エヌヴィディア。今後10年、人工知能の進化を支える最重要企業は今が買い時か?

エヌヴィディア。今後10年、人工知能の進化を支える最重要企業は今が買い時か?

今後、間違いなく人工知能が大きなパラダイムシフトを起こす。そのAIの頭脳はGPUだが、このGPU市場で92%のシェアを掌握して、世界でもっとも重要な企業となっているのがエヌヴィディアである。エヌヴィディアの優位性が圧倒的なのであれば、株式の下落に動揺する理由はない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

世界でもっとも重要な企業がエヌヴィディア

人工知能(AI)が今後10年の大きなパラダイムシフトを起こすイノベーションであることは、もはや否定する人はどこにもいない。AIは、今後さらに複雑なタスクに対処する能力を秘めている。

従来、人間にしかできなかった高度な認識、理解、および意思決定のプロセスを、AIシステムが実行可能にする。

これにより、ハイテク分野だけでなく、ビジネス、医療、診断、金融、交通、エネルギー、芸術、娯楽などの幅広い分野で効率性が向上し、人々の生活の質が向上することになる。さらに、AIの発展により新たな産業や職種が生まれ、従来の仕事のありかたが変化するのは100%確実だ。

そのため、あらゆる国がAIによる「覇権」を取るために苛烈な競争を繰り広げるようになっている。AIは、国家間の力関係や経済的な地位を左右する要素として位置づけられるようになっており、能力ある政治家はみんなそれを理解している。

AIを制したものが次の10年を制する。だから、どこの国も国益のために凄まじい勢いでAIを取り込もうとしているのだ。

そのAIの頭脳が半導体なのだが、AIは主にGPU(Graphics Processing Unit、グラフィックス処理装置)によって処理されている。ディープラーニングなどの機械学習アルゴリズムでは、大量の並列計算が必要となり、GPUの並列処理能力が極めて重要な役割を果たする。

このGPUを製造・販売する企業の中で、世界でもっとも重要な企業がエヌヴィディア(NVIDIA)である。エヌビディアは、AIに最適化されたGPUを開発・提供することで、AIの計算パフォーマンスを大幅に向上させた。

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GPU市場では92%をエヌヴィディアが掌握している

マイクロソフトとOpenAI連合も、AIの頭脳としてエヌヴィディアのGPUを使っている。グーグルもエヌヴィディアと密接に連携し、エヌヴィディアのGPUでグーグルのAIであるGeminiが高速に走るように最適化された。

アマゾンもAIに注力しているのだが、やはりエヌヴィディアのGPUを使用して生成AIのトレーニングを行っている。メタもAIファーストの企業を目指すために、2024年末までに34万個以上のエヌビディアのH100を保有する予定であると発表している。

アップルも「Apple Vision Pro」上で動くリアルタイム3Dを進化させるために、エヌヴィディアと連携を組んでいる。

これを見てもわかるとおり、エヌヴィディアは主要なAI企業やリサーチ機関で広く採用され、AIの進化を技術的に支える存在となっている。エヌヴィディアはまさにAIの中心なのだ。

近年のデータの爆発的な増加によって、高性能な計算資源がますます求められるようになっており、GPUの需要はますます重要になっていく。

エヌヴィディアは、このGPUおよびAIプラットフォームの分野で圧倒的な市場シェアを握り、他の企業の追随を許さない。何しろ、GPU市場では92%をエヌヴィディアが掌握しているのだ。

この市場支配力によって、エヌビディアは今後もAI分野での主導権を握ることになる。

エヌヴィディアは2024年3月に生成AIに特化した新アーキテクチャ「Blackwell」を出したばかりだが、同社は今後もAIの最新動向を先取りし、必要なハードウェアやソフトウェアを提供し続ける。その需要は途切れないはずだ。

今後、自動運転や医療、製造業などのさまざまな分野でAIを活用するための取り組みが加速するが、これらすべてにエヌヴィディアはかかわっている。

エヌビディアの市場支配力と継続的な投資により、AIが席捲していく中でのエヌビディアの立ち位置はますます強固になっていくはずだ。

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エヌヴィディア一社がGPUを独占していることに危惧

生成AIの最先端を走っているのがOpenAIなのだが、このOpenAIにしてもエヌヴィディアのGPUで動いている。

OpenAIはGPT-4などの大規模言語モデルの開発を進めており、それらの訓練にはエヌヴィディアのGPUを大量に使用している。ところが、GPUの供給が需要に追いつかず、モデルの訓練が制限されている状況にある。

そこで、OpenAIのサム・アルトマンCEOは独自のAI専用半導体企業を立ち上げようと動いていた。

それは、あまりにもAI専用GPUの需要が大きすぎて、供給が間に合っていないのを解消するためと説明されているのだが、裏ではもうひとつの理由があるのではないかと考えられている。

サム・アルトマンは、AI専用GPUをエヌヴィディア一社が独占していることに危惧を抱え、エヌヴィディアに対抗できるAI半導体企業が必要だと考えていたのだ。

このアルトマンの半導体ベンチャー設立のプロジェクトは「Tigris(チグリス)」と名づけられているのだが、この動きは継続して動いている。アップルの元デザイン責任者であったジョニー・アイブとも組んでハードウェアが開発するとも噂されている。

ただ、このプロジェクトを進めている段階でサム・アルトマンはOpenAIを解任され、ふたたび戻ってきてからはプロジェクトの進展が不透明になっている。

もし、仮にこのプロジェクトがふたたび動き出したとしても、すぐにエヌヴィディアの対抗馬になるとは思えない。工場を建設し、技術者を集め、エヌヴィディアに対抗できるGPUを一から作るには相当の時間が必要で、3年や4年で何とかなるようなものではない。

そのあいだにエヌヴィディアはさらに先に向かっている。

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エヌヴィディアの株価はさらに上に向かっていく

今、エヌヴィディアに対抗できる半導体企業があるとすれば、CPUの王者であるインテルやAMDだが、GPUの技術に関しては圧倒的にエヌヴィディアが勝っている。

GPUアーキテクチャの設計やソフトウェア開発環境の構築には、長年の経験と知見が必要不可欠なのだが、エヌヴィディアは30年近くGPUに特化し続けてきたわけで、この分野での圧倒的な先行優位を持っている。

そして、エヌヴィディアはAIやデータセンター市場に早くから参入し、クラウドベンダーやAI企業との協業関係を築いてきた。

すでにエヌヴィディアはGPU市場で圧倒的な地位を確立し、GPUアーキテクチャの先進性とソフトウェア環境の整備、さらにはAIエコシステムの構築など、他社が容易に追いつけない技術的優位性を築いてきた。

そういうわけで、エヌヴィディアの優位性は明白である。

現在、エヌヴィディアは株価が売られて不調気味に見えているのだが、エヌヴィディアの優位性が今後も長らく続くのであれば、エヌヴィディアの成長はこれからもまだとまらないことを意味している。

人工知能の時代は、まだ入口の段階にすぎない。マイクロソフトが先行し、グーグルが追いかけ、メタやアマゾンが着々とAIイノベーションを準備し、アップルもEVを捨ててAIに注力しようと動いているのが今の段階だ。

どの企業も、走りはじめたばかりであり、まだ本当のイノベーションを私たちは手に入れていない。つまり、これらの企業が本格的にAI事業を進めていくと、エヌヴィディアのGPUはもっと必要になっていくということになる。

私自身はエヌヴィディアの株価はさらに上に向かっていく局面を考えている。これからの10年は人工知能と半導体の時代になっていくのであれば、エヌヴィディアの株式を保有しておくというのは悪いアイデアではない。

私はエヌヴィディアの未来については、今のところ強気・強気・強気の一辺倒だ。

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