パチンコ産業が消滅すると雇用が減って多くの人が失業することになるので、「それでいいのか」と恫喝する人間も出てくる。もちろん、それでいい。パチンコを全廃することによって十数兆円が違法賭博からまともなビジネスに流れていく。日本にとっては素晴らしい結果になる。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
賭博(ギャンブル)は射幸心を煽って人間を白痴化
日本には、ギャンブル依存症や多重債務を生み出すもっと悪質な存在が眼の前にあって、それを廃止することができない。その「存在」というのは、言うまでもなくパチンコである。
日本人はいい加減に駅前でパチンコ店が堂々と営業していることの異常さに気が付かなければならない。パチンコは決して娯楽ではない。それは「違法な賭博」である。それも、推定で約56万人もの依存者を出している凶悪な違法賭博である。
現代の日本に、こうした違法な賭博場が駅前やら郊外にごろごろ存在しているというのはおかしいではないか。まして、それが2020年のコロナ禍にあっても13兆円もの売上高の産業として成立しているということ自体がどうかしている。
賭博(ギャンブル)は射幸心を煽って人間を白痴化する危険な性質がある。
「もしかしたら儲かるかもしれない」「もう少しやれば儲かるかもしれない」という気持ちにさせてズルズルと時間と金を消費させる。さらに負けが込むと「負けを取り返したい」という気持ちにさせてそこから離れなくさせてしまう。
いったん、ギャンブルにハマると、それはアルコールやドラッグと同じで深い依存を生み出す。それなしには生活できなくなってしまう。
そうした依存をシステマチックに行っているのがパチンコ店である。客をギャンブル依存にして鵜飼いの鵜のように非生産的なものに金を吐き出させて大儲けしている。
実際、パチンコ依存に陥った人たちは私たちの周囲でも珍しくない。パチンコ依存に陥って、借金をしてまでパチンコをし続ける人間もいるし、育児放棄してパチンコにのめり込む主婦もいる。
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依存から抜けられないように極度なまでにシステム化された
パチンコで生活破綻した後、生活保護費をもらいながら受給日にそのままパチンコ屋に直行する人間が問題になったこともあった。あの問題はうやむやになって消えてしまったのだが、実は2021年の今でも生活保護でもらった金でパチンコを打っている依存者は大勢いる。
生活保護というのは、最終的には受給者の生活を立ち直らせて「再び自立に向けて歩んでいけるように」という願いを込めて支給されるものだ。それを、右から左にパチンコ店に注ぎ込むのだ。
「生活保護はパチンコで遊んでいる人間を潤すためにあるのか」と真面目に生きている人が激怒しても当然だ。しかし考えなければならないのは、生活保護の受給者をそうした行動に駆り立てているのはパチンコ業界そのものだということだ。
そこは、客を依存症にさせる空間と化している。
大音響で外界と隔絶させ、目まぐるしい点滅で意識を目の前に集中させ、条件反射だけの猿にさせる。その上で、「もしかしたらうまくやれば儲かるかもしれない」という感情を極限まで煽り、そして離れられないようにする。
これによってユーザーの脳が変質する。パチンコは脳を異常なまで興奮状態にするのだが、この状態が長く続くと脳は常に興奮を欲するように変化してしまう。
パチンコを止めたら興奮が得られずにイライラするようになり、再びパチンコに向かってしまう。これがギャンブル依存症なのであり、パチンコ依存症である。いったん、脳が変質してしまうと、もうそこから抜けられない。
そうやって依存から抜けられないように極度なまでにシステム化されたのがパチンコという違法賭博ビジネスなのだ。これが、野放しになっている。
パチンコ依存に堕ちた人たちの脳は、すでにパチンコによって壊されているので何を言っても変わらない。そのため、パチンコ依存者を責めても状況は変わらない。
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責めるべきは、違法賭博をいつまでも放置している私たち自身
もちろん、彼らも金を失ってパチンコ屋からふらふらと出て正気に戻ると、罪の意識や自責の意識が湧き出てくる。何とかしなければ、と彼らも思う。しかし、何ともならないのが依存者の特徴だ。
ギャンブル依存は人格を崩壊させる。ギャンブルをするために金を注ぎ込むようになるのだが、最初に家族にとがめられる。それでも止められないと家庭が崩壊する。
勤労意欲も失われる。少し時間があればパチンコ屋に直行し、金がなくなれば借金したり、場合によっては会社の金を横領したりする。
そんな人間を膨大に生み出すのがパチンコだ。本当に責めるべきは、パチンコ狂いになった人ではなくパチンコ業界である。さらには、こんな違法賭博をいつまでも放置している私たち自身である。
賭博依存を生み出し、普通の人を廃人化させるパチンコ店を、いつまでも放置している私たちも問題があるのだ。駅前にこんなものが林立しているのを何とも思わないことを恥じなければならない。
それにしても、なぜ違法ビジネスがこれほどまで堂々と日本の駅前で営業しているのか。それはこの違法ビジネスが警察や政治家や官僚を抱き込んでいるからだ。
自分たちのビジネスを守るために、パチンコ業界はあちこちに金をばらまき、権力と癒着している。さらに広告費をばらまいてマスコミをも抱き込んでいるので、もうパチンコという違法賭博を批判するマスコミもなくなった。
がパチンコ業界をいつまでも叩き潰すことができないのは、こうしたパチンコ業界の生き残りの戦略が功を奏しているのだが、一番まずいのは私たちが真剣に「パチンコを潰せ」と叫ばないことなのである。
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違法ビジネスを叩き潰す方がずっとメリットは大きい
人間社会には堕落した人間が一定数存在してもいいし、そうした堕落にまみれた場所がどこかにあってもいい。堕落が必要な人間はどこの国でも存在する。
しかし、駅前ごとに違法賭博であるパチンコ店があって、この違法賭博がコロナ禍の中でも13兆円規模の売上を上げることができるような産業になっているというのは、さすがに異常極まりないことでもある。
本来は堕落に縁のないごく普通の人まで、それぞれの駅前に違法賭博が存在することでギャンブル依存症になる。パチンコ店は、駅前に出店することでそうなるように仕向けている。
日本人はパチンコによって、「無理やり堕落させられてきた」ということだ。
「戦後、日本人は劣化した」とはよく言われているのだが、本当に日本人が劣化しているというのであれば、劣化させている元凶がある。それがパチンコだったとしても何ら不思議ではない。
パチンコは、日本人を思考停止させ、日本人の勤労意欲を失わせ、日本人の金を毟り取り、日本人の家庭を崩壊させる。つまりは、日本人を劣化させ続けている。
駅前の違法賭博をなくすことは、多くの日本人を正気に戻し、思考を取り戻させ、劣化から脱出させる第一歩になる。
パチンコ産業が消滅すると雇用が減って多くの人が失業することになるので、「それでいいのか」と恫喝する人間も出てくるのだが、もちろんそれでいい。違法ビジネスを叩き潰す方がずっとメリットは大きい。
パチンコを全廃することによって十数兆円が違法賭博からまともなビジネスに流れていくわけで、日本経済にとっては素晴らしい結果になる。その上で、パチンコ業界で働いている人間たちを、速やかに他の業種に転職させていけばいい。
私たちはもうパチンコに「行かない、行かせない、関わらせない」ことを徹底した上に、こうした考え方をする政治家や団体を支援する大切な時期に入っている。