何もできなくなって滅ぶだけだ。こうした世襲の弊害を打破しなければならない時が来ているのが今の日本である。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

能力のない人間が世襲でトップに立っていくのが今の日本

世間から”バカ息子”と呆れられている岸田首相の息子・翔太郎だが、親戚を首相官邸に招き入れて忘年会でどんちゃん騒ぎして遊びまわっている写真が出回った。

「組閣ごっこ」する写真だとか「赤絨毯に寝そべる写真」だとか「合コンまがいの写真」が次々とマスコミに報じられて、世間を呆れさせた。首相公邸は年間の維持費だけで約1億6000万円もかかっているわけで、そこらへんのマンションではない。立場をわきまえていないのが分かる。

この”バカ息子”である翔太郎は、少し前は外遊で観光気分で遊び回ったり、記念写真を撮ったりして顰蹙を買ったのだが、要するに公職に就くには思慮も能力も足りない人間なのである。

こういう未熟な人間が「首相秘書官」となり、公邸でどんちゃん騒ぎできる身分なのは、要するに「首相の息子」だからである。世襲だからである。岸田首相が息子に「権力」を移譲したいからである。

別に本人に能力があろうがなかろうが重要な地位に登用させたら、権力は移譲できる。

他にもいる。安倍晋三やら佐藤栄作やらが連なった家系図を、これ見よがしに自分のホームページに掲げて世襲アピールした岸信千世(きし・のぶちよ)だ。この男も、「自分の能力や政治信条ではなく家計を臆面もなくアピールして傲慢だ、恥ずかしくないのか」と叩かれた。

家系が良くても馬鹿は生まれるわけで、家系図を自慢する程度なら大した人間ではないということなのだろう。

こういう「世襲が当たり前」だと思っている人間が次々と親に権力と利権と知名度を譲ってもらって”指導者”の立場に据えられて日本を担うのだから、日本も駄目な国になっても仕方がない。

政治家だけではない。巨大企業でも、高級官僚でも、能力のない人間が世襲でトップに立つ。「神輿は軽ければ軽いほど良い」とか言う人間もいるが、「頭がない組織」はいざという時には何もできなくなって滅ぶだけだ。

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おいしい部分、儲かる部分、既得権益が得られる部分を独占

資本主義の社会になると、一部の人間が「金のなる木」のポジションを手に入れる。そのポジションは事業家であったり、官僚であったり、政治家であったり、芸能の世界だったりして多岐に渡る。

特徴的なのは「ただその肩書を所有しているだけで金が入る仕組み」になっていることだ。そのポジションを手に入れるには才能と努力と幸運が必要なのだが、いったんそこに辿り着くと、後は大したことをしなくても金が入ってくる。

そうであれば、永遠にその地位にしがみつくのは人間の性《サガ》であると言っても過言ではない。

しかし問題がある。人間は100%の確率で老いる。そして死ぬ。

そうであればどうするのか。そうなのだ。自分の子供にそのポジションを「継がせる」のである。そのため、金がうなる世界のあちこちで、そのポジションを独占するために世襲が生まれる。

日本社会を見回して分かる通り、日本はすでに世襲まみれの国になっていると言える。政治家の子供が政治家になっている。また、高級官僚の子供が高級官僚になっている。経営者の子供が経営者になっている。芸能人の子供は芸能人になっている。

なぜなら、そこに利権と大金と権力が転がっているからである。だから、世襲ができる仕組みがそこに生まれて、どこの馬の骨とも分からない人間を排除するようになっている。

つまり、おいしい部分、儲かる部分、既得権益が得られる部分については、すでにそのポジションに就いている人間が、自分の子供に継がせて甘い蜜を吸えるように独占するのだ。そして、何も持たない人間は何も得られないようになる。

もっとも、この世襲化する社会を破壊する効果的な方法もある。
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「上流階級」と「下流階級」が完全に別個な世界を作り出す

日本は「一億総中流」と言われる時代が戦後から数十年にも渡って続いていたが、いまや「世襲」が社会のあちこちに生まれて固定化している。この「世襲」は何を生み出すのか。

それは「超えられない格差」である。職業や身分が「固定化」されて、乗り越えることができない壁となって立ちふさがっていく。

格差が極まれば階級になる。具体的に言えば「上流階級」と「下流階級」が完全に別個な世界を作り出して、身分制度の社会となって表れていく。

まだ日本は格差で分離されているだけなので気が付いている人は少ないが、この方向性が示す最終形は明確な「階級社会」なのである。

この動きがはっきりしてきたのは1990年からだ。この年にバブル崩壊が起きて、日本は明確に社会が変質していった。

そしてバブル崩壊から10年後、自民党小泉政権に入ってから一億総中流だった社会が一気に崩壊し、格差の問題が大きく表れることになった。この当時は、正社員になれない人が増えて、「正社員が勝ち組」「派遣が負け組」と言われていた。

しかし、さらにそれから10年経って、時代はさらに進んだ。今は正社員ですらも終身雇用が保障されなくなり、事業が少しでも利益を減らすと簡単にリストラされる時代に入っていくようになった。

企業は自らの破綻を回避する必要性に迫られ、今度は「正社員」を放り出す時代が始まったのだ。

「事業家と株主が勝ち組」「サラリーマンは全員負け組」となる社会がすでに動き始めている。上層の経営者や企業のオーナーは、そのポジションにいることで莫大な利益を得る。そして、そのポジションを絶対に手放さない。

自分が老化してポジションに留まれないのであれば、今度は子供に引き継がせて金のうなるポジションを維持し続ける。

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エリート階級が利権と大金のうなるポジションを独占

しかし、「イノベーションが次々と起こせる社会」では、実は世襲は大した問題になることはない。

なぜなら、新しいイノベーションが次々と起きる社会では、新しいことに挑戦した人間が金のうなるポジションに就けるからだ。さらに、そのような社会ではパラダイムシフトが頻繁に起きるので、親が築いた「金のうなるポジション」は衰退する可能性もある。

しかし、イノベーションが停滞し、内需が縮小し、パイが縮小していく社会になると新しいことに挑んでもなかなか成功しにくくなる。それよりも、すでにあるポジションを維持した方が効率が高い。

世襲化する社会を打破するのは、実はイノベーションが起こる社会にすることなのである。社会がどんどん変化して新しいものを取り入れて成長を揺るぎないものにしていく。それが世襲制の打破にもつながる。

日本は明確に「超」が付くほどの少子高齢化社会に突入している。(マネーボイス:日本人は地方を見捨てるのか。2024年、少子高齢化で認知症が這い回る地獄絵図となる=鈴木傾城

少子高齢化で日本はイノベーションも社会の活力も喪失してしまう。キャッシュレスのような基本的なイノベーションですらも拒絶する人間もいるのだから、イノベーションどころではない。

だから、イノベーションを失った日本社会では、金のうなるポジションを世襲して「エリート階級」と「下層階級」という格差社会になっていくことになっても不思議ではないのである。

政治家の子供が政治家になっている。
高級官僚の子供が高級官僚になっている。
経営者の子供が経営者になっている。

エリート階級が利権と大金のうなるポジションを独占するようになり、身分が固定化されている。エリート階級の身分が固定化されると同時に、貧困者の身分も固定化されつつある。貧困層の家庭の子供は、やはり貧困層でしかないという現象が始まっているのだ。

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イノベーションが起こりやすい国に変えていく

もう普通のサラリーマンは将来がない。格差社会から階級社会に入っていくと、今のままでは「労働者階級」に落とされて、そこから這い上がれなくなるのは必然だからだ。階級は身分の固定化だ。だから這い上がれない。

固定化した社会を打破するのは「革命」だが、資本主義の中では「イノベーションで社会を変えることが真の革命」であると気付いている人はこれまた少ない。資本主義での身分制度の破壊は、イノベーションで行わなければならないのである。

だから、イノベーションが次々と起きる社会はまだ希望はある。イノベーションに背を向けて「現状維持」のみを求める社会は、格差がやがて階級となり、よりイノベーションから遠ざかって後退する。

懸念すべきは、日本は「現状維持」を願う高齢者で覆われている国であるということだ。たとえば、いまだに日本では紙の新聞、紙の書籍、紙幣にこだわっている人間が大勢いて、社会を停滞させている。

さらに高齢者はインターネットはおろかスマートフォンですらも使えない人がいる。情報の遅くて偏向している新聞とテレビのみしか接しないので、どんどん世の中の主流である超高度情報化社会からも取り残されてしまっている。

そうした「遅れた高齢者」が政治家や経団連のトップになっているので、超高度情報化社会を支えるソフトウェアに対してもまったく知見がなく、「日本は本当に先進国なのか?」と国外からも呆れられる社会になっている。

日本社会はイノベーションという「下剋上」を起こせなくなりつつある現状維持の社会になっている。だからこそ現在成功している人間がそのポジションを子供に譲って世襲化を図り、社会は階級化に向かっているのである。

日本を階級社会にしたくなければ、イノベーションが起こりやすい国に変えていかなければならない。そのためには、超高度情報化を核とした最先端のイノベーションでどんどん変えていかなければならない。

そして、最終的には超少子高齢化を絶対に解決していかなければならない。少子高齢化を放置し、イノベーションを拒絶して現状維持で生きるというのであれば、日本はもう終わりだ。社会が固定化し、停滞し、閉塞感はより強い国となってしまう。

ちなみに、岸田首相の息子・翔太郎は首相秘書官を辞職するのだが、相変わらず首相官邸には住み続けるのだという。馬鹿でも何でも叩き出されるわけではない。首相の息子だからである。

これだけを見ても、日本はイノベーション社会に向かっているのか階級社会に向かっているのか、薄々と感じることができるはずだ。

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