国連人口基金は2017年現在、世界の人口が約76億人になったと発表している。もちろん、これは人口のピークではなく、これから2050年に向けて世界人口は98億人になっているはずだ。
毎年、約8300万人が増えていくのだ。圧倒的に増えていくのはインド圏(インド・パキスタン・バングラデシュ)と、アフリカ圏(ナイジェリア、コンゴ・エチオピア)になるのではないかと言われている。
先進国で唯一人口が増えるのはアメリカだが、アメリカは移民が人口を埋め尽くすので人口が増えると言っても外部から入ってくる人間が増えるのだ。
日本だけを見ると、少子化高齢化で人間のいる風景が縮小しているように見えるかもしれないが世界は逆なのである。
産業革命・石油の世紀に入ってからの人口の伸びは爆発的になった。その伸びは「驚異的」「異常」と考えても良いレベルにある。
よく倍々ゲームで数が増えていくことを「ねずみ算式に増える」と表現するが、地球から見ると人間がまるで「ねずみ」のようにどんどん増えている。
そして、人間は決して他の動植物と共存しない。ジャングルを破壊し、自然環境を破壊し、生物の多様性を急激に壊しているのである。
アルプスで、南極で、北極で、氷河が消えていく
ところで、このまま人間は増えていく一方なのだろうか。確かに統計を見るとそうなのだが、一方で環境の変化を見ると今後の数十年は今までのように順風満帆な時代ではない可能性が指摘されている。
人間が心地良く生きられる環境が地球規模で壊れてきており、もしかしたら環境破壊が人類の人口増加を止めてしまうのではないかという恐れが年々、強く語られるようになっている。
最近、75年前に氷河に閉じ込められた遺体がスイス・アルプスで見つかっているのだが、その理由は「氷河の融解」が進んだからだ。
アルプスの氷河は毎年50センチから1メートルが失われているという。「前例のない消失だ」と専門家は述べる。
アラスカでも氷河が溶け出しており、数キロに及ぶ砂漠が出現している。アラスカの永久凍土は、このままでは4分の1が消失する予測になっている。
シベリアでも永久凍土が溶解しており、恐ろしいことに今まで閉じ込められていたメタンガスや致死性の高い病原菌が次々と出現している。
病原菌は動物の亡骸と共に氷の中に閉じ込められていたのだが、氷が溶けることによってそれが大気に出現し、再び広がろうとしているのだ。
その病原菌は炭疽菌のような知られているものもあれば、人類がまだ知らない致死性の病原菌もある。
南極の氷河も異変が起きている。南極半島東岸に存在するラーセン棚氷のうち、1兆トンもの氷の塊が南極大陸から完全に分離したのが2017年7月12日だった。
北極圏にあるアイスランドもまた異常が起きている。やはり、国土を覆っている氷がどんどん溶け始めて島の形が変わりつつあるというのである。
氷河が消えるというのは私たちには何の関係もない事象のように思えるが、もちろんそうではない。
「氷河を溶かすほどの気象異常が起きている」わけで、さらに氷河が溶けることによってドミノ倒しのように気象異常が連鎖するのだ。
人間が心地良く生きられる環境が地球規模で壊れてきており、その地球の変動が人類の生存を脅かす可能性は充分にある。
今後、食料とエネルギーがもっと必要になってくる
地球の気象が変動しているのは、地球温暖化のせいであると言われているが、原因が何にしろ、これからの地球は今までの地球とはまったく違う環境になることもあり得る。
そして、皮肉なことに人口の増え続ける人類が、その環境の変化を加速させる可能性もある。人類が地球を破壊するのは、膨大に増え続ける人口を支えるために、食料とエネルギーがもっと必要になってくるからだ。
食料を得るために人類はどんどん自然を切り開いて、そこを農地にして、地下水を吸い上げ、土地が痩せて砂漠化していくとそこを捨てて、さらに別の自然を伐採していく。
それが急激に、確実に、そして徹底的に行われている。
エネルギーもそうだ。石油やガスや資源を得るために、人類は山を削り、地上の自然を剥ぎ取り、地下に向けてどんどん掘り進めて地球を破壊していく。
文明が資源を必要としているので、掘り進めるのをやめるわけにはいかないのだ。これからも人類は地球のあちこちを掘って壊して資源や燃料や水を掘り続ける。
100年前までは石油は楽なところから掘り出すことができた。しかし、油田が枯渇すると、どんどん石油掘削の難易度が上がり、やがて人類は海底油田にまで手を出すようになっている。
あるいはシェールガスのように、地中に薬物や爆発物を仕掛けて環境を破壊しながら燃料を吸い出すようなことをしている。
人間は石油を燃やして空気を汚染し、森を伐採して大地を汚し、資源を吸い出すために地中に薬物・爆発物をまき散らしているのである。
2010年には自然破壊の象徴的な事件があった。イギリスの石油会社BPが引き起こしたメキシコ湾原油流出事故だ。
海底役1500メートルから漏れ出す原油をBPは数ヶ月経っても止めることができず、付近は石油まみれになって巨大な環境破壊を引き起こした。
しかし、人類はすでに約76億人になって、これからも年間約8300万人も増えていく。これらの人口を支えるために、人類はこれからも徹底的に地球を破壊するしかない。
世界中で、農業が壊滅する事態が発生する可能性
増え続ける人口。破壊されていく自然。地下水を汲み上げて農地に水を撒き、やがて地下水が枯れると砂漠化して捨てられる大地。
大地が砂漠化していくと、気象が変わっていく。砂漠は水を保持できないので、結果的には雨の降らない気候へと変わっていき、それがさらに砂漠化を促進していく。
サハラ砂漠は不毛の大地だが、かつては豊かな森林地帯だったと誰が信じるだろう。今豊かな自然を保持している場所がいずれ砂漠化してもおかしくないということでもある。
森の伐採が進むと、水分の保持ができなくなるのだから、いったん大雨が降りだすと、今度は未曾有の大洪水となってしまう。
世界中で、例年のごとく大洪水が国土を覆っているのだが、そうなった一因としてその地域の急激な自然破壊(森の伐採)がある。東南アジアや東アジアの洪水は、ほぼ自然破壊が原因である。
かと思えば、中国が内陸部をめちゃくちゃな開発で砂漠化させており、首都北京が水不足で破滅的な危機に陥っている。
インドはどうか。インドの12億の人口を支えるのがパンジャブ州だが、この穀倉地帯であるパンジャブ州でも地下水源が枯渇しつつあってやがてパンジャブ州の農業が壊滅する危険性があることが指摘されている。
アメリカ中西部でも日本の面積ほどもあったはずの巨大な地下水源であるオガララ帯水層が枯渇しかけて危機的な状況になっている。このままで行くと2030年にはアメリカの穀倉地帯が砂漠化する。
大量の人口を養わなければならない中国とインドが砂漠化をとめられない事態になっており、大穀倉地帯だと言われているアメリカも地下水源の枯渇であと20年で農業が壊滅する事態となる。
このままで推移していくと、世界中で食料が不足し、水が不足し、大気は汚れ、地表は荒れ、地中は汚染され、砂漠は広がっていく。
今度は逆に人間がどんどん死んでいく世界がくる?
今でも、世界中で気候変動による危機的な災害が繰り返し繰り返しあちこちで起きている。
冬になれば想像を絶する豪雪が降り積もり、夏になれば50度を越えるような熱波が大地を覆い尽くして死者を出す。
雨が降ればバケツの底に穴が開いたようなゲリラ雨となり、ボールのような雹が降り、連日のように降り続く雨が大洪水を引き起こす。
これがさらにひどくなる。
あと20年経つと、人類は完全なる食料危機に見舞われる。激しい食料争奪戦によって人類が互いに殺し合うような最悪の事態に突入するということだ。
20年というのは、そんなに先の話ではない。これを読んでいる私たちも、20年後はまだ生きているはずだ。しかし、そのときには、今のような平穏な生活があるとは限らない。
人類の生存環境は今も悪化し続けているが、これからもさらに悪化していく。
何も難しい話はしていない。
地球の環境が変動する中で人口がさらに増え、生態環境は破壊されて生命の多様性も失われ、農地が砂漠化して食料不足が深刻化し、資源の掘削コストもあがって文明の維持に危機が生じる社会がくるのだ。
そうやって負のスパイラルに落ちていき、限界に達したときに、今のままの生活が維持できなくなる。
全人類が絶滅するという意味ではない。人口がピークに達したときに、文明がそれ以上の人口を支えきれなくなるという意味だ。
だから人口の増加と環境破壊が文明が支えきれなくなったところで、今度は逆に人間がどんどん死んでいく世界が生まれていくのではないか。
そんな話が公然と言われるようになっている。